Q 最近私の周辺でもマイナンバーカードを作ったという人が増えてきました。マイナンバーカードを作るべきかどうか迷っています。今から作った方がいいですか?
A 考え方によりますが、これからの施策を見ると、今作っておくメリットはあります。
10万円の特別定額給付金がマイナンバーカードで申請できるということをきっかけにして、マイナバーカードがここにきて、俄然注目を浴びています。
これまでの普及率は約25.1%(2021年1月末現在)、まだ約9500万人が持ってない。なんせこれまで絶対持っておかないとっていうメリットがほとんどありませんでした。
これまでのメリット
敢えてこれまでのメリットを挙げるとすると
- 住民票などの各種証明書をコンビニのコピー機で取得できる
- ネット(e-Tax)での確定申告が可能
- 顔写真付き身分証明書として利用できる
- マイナポータル(情報提供等記録開示システム)を利用できる。
1は、そんなに必要な機会はないですし、2は確定申告しないサラリーマンには関係がない、3、4は「なんじゃそりゃ?」という感じですよね。
では、今後予定されているサービスを見ていきましょう。
今後のメリット
- マイナポイントで買い物のポイント還元(2020年9月から実施済)
- 会社員の社会保険・税手続のワンストップ化(2020年10月から実施済)
- 健康保険証・お薬手帳として利用できる(2021年3月運用開始予定)
- ハローワークカードとして利用可能にする(2022年以降運用開始予定)
- 各種納税手続のデジタル化
- 社員証・学生証として利用可能にする
など
カードを持っておいた方がいい理由を挙げるとすると、現状ではまず「マイナポイント」制度。
マイナポイント
マイナポイントは、マイナンバーカードとキャッシュレス決済の普及に向けた取り組みの1つで、「キャッシュレス・消費者還元事業」と同じように、キャッシュレス決済に対して国からポイントが還元される制度。
「キャッシュレス・消費者還元事業」は2020年6月までで終了し、2020年9月から新たに「マイナポイント」が導入されました。
2020年9月~2021年3月まで7か月間の期間限定で25%のマイナポイントが還元されます(ポイント上限5,000円まで)。
2021年2月5日に、マイナポイント還元期間が「2021年3月まで」から「9月まで」に延長することが発表されましたが、3月までにマイナンバーカードを作っておかないと、ポイント還元は受けられません。
マイナポイントの詳しい説明は、公式ホームページに掲載されており、ここにはご丁寧に動画まで付けてくれているので、そちらをご覧ください。
2つ目のメリット・社会保険(年金)と税
マイナポイントの認知度は87%とかなり高く、実際に、この9カ月でマイナンバーカードの普及率が約10%も伸びました。
一定の効果があったと言えるでしょう。
ただ、これは起爆剤ですから、これから継続的にメリットを受けられ、すでに施策が走り出しているものとなると、社会保険(年金)と税金ということになります。
年金
年金関係ではすでに、基礎年金番号が分からない場合であっても、マイナンバーカードを提示すれば相談できたり、各種届出・申請についてもマイナンバーで行えるようになったほか、住所変更届や氏名変更届の届出が省略できるようになっています。
また、各種届出・申請時に必要としていた課税証明書などの添付書類等が省略できるようにもなりました。
基礎年金番号なんて覚えていないって方も多い中で、これは便利です。
税金
さらに、所得税関係ではサラリーマンが毎年行っている年末調整や確定申告で、便利になります。
2020年10月から、毎年年末調整で行っていた、保険料の控除の手続きも、住宅ローンを組む際に必要な課税情報の申請も、マイナポータルからオンラインでできます。
これまで、「生命保険会社からの控除証明書のはがきが見当たらないんですよ~」とか「住宅借入金等特別控除証明書、失くしちゃいました」なんていうこと、ありましたよね?
