個人事業開業時にすべきことの新常識★知らないと大損する!

個人事業の開業・廃業等届出書イメージ

Q 令和3年1月から個人で事業を始めます。税金、保険、年金などで、どのような手続きが必要か教えてください。また、所得税を確定申告する際には青色申告した方が得だと聞きましたが、どういうことでしょう?メリットやすべきことについて教えてください。

開業時に提出が必要な書類と青色申告のメリットやすべきことについて、お伝えしていきます。

脱サラして、個人事業を始めるけれど、何をどうしたらいいか、分からないという声をよく耳にします。
サラリーマン時代は、給与の支給から、社会保険や住民税の天引き、年末調整まですべて会社がやってくれていたわけですから、ビビッてしまうのも無理はありません。

脱サラしてすべきことの大きな2つ。それは税金と社会保険の手続き。
まずは、税金。

税金関係は税務署だけでOK

税金関係

開業することが決まったら、税務署に「開業しましたよ。」と知らせる必要があります。
開業時に税務署に提出する書類

まず、「個人事業の開業・廃業等届出書」は必須。
事業開始から1ヶ月が期限になっていますが、特段遅れたからといってペナルティがあるわけではありません。
しかし、コロナ禍の持続化給付金が支給される際には開業届が提出されていない自営業者は、給付金を受け取ることができない、なんて事態が起きました。
なので、できる限り早く提出しておくに越したことはありません。
2番目の「青色申告承認申請書」については、ご質問の答えになりますので、この後しっかりお伝えします。
3番目の青色事業専従者とはあなたと生計を一にしている配偶や15歳以上、つまり高校生以上の子供などの家族従業員のことをいいます。
そして、「専従者給与」とは、この専従者である家族への給与のことです。2番目の青色申告を提出し、かつ、この3番目の「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すれば、この給与が経費になるというわけです。
これも詳しくは後述します。
4番目は、家族ではなく、赤の他人を雇った場合、源泉所得税を徴収する必要があるのですが、預かった所得税を毎月毎月納めるのは面倒ですよね。この「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」(通称「ノウトク」と言います)を提出しておくと、半年に1度(1月20日と7月10日)納めれば良いことになります。
ただし、従業員の数が常時10人未満という小規模な事業所のみに許された制度です。

税金関係は、とりあえずこれらを必要に応じて税務署に提出しておけばOK。
市役所などに提出する必要はありません。3月に確定申告したら、自動的に税務署から市役所に連絡がいき、6月に市役所から市民税の税額決定・納税通知書がきますので、これを納めるという流れになります。

社会保険関係

社会保険関係については、軽く触れておきます。
サラリーマン時代がいかに恵まれていたかを思い知ることになる社会保険(笑)。
次の表のように扱いが変わります。
会社員と自営業の社旗保険関係の違い

まずは健康保険。

健康保険

健康保険については、次の2つから選ぶことになります。
①国民健康保険
②健康保険(任意継続)

国民健康保険に加入する場合は、退職した日から14日以内に、離職票・退職証明書・資格喪失連絡票など会社を退職したことがわかるものを持って、市区町村役場に行き、国民健康保険の窓口で手続きをします。
健康保険(任意継続)は、サラリーマン時代の会社の健康保険に、退職後も継続して加入するというものです。
以下のような条件があります。
〇退職前に社会保険に加入しており、資格喪失の日の前日までに継続して2カ月以上の被保険者期間があること
〇資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に手続きすること
加入期間は2年間。ただし、1日でも滞納した場合や、就職して社会保険に加入した場合は脱退することになります。
多くの方は任意継続の方がお得になります。というのは、国民健康保険の場合は「扶養」という概念がないため、家族それぞれが国保の被保険者となるので、基本的に別々に保険料がかかり、世帯主がその納税義務を負うことになるからです。

次に年金

年金

20歳以上60歳未満の人は国民年金に加入しなければなりません。
国民年金には、次の3つのタイプがあります。
① 第1号被保険者(学生、無職、自営業者)
② 第2号被保険者(会社員や公務員)
③ 第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者が対象)

脱サラすると、「第2号被保険者」から「第1号被保険者」に変更することになります。退職日の翌日から14日以内に、年金手帳と認印を持って市役所に行き、国民健康保険課で「種別変更届」を提出します。
後日、国民年金の納付書が送られてくることになります。

あなたに配偶者がいる場合は、扶養家族も第1号被保険者となり、手続きが必要になってきます。

青色申告って何?

