Q ふるさと納税をするために確定申告をしたのですが、医療費が364,195円かかっているのに、医療費控除するのを忘れていたことに気づきました。税金の還付を受けるためには、「所得税の更正の請求書」を税務署に出さなければいけないと聞きました。書き方を教えてもらえますか?
A 確定申告書を提出した後で、税金を納めすぎていたことが分かった場合、「更正の請求」という手続きを行うことで、納めすぎた税金を取り返すことができます。書き方について、解説していきましょう。
税務署に一度確定申告書を提出したら、もう取り返すことはできない、とかややこしい手続きが必要で面倒だ、と思っている方が非常に多いですね。
「税務署は税金を取る一方で返すことなんか、ないんじゃないの?」
確かに、そういう側面は否定できないのですが、ちゃんと手続きすれば返してくれますし、それほどややこしい手続きでもありません。
一般に、税金が実際よりも少なく申告して、税務署から指摘され、正しく直すのが「修正申告」と言います。これは皆さん知っている方が多いですね。
でも、税金を納めすぎたから返してちょうだいっていう「更正の請求」という手続きはあまり知られていません。
でも、簡単にできます。
税理士にやってもらえば、さらに簡単ですが、私の場合、医療費控除漏れで5万円返してもらえる場合で報酬2万円くださいとは言いにくい(笑)。
これから、解説しますので、ぜひご自身でチャレンジしてみてください。
更正の請求ができる期限
まず、更正の請求ができる期限
法定申告期限から5年以内と定められています。法定納期限って言われるとややこしいでしょうから、次の表を参考にしてください。
次に、一旦提出している確定申告書を確認しましょう。
確かに、ふるさと納税は㉔の寄付金控除でされています。
今回の場合は99,000円のふるさと納税をされて、97,000円の寄付金控除になっています。
しかし、㉓の医療費控除には何も書かれていませんね。
更正の請求書の仕組みを知ろう
そこで、更正の請求書を作成していきます。まずは、前半部分。
一番上部の住所、個人番号、氏名、職業、電話番号は確定申告書と同じ内容を記入してください。
その下左、「請求の目的となった申告又は処分の種類」は対象となる申告書、今回の場合は「令和元年分確定申告書」と記入します。
その下右、「申告書を提出した日」は、書面で提出した場合は確定申告書(控)の受領印の日付、e-taxの場合は、メッセージボックスを確認するか、プリントアウトした受付表、あるいは確定申告書左上の「電子申告受付日時」を確認してください。
次に、「更正の請求をする理由」
今回の場合、控除すべき医療費のすべてがもれていたので、「令和元年に申告すべき医療費364,195円について申告しておらず、医療費控除ができていなかったため。」と記載してください。
仮に医療費控除をしたけれど、大きな手術代が1件漏れていたという場合は、「令和元年7月18日に支払った医療費420,000円について、申告しておらず、医療費控除ができていなかったため。」とより具体的に書きましょう。
それでは、具体的な数字の記入に移ります。
まず提出した確定申告書を転記していく
「更正の請求書」の記入方法ですが、確定申告書の内容を「申告し又は通知を受けた額」の行に転記していき、正しい数字を「請求額」の行に記入していくという流れです。
まず、確定申告書の「収入金額」(左側緑色の文字)は、飛ばしてください。
❶ その下の「所得金額」(左側水色の文字)の給与欄⑥にある数字を、更正の請求書の左側上部「総合課税の所得金額」の欄と「申告し又は通知を受けた額」の欄が交わる部分に転記します。数字の左には「給与」と記入してください。
❷ その下の「所得から差し引かれる金額」欄⑩~㉕までを更正の請求書の同じ欄④~⑬に転記します。同じ順番なので、分かりやすいと思います。
❸ 確定申告書の右側に移り、「課税される所得金額」欄㉖を更正の請求書の左手下⑭「①に対する金額」欄に転記します。
その下の「上の㉖に対する税額」欄㉗については、更正の請求書の右手上「⑭に対する税額」欄に転記します。
その下の差引所得金額㊳から所得税及び復興特別所得税額㊷は、そのまま数字を更正の請求書に転記してください。
❹ 確定申告書右側中段の「源泉徴収税額」欄㊹とその下の「申告納税額」欄㊺をそれぞれ更正の請求書の「源泉徴収税額」と「申告納税額」に転記します。
❺ 確定申告書の右側中段「第3期分の税額」の中の「還付される税金」欄㊽
緑の枠線で囲んだ部分が、あなたが確定申告した際に還付された金額ですね。
これを更正の請求書の「還付される税金」欄に転記します。
これで、確定申告書からの転記は完了。