これからは、マイナポータルからデータで受け取り、年調ソフト(国税庁が無料配付しているソフト)で勝手に計算してくれるので、楽ちんです。
そして、何より便利なのは、マイナポータルを使うと、氏名・住所・扶養親族などの控除申告書のデータは翌年以降も引き継がれるということ。
サラリーマンにとっては、毎年の面倒な恒例行事が減るっていうのはありがたいですよね。
大きな企業などでは、経理担当者の事務量を削減するために、従業員にマイナンバーカードを取得することを義務づける動きがありますので、マイナンバーカード普及の起爆剤になるかもしれません。
このあたりを詳しく知りたい方は、「令和2年分年末調整の電子化 完全マニュアル」をご覧ください。
お国に管理されるのは絶対ヤダという方は
「こんな誘導策に騙されへんぞ!最終的には国民を管理しようとしているんだから、それこそがデメリットじゃないのか!」
まぁ、そう考える人はカードを作らなくていいでしょう。
そもそも国は、国税と地方税と社会保険で国民を一元管理したいという考えでマイナンバーカードをスタートさせたものです。
公式には
- 公平・公正な社会の実現
- 国民の利便性の向上
- 行政の効率化
が目的とやんわり言っていますが、要は税と社会保障の一元管理が目的です。
反対する人は、「行政機関などから個人情報が漏れるじゃないか!」と言っていますが、私はそれは建前で、「国に管理されたくない、個人の金の流れや税、社会保障をガラス張りにされたくない」というのが本音だと思っています。
「所得や金融資産をできるだけ国に把握されたくない」
「迅速に様々なサービスを受けたい」
マイナンバーカードを作るか作らないかは、あなたにとって、この天秤でどちらが重くなるか、と言い換えられますね。
他の先進諸国は、個人の情報を完全に紐付けており、だからこそ、今回のコロナ禍でもあれほど早く個人口座への送金が完了できたのです。
あくまでも私見ですが、日本はもっと早くITを推進すべきで、マイナンバーカードもやるなら徹底的にやるべきだったと思っています。
私がそう思うのですから、官房長官はさらに痛感していたのでしょうね。
菅総理になって普及への流れは加速する
2020年6月に当時、官房長官であった菅氏は「コロナを巡り社会全体のデジタル化がいかに重要であるかを改めて認識した。年内に工程表を策定し、できるものから実施していく」と発言しました。
これを受けて、政府は「2022年度までにほぼすべての国民にマイナンバーカードを交付する」という目標を打ち出します。
その発言をした菅氏が総理大臣になりました。
各省庁がバラバラに行っていたシステムを一元化し、全て繋げる作業をやる!と宣言します。
デジタル改革関連法案準備室の立ち上げ式で、記念撮影の際に中央を平井デジタル相(左)に譲る菅首相
今後のメリットにも書いていますが、2021年3月に健康保険証とマイナンバーカードを一体化できるようになれば、病院にカードを持っていけば受診の際に健康保険証を提示する必要はなくなります。
さらに2021年10月以降はこれまで処方された薬の情報をカードで引き出せるようになります。
将来的には過去の診療情報や感染症の予防接種の記録もマイナンバーカードで把握可能にする構想のようですね。
実現すれば病院の診察券、「お薬手帳」、手術歴など多様な情報がカードを使って確認可能になります。患者が便利になるだけではなく、医師側が過去の治療歴を見て診察できるようになれば医療の効率化にもつながりますよね。
カードを健康保険証として利用したいが、どうしたらできるのか知りたい方はこちらをご覧ください。
さらに、活用分野は医療だけではなく、引越しや死亡の手続きもワンストップでできるような形を目指しています。
例えば、引越しする場合、転出元・転出先の市役所や金融機関などで、しなければならないことは結構多いですよね。
めちゃくちゃ多い!
これだけあると、必ず何か抜け落ちますよ(笑)
これら全てではなくても、マイナンバーカードである程度、一括処理できたら、それは楽ですね。
家族が死亡した時も、気が動転しているのに、やることは山ほどあります。
死亡届や銀行の口座停止、生命保険会社への連絡、健康保険・遺族年金の届け出などなど。
これらも一括で終わらせられると非常に助かります。
現在、自治体などで実証実験中ですから、近い将来マイナンバーカードを使って、ワンストップでできるようになるでしょう。
運転免許証と一体化へ
2020年10月16日、小此木国家公安委員長は、河野規制改革担当大臣、平井デジタル改革担当大臣と会談し、運転免許証のデジタル化などをめぐり意見を交わしました。
この会談後に発表された方針が衝撃的でした。
「運転免許証の情報をマイナンバーカードのICチップに登録して一本化する。住所変更などの手続きもワンストップ化され、住んでいる地域以外でも、更新手続きが可能になる。
早ければ2026年に、マイナンバーカードと免許証を一本化する仕組みを導入する。」
運転免許証は、国民のおよそ65%にあたる約8,200万人が保有しているわけですから、もう無理やり導入です(笑)。
2021年1月19日には、平井デジタル改革担当大臣がコロナワクチンの接種履歴把握に「マイナンバーを今回使わなくていつ使うんだ」と発言しました。
カードが必須というわけではなく、あくまでも接種履歴とマイナンバーと紐付けるということですが、自分のナンバーさえ知らない人も多いでしょうから、国民のマイナンバーに対する意識は変わることになるでしょう。
(「情報プレゼンター とくダネ!」放映画面より)
こうした動きを加速させるための省庁「デジタル庁」が、2021年秋までに創設されます。
デジタル庁は500人体制で始動し、うち100人は専門能力を持った民間人を採用する方針。
「紙の住民票や戸籍謄本が不要になる社会を目指す」と意気込む平井担当相ですが、地方自治体を巻き込んだシステムの統一化・標準化にはまだ数年単位の時間を要することになりそうです。
とは言え、遅かれ早かれマイナンバーカードを作らないと不便すぎる世の中が間違いなく来ます。
日本が目指しているのは、IT先進国エストニア。日本人にはあまりなじみのない国かもしれませんが、Skype(スカイプ)発祥の地で有名です。
この国では、e-IDカードで結婚、出産、引越し、税務申告から投票までこれ一枚でできるというのですから、驚きでしかありません。
最後までマイナンバーカードを作らない!という方はそれでも結構ですが、国が全国民に義務化するか、あるいは義務化同然といった状態になるのは時間の問題だと私は思います。
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