では、税務署へ提出する青色申告承認申請書に話を戻します。

そもそも青色申告とは何でしょう?
超簡単に言えば、「きっちりしとったら、ええことあるで。」ということ。
簡単すぎました?

大前提として、青色申告ができるのは、不動産所得、事業所得、山林所得を営む個人事業者。
頭文字の「富士山」(動産・業・林)で覚えてくださいね。

専ら不動産だけをしていないとダメってことはありません。
サラリーマンでも学生やパート、年金をもらっている方も不動産や事業をしていれば、青色申告はできます。

青色申告したら受けられるメリット

「青色申告したらこんなええことあるで。」の中身を先に聞かないと、やろうと思わないでしょうから、先にお伝えしておきます。
「ええこと」は次の5点

① 青色申告特別控除
② 青色事業専従者給与控除
③ 事業損失の3年間繰越控除
④ 少額減価償却資産の特例
⑤ 貸倒引当金の設定

青色申告特別控除

所得税額を算出するには、売上げから仕入れや経費を差し引いた「儲け」から各種の控除を差し引いたものに税率を乗じるという計算過程を経ます。

青色申告をせずに白色申告をした場合、「儲け」=「所得」ですが、 青色申告の場合は「儲け」から「青色申告特別控除」を差し引いたものが「所得」となります。

次のイメージ図を見ていただけるとイメージしやすいですよね。
差し引いてもらえるのですから、税金は減ります。
青色申告特別控除のイメージ

では、いくら差し引いてもらえるのか?
令和2年分の確定申告から変更されています。
青色申告特別控除の改正前後

10万円控除の簡易な記帳とは複式簿記でなくても良い。
つまり、家計簿のような形式でも構わないということです。要は売上げや仕入れ、経費がいつ計上されているかが後から帳簿で分かれば良いということ。

55万円以上の控除を受けようと思えば、複式簿記をする必要があります。

複式簿記というのは、借方、貸方に勘定科目を入力していく簿記のやり方ですね。
弥生会計 仕訳日記帳サンプル
(弥生会計の仕訳日記帳画面。借方・貸方の仕訳の基本さえ分かっていれば、簡単に入力できる。)
市販の会計ソフトに入力していけば、条件は満たすはずです。
損益計算書や貸借対照表も、入力さえしっかりしていけば、会計ソフトが自動的に作ってくれます。

ちなみに、発生主義というのは、例えば売上げを計上するときに、請求書を発行した段階で売上げを計上するやり方。請求書を発行して数日後に振込入金されたときに売上げを計上するのが現金主義です。
青色申告をするには、すべて請求書を発行した、もらった、その日に計上する必要があります。

これらの条件は以前から変わっていません。この条件を満たして書面で確定申告をするということであれば、55万円の控除が受けられることになります。
さらに10万円上積みして65万円の控除を受けるには、次のフローにあるように、とにかくe-Taxで提出することです。電子帳簿保存はまだまだハードルが高いですからね。
ちなみに、税務署に行ってパソコンで申告しても、それはe-Taxとは言いませんよ。
青色申告65万円控除フロー

