経営セーフティ共済 損金算入制限開始!出口戦略がさらに重要に

経営セーフティ共済 損金算入制限開始

Q  弊社では税理士のススメもあり、「経営セーフティ共済」を掛けています。経済雑誌でこれが改悪されると書いてありました。何か取れる対策はありますか?
A  節税対策に使われてきた「経営セーフティ共済」の損金算入に制限が掛けられることになります。詳しく説明していきましょう。

これまで会社を設立して軌道に乗ってきた時に、社長が税理士に「何か良い節税策はないですか?」と聞かれた場合、多くの税理士が「経営セーフティ共済に入られてはいかがですか?」とアドバイスしている現実がありました。
勧められた経営者も多いのではないでしょうか。
まず、この「経営セーフティ共済」ってどのようなものか、知っている方には耳タコかもしれませんが、少しおさらいしていきましょう。

経営セーフティ共済とは?

まず、中小企業庁のホームページの定義にはこう書いてあります。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できます。

もう少し具体的にメリットとデメリットを挙げていきます

メリット1 節税効果

まず、この制度の最大のメリットが、掛金が実質的には貯めているだけなのに「損金」つまり経費になるということ。

経営セーフティ共済の掛金は、「保険料」という経費になりますので、たとえば掛金を月額20万円にすれば最大で年間240万円(20万円×12カ月)が経費になり、所得を減らし節税することができることになります。

メリット2 取引先が倒産したら、すぐに借入できる

取引先が倒産して、売掛金などの回収が困難になった時には、その事業者との取引が確認され次第、すぐに借入をすることができます。
取引先が夜逃げしてしまったケースについては、共済金の借入はできませんが、法的整理、私的整理、災害による不渡りや取引停止処分などの場合に無担保・無保証人で借入できます。

メリット3 一時貸付金が利用できる

一時貸付金とはは、取引先事業者が倒産していなくても、事業資金を必要とする場合には一時貸付金を利用できます。これは、解約時に支払われる解約手当金の95%を上限として借入れできる制度です。
金融機関からの融資手続きが遅くて資金ショートしそうだという場合に使える制度です。
共済金貸付額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額となります。

メリット4 掛金は加入後変更可能

掛金は5,000円から20万円の間で自由に選ぶことができ、加入後増額・減額もできます。

メリット5 40カ月以上で掛金が100%戻る

40カ月以上の納付期間があれば、掛金の100%が戻ってきます。
ただし、解約手当金を受け取った時には「雑収入」として収益にオンしますので、その分の税負担が発生します。
経営セーフティ共済 パンフ

続いて、デメリット

デメリット1 起業(設立)1年目には使えない

ルール上、そうなっているので、仕方ありません。2年目以降しか使えません。

デメリット2 ある程度の期間掛け続けないと損

共済契約を解約した時には、掛金を12カ月以上納めていれば、掛金総額の8割以上が戻り、40カ月以上納めていれば掛金全額が戻ります。
つまり、掛けている期間が12カ月未満なら、掛け捨てになってしまいます。

デメリット3 上限がある

掛金800万円が上限で、それ以上は掛けられません。

ここまで、メリットとデメリットをおさらいしてきました。
資金的余裕があるなら、この共済に掛けると税金の繰り延べができることが大きな魅力であることが分かりますね。
では、「改悪される」内容や時期について、解説していきましょう。

何がどう改悪されたか?

2022年度の経営セーフティ共済解約件数は、解約手当金が100%支給される加入後3~4年目に大量発生しているんですね。
加えて、2020年から2022年のデータでは解約してから2年以内に再加入する利用者は83.6%!
簡単に言えば、3~4年で上限の800万円まで掛けてはすぐに解約して、再加入ということを繰り返しているということ。

こうした事態を受けて、中小企業庁は「共済制度の本来の目的とは異なるものであり、解約してからすぐに再加入するこの流れを節税目的の不適切な利用とみなす」と発表。
2024年度税制改正では共済制度の見直しが盛り込まれることになりました。

共済制度の契約解除を行った後再加入しても解除日から2年が経過するまでは掛け金を損金参入できなくすると言う内容ですね。
これにより解約後すぐに再加入して節税すると言うスキームが封じられることになります。

損金算入の制限は2024年10月1日から適用されます。

現在積立金が上限に達している利用者が、10月1日以降に共済制度を解約すると解約してから2年以内に再加入しても、解約日から2年が経過するまで掛け金を損金参入することができなくなります。
また、現在契約中で、解約・再加入を検討しているなら9月30日までに1度解約した上で再加入する必要があります。

経営セーフティ共済 損金算入制限頭打ちしている場合
経営セーフティ共済 損金算入契約継続中の場合

実務的な話をしますと、仮に令和6年10月以降に解約して、すぐに再加入することはできますが、その際に支払った掛金は保険料という経費にはならず、保険積立金という資産に計上されるだけになるということになります。

いずれにしても出口戦略だ

この共済制度を使った節税対策がケシカラン!という中小企業庁の考えはもっともです。
が、制度設計として、「課税の繰り延べ(今納める税金を将来納めること)」が合法的にできてしまうのだから仕方ないですよね。

では、納税者側としては、この共済制度を節税策としてどう使っていけばよいのでしょうか

課税の繰り延べは、「どうせ払う税金なんだから、今払っても後から払っても同じじゃないですか」などと言う税理士がいますが、私はそうは思いません。
今、税金として納めるお金を設備投資や社員への教育訓練投資をすれば、数年後その効果が表れて経営上良い結果を生む可能性が高い。
数年後は、その利益で納めていなかった税金を払えることになります。

こうした側面から、将来解約したら、「雑収入」として収益にオンされ、税金を払っても全く構わないと思います。
(もちろん税金は「累進課税」といって、儲かれば儲かるほど高い税率になりますから、そのあたりは考慮にいれておくべきですが)

また、本当の意味で節税を考えるなら、結局この共済制度が節税面からみて改悪されようとも、「出口戦略」を考えるということに変わりはないのです。
つまり、解約する時には最大で800万円の雑収入が計上されるわけですから、その時に経営状態が絶好調であれば、先程の累進課税で税負担が大きくなります。

逆に考えれば、会社がいつもより経営状態が悪い時(コロナ禍での観光業や飲食業などが良い例でしょうね)に解約すれば、税負担は軽くなります。
経営状態に関わらず、例えば、工場や設備などの大型修繕を行う時に共済の解約をぶち当てるといった策も取れるでしょう。
役員が退職する際の「役員退職金」を支払うタイミングに共済の解約を合わせる策もあるでしょう。

大口の修繕費や役員退職金は税務調査において、常に着目ポイントですから、税理士とともにしっかり理論武装してリスクヘッジしておく必要があることは言うまでもありません。

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所

 

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