更正の請求書の「申告し又は処分の通知を受けた額」の行は全て埋まりました。
次に正しい数字を記入していく
次に、取り掛かるのは、今回請求する正しい数字を入れていきます。更正の請求書の「請求額」の行です。
ちょっと見にくいかもしれませんので、拡大バージョンで見ていきましょう。
左の行「申告し又は処分の通知を受けた額」をそのまま⑬まで同じ数字を記入してください。
異なるのは、「医療費(特例)控除」欄⑪。
ここに、「医療費控除の明細書」で計算した「医療費控除額」を入れます。
今回の場合、支払った医療費364,195円のうち、控除できるのは264,195円と計算されましたので、この数字を入れます。
すると、請求額の「合計」⑬は、「申告し又は通知を受けた額」の「合計」⑬に医療費控除の金額を加えた数字となるはずです。
すぐ下の①に対する金額は、①から⑬を差し引いた額(今回の場合、7,071,336-2,661,632=4,409,704)の千円未満切り捨ての数字がきます。
請求額の行も同様に①から⑬を差し引いて、千円未満を切り捨ててください。
今回の場合、「課税される所得金額」は
7,071,336-2,925,827=4,145,509⇒千円未満切り捨て 4,145,000円
所得税の速算表を用いて、税額を算出します。
今回の場合、課税所得金額4,145,000円は「330万円を超え、695万円以下」に該当します。
4,145,000×20%-427,500=401,500
これが正しい所得税額
あと少し
復興特別所得税額はこの所得税額に2.1%の税率を乗じて1円未満を切り捨てます。
今回の場合
401,500×2.1%=8,431.5⇒1円未満切り捨て 8,431
その下の「所得税及び復興特別所得税の額」はこれらの合計額を記入します。
401,500+8,431=409,931
源泉所得税額は確定申告と同じ額ですから、左の数字をそのまま引っ張ってきます。
先ほどの「所得税及び復興特別所得税の額」から「源泉所得税額」を差し引いた額を「申告納税額」に入れます。
409,931-483,600=73,669
これと同じ額を「第3期分の税額」の「還付される税金」欄に記入します。
これで数字の記入は完成です!
この「第3期分の税額」の「還付される税金」欄の差額
73,669-19,760=53,909円が今回の更正の請求による還付額です。
最後に、この還付金を受け取る金融機関の口座(更正の請求を行う本人名義の口座)を「還付される税金の受取場所」に記載して、すべて完了です。
少し複雑だったかもしれませんが、要は所得税額を多く申告しすぎていた確定申告書の数字の横に正しい数字を書いていく作業です。
税務署に提出する際の添付書類
更正の請求書をご自身で作成される方でe-taxでする人はほぼいないでしょうから、書面で提出される方が必要になる書類は、次の通りですね。
①更正の請求書…当たり前ですね。提出時には控えも一緒に持っていって、受付印を捺してもらいましょう。
②請求の理由の根拠になる書類…医療費であれば医療費の明細書及び医療費の領収書(確定申告の場合、領収書の提出は不要ですが、更正の請求書の場合は「事実を証明する書類」として領収書、医療費通知の提出が必要)、ふるさと納税であれば、寄付金証明書(原本)の添付が必要です。
③本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)のコピー
当初に提出した確定申告書は提出する必要はありませんが、持って行っておくと、書き漏れがあった場合(当初申告日や当初税額のチェックなど)にすぐ訂正ができるので、税務署に持って行った方がいいですね。
市役所にも更正の請求をする必要があるか
最後に、税務署にこの申告をすることで、市民税も税額が変わってきます。
当然税額が低くなります。
しかし、市に更正の請求書を提出する必要はありません。
税務署から市に連絡され、職権による減額更正が行われます。概ね3か月~4か月程度で決定通知書が届くはずですが、もし税務署に更正の請求書を提出後半年経っても音沙汰がない場合は、市に連絡をしてください。
いかがでしたか?
医療費の計上漏れ、ふるさと納税の計上漏れ、離れて暮らすご両親の扶養控除入れ忘れなど、過去に遡って所得税を返してもらえるケースは結構多いものです。
ぜひ、このQ&Aを参考にして、所得税の還付を受けてください。
なお、ご自身の親御さんが扶養に入れられるかどうかについて興味がある方は「年金生活の親を扶養に入れ忘れてない?」をご覧ください。
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