大きい商いをしている方にとっては、儲けから最大65万円差引いてもらっても、どうってことないかもしれませんが、小規模事業者にとっては大きく税額が下がります。

青色事業専従者給与控除

青色申告者が「青色事業専従者給与に関する届出書」をに提出することにより、生計を一にする 配偶者(奥様あるいはご主人)と 親族(じいちゃん、ばあちゃん、息子・娘など。15歳未満を除く) の給与分を全額必要経費とすることができます。
白色だったら、次の計算式で求めた金額が上限になります。
白色事業専従者控除の金額計算式
例えば、
収入400万円・経費250万円・専従者(配偶者)の場合であれば、
(400万円ー250万円)÷(1+1)=75万円
配偶者の上限86万円を下回っていますから75万円が控除額です。
収入400万円・経費200万円・専従者(配偶者)の場合であれば、
(400万円ー200万円)÷(1+1)=100万円
配偶者の上限86万円を上回っていますから、86万円が控除額です。
要するに、白色なら上限があるので、儲けていれば経費になる部分が少なくなり、たくさん税金を払わなくてはならない。
青色だったら、上限を気にせず、全額経費です。

ただし、これは 「青色事業専従者給与に関する届出書」① 「青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日」までか、もしくは ② 「その年の1月16日以後に事業専従者を有することとなった場合には、その日から2か月以内」 までに所轄の税務署に届け出る必要があります。

事業損失の3年間繰越控除

白色申告の場合は、その年に赤字になっても翌年に繰り越せません。
しかし、青色申告をしていれば、赤字を翌年に最大3年間繰り越すことができます。
ずっと黒字経営なら問題ありませんが、コロナ禍のような誰も予想できない逆風はあるものです。
青色申告をしていれば、赤字を出した翌年に黒字が出ても、税金を納めなくてよい場合もあります。
個人的にはこれが青色申告の最大のメリットではないかと思います。

青色申告 所得税・純損失の繰越控除

少額減価償却資産の損金算入

白色申告の場合、パソコンや応接セットなどを経費化できる上限は10万円未満。10万円以上のものは資産に計上して減価償却費として少しずつ経費化していくことになります。
青色申告の場合は、その上限が30万円未満。
これを少額減価償却資産の特例と言います。
30万円未満のものは一気に経費化できます。
この30万円とは、税込みか?税抜きか?
開業したばかりの方は消費税免税事業者ですから、迷いなく税込みで判断します。
消費税を支払う課税事業者になった時には、税抜き経理なら税抜きで、税込み経理なら税込みで判断します。

貸倒引当金を設定できる

白色申告の場合は、そもそも貸倒引当金の設定はできません。
青色申告の場合は、貸倒引当金が設定できる。
貸倒引当金って???
例えば、掛け売りしたお金が回収できないこともあるよね。
それを「貸し倒れ」っていうんだけど、それを先回りして一部経費にしていいよ。
これを「貸倒引当金」と言います。
まだ貸し倒れていないのに経費化できるんです。素晴らしいでしょ?
ただ、これは初年度だけ節税効果があるものです。
翌年も経費化できますが、前年分を取り消して新たに設定するので、差し引きすれば節税効果はほとんどありません。

青色申告からは少し外れますが、開業前にかかった費用も経費になることをご存じですか?
そのあたりの詳しいことは「開業前にかかった費用も経費になる!~スタートアップから節税せよ~」をご覧ください。

まとめ

いかかだったでしょうか?
開業されて、しばらくは分からないことだらけで大変かもしれません。
社会保険の手続きはそう難しくないかもしれませんが、税金のことは少し難しいと考えておられる方も多いでしょう。
しかし、確定申告は避けて通れません。
開業したばかりの段階では、まだまだガンガン儲けるというところまでいかないかもしれません。
備品を揃えたり、設備投資したり、物入りなことも多いでしょう。
できる限り節税を!と考えるならば、青色申告は必須と言っても過言ではないでしょう。
巷にいろんな会計ソフトが発売されていますので、ぜひチャレンジしてみてください。
そして、事業の売上げ
が3,000万円を超えるあたりからは税理士にお願いすることを考えてもいいかもしれません。
5,000万円を超えたら、節税や事業承継を考えて法人化するのも良いかもしれません。
あなたの事業が大きく羽ばたくことをお祈りしています!

 

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

 

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