役員報酬っていくらが得?節税効果を最大化せよ!

得する役員報酬はいくらだ?

Q  会社の決算を迎えるたびに、今期の役員報酬はこれで良かったのかな?と考えてしまいます。最も節税するためには、役員報酬をいくらにすればいいのか、教えてください。

A 株主総会の段階で、いろいろシミュレーションして決めてください。

税理士をしていて、飲み会などで経営者の知人から一番良く聞かれるのが、「役員報酬をいくらにしたら、一番節税になるんですかねぇ?」という質問。
飲み会で簡単に答えられる質問ちゃうやろ、と思いながら、私は「まぁ500万円くらいにしといたら、ええんちゃいます~」と答えるようにしています。
その理由は後ほど解説します。

役員報酬を変えられるのは年に一度

まず、ご存じのように、役員報酬は年に一度の株主総会の決議で月額定額いくらということを決めることになっています。
一度決めたら基本的にはその定額を変えられない(変えると変えた部分は損金にならない)。
株主総会は年に一度、決算後から3か月以内に開きますので、3月決算なら6月に変更することになります。
でも、まだその段階では、事業年度が始まって2か月ちょいですから、その期の決算がどうなるかは分かりません。

そこで、その段階で税理士とともに、役員報酬を加味せずに、今期の売上げ、利益などの着地点を想定します。

たまに役員報酬を加味せずに算出した利益が800万円しかないのに「オレは役員報酬2,000万円ほしい!」と強硬におっしゃる社長がいます。
「いいですけど、赤字で銀行からの借入は厳しくなるし、税金も源泉所得税をめちゃくちゃ取られますよ。」と説明して思いとどまってもらいます。
社長ががっかりしておられるので、「将来的に報酬2,000万円もらうためには、売上げをこれくらいにして、固定費を削って利益が2,500万円になれば、もらえますよ。頑張りましょう!」と元気づけてあげます。
税理士も楽じゃないです笑

ここで、「役員報酬をいくらにすれば、最も節税効果が高いのか
このワンポイントに絞って解説します。

節税効果の大きい役員報酬額

法人利益別 税負担が最も少ない役員報酬

この表が、節税だけを考えたら、この役員報酬にすれば手元に残る金が一番大きくなるっていう表です。

この表の見方を解説していきます。

一番左の「法人利益」は、法人税の確定申告書・別表1の一番上にある「所得金額」にあなたの役員報酬を加えた金額です。
例えば、法人の所得金額が700万円で役員報酬が1300万円であった場合は、この「法人利益」欄の2,000万円のところを見ます(所得金額700万円+役員報酬1,300万円=2,000万円)。
該当の「役員報酬欄」には500万円と書かれていますので、あなたの会社の場合、役員報酬500万円で、法人の所得を1,500万円にするのが最も節税になったということですね。

もう少し掘り下げて説明します。

なぜ役員報酬を500万円にするのが最も節税になると分かったか?
次の表を見ていきましょう。

法人利益が2000万円の場合の役員報酬額別 手元に残る金額比較表

この表は、1番目の表のうち、法人利益が2,000万円の場合だけをクローズアップし、その場合なら役員報酬〇円で手元に残るお金は〇円ということを100万円刻みで検証した表です。
どういう計算をしているかと言うと、役員報酬には所得税・住民税、そして社会保険(国民健康保険など)がかかりますので、役員報酬1,300万円の場合ですと、手元に残るのは約920万円。会社の方は所得が700万円となりましたが、会社が負担する社会保険料や法人税等を差し引くと、約421万円が残ります。
社長と会社で合計1,341万円が手元に残ったことになります。表の緑で囲った部分ですね。

これが、同じ法人利益が2,000万円で、役員報酬を500万円にしていたら手元に残ったのは1,388万円。表の赤く囲った部分。
差額の約47万円(1,388万円―1,341万円)が節税できるはずだった金額ということになります。

このQ&Aのはじめに書いた、飲み会などで「役員報酬をいくらにしたら、一番節税になるんですかねぇ?」の質問に「まぁ500万円くらいにしといたらええんちゃいます~」と答えるようにしている理由。

一番目の表をご覧ください。
法人利益が1,400万円~3,000万円まで、そして4,000万円以上の場合、ことごとく役員報酬500万円が最も節税パフォーマンスが高い!

酔っぱらって、クライアントでもない知人に聞かれた場合、最もリスクが少ないこの答が最強でしょう。
あ、クライアントに聞かれたら、ちゃんとシミュレーションしますよ笑。

法人税率と所得税率の差を利用せよ

なぜ役員報酬500万円が最も節税パフォーマンスが高いのか?
法人税と所得税とでは、実効税率に違いがあるため、その組み合わせで、節税パフォーマンスに違いが出てくるんですね。
実効税率というのは、単に法人税という国税だけではなく、他にも事業税や法人市民税なんていう地方税も含めて、所得100に対してすべての税金がいくらかかるかという率のことです。
その実効税率を表にしたものがこちらです。
法人税と所得税の実効税率表
所得が500万円までは法人税の税率が高いですが、ちょうど500万円弱のところで線が交差していますよね。
そこで所得税率が法人税率を上回る。1,000万円から1,300万円くらいまではほぼ重なって、また所得税率が法人税率を引き離す。
つまり、所得が500万円以上になると、1,000万円くらいまでは所得税の方が負担が重い。
所得1,000万円から1,300万円までは同じくらいの負担。
所得1,300万円以上は所得税の負担はどんどん重くなり、法人税を突き離すといったイメージなんですね。
だから、一番上の表のように役員報酬500万円か、1,000万円~1,300万円くらいが節税という意味ではベストパフォーマンスになるわけです。

ここまで、節税という観点だけで、役員報酬の決め方を申しあげてきましたが、役員報酬の額は、何も節税だけ考えればいいわけではありません。

役員報酬は家計、銀行・税務署対策を考慮して決めよう

ただ、役員報酬が少ないと社長の家計が回らなくなり、会社から社長へ貸付金が発生することになります。
銀行の融資担当からすると、代表者貸付金は「返済してもらえるかどうか分からない債権。つまり『不良債権』」とみなされ、
マイナス材料になります。

さらに、税務署も見ています。
「この社長、40代で育ちざかりのお子さんが2人もいて、住宅ローンも抱えている。なのに報酬500万円って、何か不正経理をしているに違いない」と。

したがって、税理士にシミュレーションしてもらい、その数字を参考にした上で、バランスを考えて決めるのがベストでしょう。

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

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