配偶者控除 パートが働き損にならないライン(〇万円の壁)令和6年最新版

パートの主婦

Q 妻がパートで働いています。「〇万円の壁」とかよく聞くのですが、妻の年収はいくらまでにするのが得になるのでしょう。 

A 税法と社会保険の取り扱いの違いを理解して、見極めましょう。

女性の社会進出を後押ししよう、就業調整はやめてもらおうと、2018年から所得税法の配偶者控除が変わりました
また、2020年からはさらに大きく所得税法が変更されました
さらに、社会保険では106万円の壁、130万円の壁の基準が奥様のお勤めの会社の規模によって変更されます(2024年10月)
では、何が変わったか

夫が高額収入者は不利に

まず、夫が一定(所得なら900万円、年収なら1,095万円)を超える場合の配偶者控除が引き下げられました
つまり、夫の年収が1,095万円を超えるような高額収入の家庭は不利になりました
金持ちは我慢しなさいってことですかね
次に、奥さんの年収が103万円から150万円の場合の配偶者特別控除が一定額(所得控除と同額)に

これも、夫の年収が1,095万円以下っていう条件はありますが、奥さんの年収が103万円超〜約201万6,000円未満の家庭は有利になりました
同一生計配偶者と源泉控除対象配偶者の違い

この表を見ていただけると、分かりやすいと思います
縦軸が奥様の年収、横軸が夫の年収です
「源泉控除対象配偶者」という部分が、夫の配偶者控除や配偶者特別控除が満額できる部分です
これを超えると、ジワジワ控除額が減っていきます

では、最新版の取扱いを説明しますね。まず、税法上の話をします
配偶者控除と配偶者特別控除の違いについてですが、奥さんのパート収入が103万円までだと、配偶者控除38万円が受けられます。103万円から150万円の範囲だと、配偶者特別控除38万円が受けられます。なので、奥さんの給与が年150万円までだと夫は満額控除が受けられます103万円ではありませんよ

奥さんはこれまで以上に働いても控除が受けられるように

150万円から201万円までで少しずつ夫が受けられる配偶者特別控除の金額が下がってきます
下の図がそのイメージです。2018年以前のものと比べてみてみましょう

【図1】配偶者控除のイメージ
配偶者控除(改正前後)

改正前は103万円から少しずつ下がっていきましたが、改正後は150万円から少しずつ下がってますよね
夫の年収が1,095万円超の場合も触れておきましょう。図2が夫の給与の額に応じた配偶者控除の額です
※ 他のサイトで「給与所得900万円は給与収入1,120万円」と解説しているものがありますが、これは令和元年までの算出方法ではじき出したもので、誤りです

【図2】控除額早見表
令和2年版 配偶者控除 控除額早見表
配偶者控除・配偶者特別控除が、夫と妻の年収によって控除額が変動することがお分かりいただけると思います

次に、社会保険の話に移ります
税法上の扶養とは考え方が違うので、以下の図をご参照ください
妻がパートの場合の扶養基準
(注意点)税法上の扶養に交通費や通勤手当を含める必要はありませんが、社会保険上の扶養には、交通費やその他の手当(住宅手当など)も年収に含まれますので、注意してください

106万円と130万円の壁の違いが分かりにくいかもしれませんが、要は従業員数51人以上の大きな会社にお勤めのパートさんは106万円の壁、それより小さな会社にお勤めのパートさんは130万円の壁とざっくり覚えておけば大丈夫です
2024年10月から従業員数51人以上100人以下の会社にお勤めのパートさんは130万円ではなく、106万円の壁が適用されることになります

例えば、妻の年収が130万円以上になると(夫の年収が1,095万円以内の場合)、税法上の配偶者特別控除は満額38万円受けることができますが、夫の社会保険上の扶養は外れてしまうので、「働き損」が出てしまいます
ざっくりですが、約25万円くらいの健康保険料と年金を支払わなくてはならない
しかし、この社会保険の壁については、取扱いが柔軟になっていますので、後ほどしっかり説明しますね
その前に、この社会保険130万円の壁には2点、注意事項があります

夫の年収の半分以下

仮に妻が年収130万円未満で働いていたとしても、夫の年収が妻の2倍以上でなければ、夫の扶養から外れることになるんです
所得税にそのようなルールはありませんが、社会保険は「養うってことは稼ぎ頭なんでしょ?稼ぎ頭ってことは妻の倍以上年収はもらってるんでしょうね?」っていうルールなんですね
夫の年収240万円、妻の年収125万円って家庭なら、妻は「あんた!死ぬ気であと10万円稼いでおいで!」と、ドヤされることになるんでしょうか

