配偶者控除 パートが働き損にならないライン(〇万円の壁)令和8年最新版

パートの主婦

Q 妻がパートで働いています。「〇万円の壁」が変更されたと聞きましたが、結局妻の年収はいくらまでにするのが得になるのでしょう

A 税法と社会保険の取り扱いの違いを理解して、見極めましょう

2024年の年末から国民民主党の躍進によって大きくクローズアップされた「103万円の壁」撤廃ムーブメント
ついに2025年3月、税制関連法案が衆議院を通過し、2026年4月には社会保険関係で大きな変更がありました
では、何が変わったか

そもそも「103万円の壁」とは

そもそも「年収103万円の壁」の見直しは、税負担を理由にした働き控えを解消し、幅広い世代の手取りを増やすべきだという声から始まりました
所得税では、収入や所得から一定額を差し引く「控除」の仕組みがあります

まず、基礎控除
最低限の生活費用には課税しないという考え方から、控除されます
これまでは48万円でした
次に給与所得控除
サラリーマンやパートの方がスーツや靴などを購入する費用を「経費扱い」としてあらかじめ差し引くもの
控除額は年収が多いほど増え、年収が低い層に適用される「最低保障額」はこれまで55万円でした

この控除額を今回の改正で増やしたわけです

所得税の壁のしくみ(令和7年最新版)
奥様の所得税がかかり始めるパート収入は103万円から160万円に引き上げられました
課税される最低ラインの年収(=課税最低限)は、58万円(基礎控除)と37万円(特例部分)と65万円(給与所得控除)をあわせた160万円になったわけです
令和7年からは年間160万円まで給料をもらっても所得税はゼロです
では、奥様ご自身の税金の話から、夫の配偶者控除の話にテーマを進めます

奥様はこれまで以上に働いても控除が受けられるように

夫は奥様のパート収入によって、配偶者控除(または配偶者特別控除)が受けられます
これも壁ではなく、スロープのように奥様の収入が多くなれば段階的に夫の控除が下がっていく仕組みになっています
スロープを図にしてみましょう
まずは令和6年までの配偶者控除のイメージ

配偶者控除のイメージ(6年まで)
横軸が奥様のパート収入額、縦軸が夫が受けられる控除額
奥様のパート収入が103万円を超えても、夫は控除を満額の38万円を受けられていますね
「配偶者控除」が「配偶者特別控除」って名前に変わっただけです
150万円から201万円までで少しずつ夫が受けられる配偶者特別控除の金額が下がってきます
では、令和7年はというと
配偶者控除のイメージ(7年)
図の雰囲気は同じですね
スロープのイメージは同じ
変わったのは、夫が配偶者特別控除を満額もらえる奥様のパート収入金額が150万円から160万円になったというところ
配偶者特別控除が受けられる上限の201万円は変更ありません
つまり、奥様ご自身の所得税も夫の配偶者控除も奥様のパート収入160万円まではかかりません
これを超えるとジワジワ控除額が下がるということですね
所得税に関してはそもそも壁なんてなく、スロープの始まりが先に延びたというイメージをつかんでいただけましたか

次に、社会保険の話に移ります

社会保険には壁がある

税法上の扶養とは考え方が違うので、以下の図をご参照ください
まずは、令和6年までの取扱い

扶養の概念(6年まで)
続いて、令和7年以降の取扱い
扶養の概念(7年最新版)
(注意点)税法上の扶養に交通費や通勤手当を含める必要はありませんが、社会保険上の扶養には、交通費やその他の手当(住宅手当など)も年収に含まれますので、注意してください

106万円と130万円の壁の違いが分かりにくいかもしれませんが、要は従業員数51人以上の大きな会社にお勤めのパートさんは106万円の壁、それより小さな会社にお勤めのパートさんは130万円の壁とざっくり覚えておけば大丈夫です

106万円の壁撤廃(令和8年10月)

「106万円の壁撤廃」とはどういうことかと言うと、令和8年10月以降は「年収に関係なく、働く時間で判断する」ということ
つまり、今後も社会保険料を払いたくない方は、2026年10月以降は「週20時間」を超えないように、労働時間を調整すればよいということになります

「壁の撤廃」って聞こえは良いですが、2026年3月末に全ての都道府県の最低賃金が時給1,016円を超え、週20時間働けば誰でも年収106万円(月額8.8万円)を超えるようになったので、撤廃も何も自動的に時間だけ気にすれば106万円を超えなくなっただけの話
「106万円の壁」は「従業員51人以上の大きな会社にパートに行ってる人の話で私は中小企業にパートに行ってるから関係ないわ」と高をくくっていたあなた
あなたへの包囲網も将来的には狭められていきます
 「従業員51人以上」の条件についても、段階的に対象企業を拡大していき、2035年10月にはすべての企業の労働者が社会保険の加入対象となります
106万円の壁(51人以上の企業の今後)

