結婚は年末、離婚は年始にせよ!離婚に関する節税対策はコレだ

離婚に関する節税対策

Q 妻と離婚協議をしています。我々には2人の子供がおり、彼らの養育費や慰謝料、財産分与などクリアすべき問題がたくさんあるのですが、税金面はどうなるのか気になったので、質問します。
これらのお金に税金はかかるのか?かかるとしたら、節税する方法はあるのか、教えてください。
A 離婚に関する税金問題、どうしたら節税になるかも含めて解説していきます。

離婚は結婚の数倍大変というのは、巷でよく言われていることですよね。
税金問題よりも先に、お金の問題では養育費や慰謝料、財産分与をどうするか、子供の問題では親権をどちらが持つか、など解決すべき問題は山積みです。
そもそも離婚するわけですから、感情的に縺れているのは間違いないわけで、その相手と話し合うのは精神的にとても苦痛ですよね。
税金問題はそうした問題解決の最後の最後に解決すべき問題とも言えますが、予め知っておくことで損することはありません。

なぜ離婚は年始にすべきなのか

さて、タイトルの「結婚は年末、離婚は年始」って、一体どういう意味なんでしょう。
これは所得税の配偶者控除の適用条件が「その年の12月31日の現況で」配偶者であるなどの4要件を満たすことと決められているからなんですね。
大晦日の時点で離婚していれば、配偶者控除はできない。

けれど、年明けに離婚したら、配偶者控除はできる。
同じように大晦日に駆け込みで婚姻届を提出すれば、配偶者控除はできる。
配偶者控除そのものが所得1,000万円を超えたらできませんよと制限がかけられましたので、高所得者には関係ありませんし、そんなことだけで離婚の時期を決める人はいないでしょうから、あくまでも税金の知識として知っておくと、話のネタになるというレベルですけどね。
離婚イメージ3

養育費や慰謝料に税金はかかるのか

結論から申し上げますと、養育費や慰謝料は払う方も受け取る方も税金はかかりません
養育費は、扶養義務に基づく生活資金の支払いなので、課税の対象外。
慰謝料は、損害賠償金ですから、支払われたからといって利益を受けるものではありません。
そんな理由からこれらには税金がかかりません。
では、財産分与はどうか。
これも基本的には税金(贈与税)がかかりません
これは、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです。
ただし、次のいずれかに当てはまる場合には贈与税がかかります。

1 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合 この場合は、「その多過ぎる部分」に贈与税がかかることになります。
「多すぎる」って、どういう場面で判断されるのか?
具体的には財産分与をする夫が借金を背負っている場合、その借金の債権者が「夫が妻に分与した財産は大きすぎるだろ!詐害行為として取り消しを求める」と裁判所に訴えるケースですね

2 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
相当イレギュラーな場合なんでしょうけど、課税逃れの偽装離婚が立証された場合、
離婚によってもらった「財産すべて」に贈与税がかかります。
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不動産や株を財産分与する際は課税される場合あり

先ほど財産分与は「基本的には」課税されないと申し上げました。
「基本」があるなら、「例外」もあります。

それが、不動産や株(不動産等と言います)を財産分与する場合。
不動産等を財産分与する場合、分与する者について譲渡所得税の対象となります。

財産分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、分与をした時において時価により当該資産を譲渡したこととなる
(所得税基本通達33-1の4)

しかし、課税されるのは、土地や建物の売却価格が購入した時よりも高額な場合。
具体的には、4,000万円でマンションを買った住居を分与する際、時価が5,
000万円になっていた場合、この差額1,000万円が譲渡所得となり、課税の対象となります。
ただし、自宅として住んでいれば3,000万円の特別控除というものが受けられます。
3,000万円特別控除の要件は次のとおり

【マイホーム3,000万円特別控除の要件】
①自身が住んでいる居住用家屋とその家屋と共に敷地を譲渡すること

②自身が住んでいる又は住まなくなってから3年を経過する日の年末までに譲渡すること

配偶者や親族などへの譲渡ではないこと

なので、別居してから4年を経過しているとか、離婚前に名義を変更するなどしていなければこの特別控除の適用があります。

また、あくまでもマイホームの規定なので、それ以外の不動産(賃貸物件、別荘等)を分与した場合にはこの特別控除は適用されません
つまり、マイホームを分与する場合、3,000万円以上値上がりしていなければ税金はかからないってことですね。