130万円の壁は自営業の妻は無関係

夫が自営業の方は、保険は「国民健康保険」に加入し、年金は「国民年金の第1号被保険者」に該当します
「国民健康保険」は、世帯の収入や人数によって保険料が決まるシステムですから、扶養という概念がありません
また、「第1号被保険者」の妻は、そもそも年収があろうがなかろうが、保険料を払っているんです。つまり、妻の年収は全く関係がないんですね
130万円の壁を気にしなくてはいけないのは、会社員や公務員の妻だと覚えておいてください

130万円の壁がゆるくなる(2023年10月~)

税金の基準は1~12月で判断します
しかし、社会保険の場合、あくまでもこれからの見込みで年130万円未満という基準なんです
税金のように、1~12月で判断するのではなく、年のどの段階でも130万円を超えそうだよね、という段階で夫の扶養から外れます
その「超えそうだよね」の判断が、保険組合によって異なるのが分かりにくい原因です
年130万円基準は、年のどの段階でも、その時点から見て12か月遡った合計年収が130万円を超えたら、扶養から外れます(原則論ですけどね。現実は年末判断している会社も多いです)
月108,334円基準は、単純に年130万円を12か月で割っただけですけど、多くの場合は月108,334円超えが3ヶ月続いたら、年130万円超える可能性が高いから、扶養から外しますってところが多いですね(外れた後、扶養に復帰しようとすれば、3ヶ月連続で月108,334円以内に抑える)

さて、先ほどお伝えした「130万円の壁」、おさらいすると「従業員50人以下の企業のパートさんは年収が130万円を超えると社会保険料を自ら払う必要がある」ということでした

しかし、壁を気にして働く時間を調整するパートさんが多く、人手不足が深刻になってきたことから、2023年10月以降、年収130万円を超えても連続2年までなら扶養にとどまれるようになります(2023/9/24 YAHOO!ニュース「年収130万円超、2年まで扶養 保険料負担、企業へ補助金」

年収の壁 厚労省
(厚生労働省HP 「130万円の壁」

厚労省の言う「雇用主が一時的な収入増だと証明し、健康保険組合などが個別に判断する仕組みをとり入れる。」とは具体的には以下のような場合

• 職場の繁忙期で、残業や出勤回数が増えた
• ほかの従業員の退職や休職によって、業務量が一時的に増加した
• 業務が繁忙期や受注量の増加で、企業全体の業務量が増加した
• 突発的な業務の発生で、業務量が増加した など

時給が上がった、手当が増えたなど、恒常的に給与が上がる見込みの場合は認められませんが、上記のような場合には連続2年までなら「130万円の壁は外れる」ことになります
上記の項目に該当する場合は、会社に「一時的な収入増だ健康保険組合に証明して、引き続き被扶養者と認定してもらえるようにしてください」と申し出てみましょう
2025年には年金制度改革がありますから、そこでこの「連続2年まで」規定も手が加えられるはずです

また、大企業で働くパートさんに立ちはだかる「106万円の壁」についても、厚労省は「壁を越えても手取りが減らないように賃上げをしたり、勤務時間を延ばしたりした企業に1人あたり最大で50万円を助成する方針」とのことなので、壁を超えて社会保険料を払ったとしても、その分お勤めの企業から賃上げしてもらえる可能性が出てきました

106万円と130万円の壁については、こうした救済措置が出てきたことは朗報ですね

余談ですが、旦那さんの勤務先から旦那さんが配偶者手当などをもらっている方はそのあたりも確認すべきでしょうね
奥様の年収が103万円未満の場合月1万円などがよくあるパターンですから、これらも確認しておいた方がいいでしょう

ご主人の扶養に「入る・入らない」で、所得税、市民税、国民健康保険料、国民年金保険料、配偶者手当などが大きく変わってきます
パートの女性

所得オーバーしていることがバレた場合

うかつにご主人の扶養に入ったまま、奥様の年収(所得)が扶養に入れるラインを超えてしまうと、「扶養是正」の通知が市役所から旦那さんの職場に届くことになります
すぐに届くのではなく、翌年夏以降に届きます
すると、去年1年間の上記の税金(配偶者控除)、手当(配偶者手当)などを全て返せと言われるだけでなく、奥様の国民健康保険料の負担を求められ、さらに奥様が使った医療費の保険負担を求められます(本来使えなかったご主人の保険を使ったため)

これは痛いです。一気に数十万円の負担を負うことになります

産休・育休中の手当金・給付金はどうなる?

最後に、産休中は健康保険から「出産手当金」と「出産育児一時金」が支給されます。また、育休中は雇用保険からは「育児休業給付金」が支給されますよね。助かります。けれど、これって配偶者控除の対象に入れられてしまうのでしょうか
大丈夫
出産育児一時金や出産手当金、育児休業給付金は、非課税扱いとなっていて、配偶者控除の対象になるかどうかを判断するための基になる合計所得金額に含まなくて構いません
純粋に給与の金額だけで判断してください

税金・健康保険・扶養手当の3つを見極める

こうしたことを理解すれば、妻の年収を〇万円までに収めれば、どの負担が抑えられるかが明確になります

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

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