つまり将来的には、勤め先の従業員数や賃金にかかわらず、学生ではない労働者が週に20時間以上働くと、社会保険へ加入することになります
106万円の壁はなくなりますが、新たに「週20時間の壁」ができるということを覚えておいてください

130万円の壁を気にしてシフト調整しなくてよくなる(令和8年4月~)

社会保険をより多くの方から納めてもらおうとする流れが変えられませんが、同時に「働き控え」も何とかしたい厚労省
そこで、これまでの被扶養認定基準「年末には130万円を超えそうだよね」という曖昧な基準が変わります
つまり、残業などで年収が130万円を超えてしまったとしても、当初の労働契約で年収130万円未満と決められていれば、扶養内にとどまれるようになるということです
今回の改正によって「130万円を超えそうだから残業やシフトに入ることを諦める」といった調整が大幅に緩和されることが期待されます
契約上の年収を実際の年収が超えてしまったとしても、その超過が「社会通念上妥当である範囲」の一時的なものであれば、直ちに扶養認定が取り消されることはありません
130万円の壁緩和で喜ぶパート

社会保険の壁の注意点

社会保険の壁には2点、注意事項があります

夫の年収の半分以下

仮に妻が年収106万円未満で働いていたとしても、夫の年収が妻の2倍以上でなければ、夫の扶養から外れることになるんです
所得税にそのようなルールはありませんが、社会保険は「養うってことは稼ぎ頭なんでしょ?稼ぎ頭ってことは妻の倍以上年収はもらってるんでしょうね?」っていうルールなんですね
夫の年収195万円、妻の年収100万円って家庭なら、妻は「あんた!死ぬ気であと10万円稼いでおいで!」と、ドヤされることになるんでしょうか

106万円や130万円の壁は自営業の妻は無関係

夫が自営業の方は、保険は「国民健康保険」に加入し、年金は「国民年金の第1号被保険者」に該当します
「国民健康保険」は、世帯の収入や人数によって保険料が決まるシステムですから、扶養という概念がありません
また、「第1号被保険者」の妻はそもそも年収があろうがなかろうが、保険料を払っているんです
つまり、妻の年収は全く関係がないんですね
106万円や130万円の壁を気にしなくてはいけないのは、会社員や公務員の妻だと覚えておいてください

余談ですが、旦那さんの勤務先から旦那さんが配偶者手当などをもらっている方はそのあたりも確認すべきでしょう
奥様の年収が一定金額(130万円など)未満の場合月1万円などがよくあるパターンですから、これらも確認しておきましょう

ご主人の扶養に「入る・入らない」で、所得税、市民税、国民健康保険料、国民年金保険料、配偶者手当などが大きく変わってきます
パートの女性

所得オーバーしていることがバレた場合

うかつにご主人の扶養に入ったまま、奥様の年収(所得)が扶養に入れるラインを超えてしまうと、「扶養是正」の通知が市役所からご主人の職場に届くことになります
すぐに届くのではなく、翌年夏以降に届きます
すると、去年1年間の上記の税金(配偶者控除)、手当(配偶者手当)などを全て返せと言われるだけでなく、奥様の国民健康保険料の負担を求められ、さらに奥様が使った医療費の保険負担を求められます(本来使えなかったご主人の保険を使ったため)

これは痛いです
一気に数十万円の負担を負うことになります

税金・健康保険・扶養手当の3つを見極める

こうしたことを理解すれば、奥様のパート収入を〇万円までに収めれば、どの負担が抑えられるかが明確になります

【追記】
2024年10月の衆議院議員選挙では「手取りを増やす」ことを公約とした国民民主党が躍進しましたね
国民民主党が掲げる「103万円」は壁の撤廃ではなく、減税策
基礎控除を103万円から75万円拡大し非課税ラインを178万円に引き上げるというもの
そうすると、このブログで取り上げたパートさんだけではなく、すべての給与所得者が減税になります
給与収入300万円で8.6万円、500万円で13.2万円、1,000万円なら22.8万円の減税
そりゃ筆者も嬉しいですけど、何かを減らせば何かを増やすというのが財務省
何かで増税になる可能性もありますので、素直には喜べません
国民民主党には税金面だけではなく、社会保険面でも切り込んでもらって、壁を気にせずに働ける社会を実現してほしいものです
ちなみに党首・玉木氏は筆者が大阪国税局総務課勤務時代(平成13年頃)に一緒に仕事をさせていただきました
是非頑張ってほしいものです

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

人気記事はこちら

関連記事

  1. マイホームと電卓

    家を売った時こそ節税せよ!令和8年分トクする確定申告~税理士が教えてく…

  2. 乱立する家

    家族間での土地売買ってできるのか?

  3. テレワーク時のパソコンとコーヒー

    テレワーク費用が自腹!所得税は安くならないの?

  4. 医療費のピース

    医療費控除でトクする裏技★へぇー!今まで知らなかった★令和7年分確定申…

  5. 損益通算で節税せよ

  6. ハッピーになろう

    更正の請求書で納めすぎた所得税を取り戻せ