そして、注意すべきは③の「配偶者や親族などへの譲渡には適用されない」ということ。
ですから、先に離婚を成立させて、配偶者でなくなった後の2年以内(民法768条2項)に財産分与を行わないといけません
そのため、この特別控除の適用を受けたければ、公正証書あるいは調停調書に「離婚成立を条件に、離婚に伴う財産分与として当該不動産を譲渡する。」と記載するなどの工夫が必要となります。
離婚イメージ2

財産分与に関わる節税策まとめ

基本的には、離婚に関するお金の流れには税金がかからないということはお分かりいただけたと思います。
しかし、それでも税金がかかる場合があります。
その場合の節税策を最後にお教えしておきましょう。

できれば不動産より金銭による譲渡を行え

金銭で財産分与を行えば、特殊な場合を除いて税金は無関係です。
しかし、金銭以外の不動産等で分与をする側は「譲渡所得税」、分与を受ける側は「登録免許税(固定資産税評価額の2%)」「固定資産税(固定資産税評価額の1.4%)」がかかってきます。
財産分与の節税を考えるのであれば、できるなら金銭でのやりとりがベターですね。

不動産で分与するなら離婚後に

「住んでいた不動産(マイホーム)を売った場合、儲けが出ても最高で3,000万円までは税金が課せらない。」でしたよね。
何度も申し上げますが、この特別控除は夫婦間や親子間での譲渡の場合には適用されない
不動産の分与は「離婚後、他人になってから」です。

ここから先は、それでも税金がかかる場合(マイホーム売却の儲けが3,000万円以上あった場合や別居後相当期間経っている場合など)の対策です。

不動産を10年以上所有したなら軽減税率特例を受けよ

不動産を売却した年の1月1日現在でマイホームの所有期間が10年超の場合は、特別控除を適用した残りの額に対して、軽減税率特例が使えます。
先ほどの3,000万円特別控除と、この10年以上軽減税率特例は併用できるんです。
具体的な例を挙げましょう。
離婚して、不動産売却しようとする時期が2023年11月とします。
マイホームは2013年9月に購入。
売却しようとする段階ですでに10年と2か月所有しています。
しかし、所有期間の基準は売却する年(2023年)の1月1日で判断しますから、所有期間は9年と4カ月。
まだ、この特例は使えないということになります。
離婚する時期(不動産を売る時期)、遅らせましょう笑。
2024年1月になってから売れば、軽減税率特例が使えます。
マイホーム売却時の税率

20年以上連れ添ったなら配偶者控除(贈与税の特例)を受けよ

最後にご紹介するのは、贈与税の配偶者控除。
離婚前にどうしても不動産の名義変更したいという場合にはこれを使うことを検討してください。
この配偶者控除って、別名「おしどり夫婦贈与」
(相続税の節税に使われる控除。20年以上連れ添った夫婦しか使えないことから、こう呼ばれている)
いやぁ、めちゃくちゃ皮肉ですよね、これから離婚する夫婦にこれを勧めるのは笑
夫婦の婚姻期間が20年以上である場合、居住用不動産を対象とし最大2,110万円の節税が可能です。
2,110万円の内訳は、配偶者からの贈与について2,000万円、その年の贈与税の基礎控除が110万円となります。
この配偶者控除の用件は次のとおり

【贈与税の配偶者控除の要件】

① 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
② 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
③ 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

この規定は、何も離婚を前提としたものではなく、単純に配偶者にマイホームを贈与する際の規定なんですね。
注意しなければならないのは、「その後も引き続き住む見込みであること」という要件。

もし、贈与後に売却しても要件が使えるということであれば、夫婦で共有名義にしてから売却することによって、譲渡所得の3,000万特別控除を夫婦でダブル適用し、合計6,000万まで譲渡所得を無税にできてしまいます。
これを防止するために、売却することが前提の場合は、贈与税の配偶者控除を使えないことになっています。

さいごに

離婚にまつわる税金について、説明してまいりましたが、いかがでしたか?
夫婦間での財産分与の比率にかなり差がある場合と、財産分与する不動産価値が購入時よりもかなり高額な場合に税金が課せられてしまうことなど、お分かりいただけたと思います。

最後に筆者から一言。
離婚する夫婦の大半は、「情」はあるかもしれませんが、「愛情」なんてないに等しい。
であるなら、お金で解決できることは、早くお金で解決しましょう。
残された時間は永遠ではありません。
稼ぐ力を持っている側の方には、特に「あなたは稼げる力を持っているんでしょう?ならば、時間をお金で買いましょう」と申し上げて、このブログを終えたいと思います。

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所

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