Q 会社を設立して2年間は消費税を払わなくてよいと聞いていましたが、商規模が大きいとそれが1年間になるって本当ですか?消費税の負担をできるだけ少なくしたいのですが、方法はありますか?
A 消費税法をうまく利用して、消費税負担を減らす方法があります。
平成24年までは、単純に法人設立2期目まではどんなに売上高があっても消費税はかかりませんでした。
しかし、平成23年度税制改正において、この仕組みに新たな判定基準が設けられたんですね。平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度については、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、課税事業者となる場合(特定期間のことを指します。後ほど詳述します)が発生することになりました。
1期目は良いとして、2期目から消費税を支払うというのは、設立してすぐの資金を回さなければならない状況ではキツいですね。
では、2期目以降の消費税が何とかならないか、について話を進めましょう。
その前に、このテーマは、事業年度開始の日の資本金の額が1千万円以上の法人は、設立1期目も2期目も免税事業者となることはできません(消費税法12条の2①)。
消費税の免税を活かしたいなら、資本金は1千万円未満に抑えましょう。
まず、基準期間や特定期間という用語を理解しましょう。
特定期間とは?
特定期間って何かっていうと個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。
通常の会社の場合は、このようなイメージになります。
この改正により、法人設立直後の消費税の免税期間については、特定期間(前期の前半の6ヶ月間)における課税売上高または給与等支払額の合計額が1,000万円を超えるかどうかが、ポイントになったわけです。これらの課税売上高か給与等支払額のどちらかが1,000万円以下であれば、設立後2事業年度は免税事業者となり、両方とも1,000万円を超える場合には、2期目は課税事業者となってしまう。
新たに設立された会社の場合は、このようなイメージになります。
ちなみに、給与等支払額には役員報酬や賞与、退職金などの支払いも含めることに注意してくださいね。
ただし、この制度には特例があって、それが「特定期間が短期事業年度の場合」に適用されるんです。
短期事業年度っていうのは、通常1年の事業年度が7カ月以下の事業年度のことを言うんですが、ちょっと具体的に見ていきましょう。
前事業年度が短期事業年度(7か月以下)に該当した場合、次の表のように取り扱われることになります。
ちょっと分かりにくいかもしれませんので、特定期間の例を挙げてみましょう。
例1 前事業年度が7か月超の場合
特定期間…前事業年度開始の日から6ヶ月間(原則)
例2 1期目が短期事業年度(7か月以下)の場合
2期目は特定期間なし
例3 2期目以降で、前期が短期事業年度(7か月以下)の場合
特定期間…前々事業年度開始の日から6ヶ月間
まだまだ分かりにくいですね(笑)。でも、これらの取扱いを駆使することで消費税の負担を回避することができるので、もう少し掘り下げます。
設立後の売上げ・給与の状況で対策を変えよ
① 「設立直後に売上げ・給与が伸びた場合」の対策
まず設立してすぐの1期目の事業年度開始の日から6か月間で、課税売上高が1,000万円を超えそうだという場合
できるならば、この6か月間の給与等支払額が1,000万円以下にできるかを検討しましょう。
この給与等支払額には、先ほど申し上げたとおり、給与はもちろん賞与や退職金も含まれることに注意が必要です。
ただし、未払いのものは含まれません。6か月間の給与が1,000万円を少し超えそうなら、設立から5~6か月目の給与を未払いにするという手も考えましょう。この手が無理そうな場合は次の手
1期目の課税売上高と支払給与ともに半年で1,000万円を超えそうな場合
この場合は、「短期事業年度」を利用することで消費税の節税が可能となります。
具体的には、1期目の事業年度を7ヶ月以下にすることで、2期目から消費税の課税事業者となることを回避できるのです。
先ほどお示ししたとおり、1期目が7ヶ月以下であれば2期目は特定期間がないこととなり、さらに基準期間もないため、確実に消費税の免税事業者に該当することとなります。
事業年度の変更は、異動届出書を税務署に提出するだけで、変更できます。以下のように「異動事項等」欄に「決算期」と記載し、その右欄に異動前後の決算期を記載するだけです。
定款は変更する必要がありますが、登記事項ではないため法務局への提出は不要です。株主総会の議事録のみ残しておきましょう。
なお、1期目は3期目の基準期間となりますが、基準期間の判定では課税売上高を1年換算して判定します。
したがって3期目からは課税事業者となる点に留意してください。
② 「設立2期目に売上げ・給与が伸びた場合」の対策
2期目の前半6ヶ月間の課税売上高と給与等支払額が1,000万円を超えてしまった場合、3期目から課税事業者となってしまいます。
この場合も先ほどと同様に、2期目の事業年度を7ヶ月以下にすることで、3期目から消費税がかかることを回避することができます。
ただしこの場合は、1期目の基準期間の判定で課税売上高が1,000万円を超えないことが前提です。
1期目の課税売上高が1,000万円を超えてしまうと、特定期間云々以前に、基準期間の判定で課税事業者となることが確定してしまいます。
③ 設立3期目以降は基準期間・特定期間の両方で判定
設立3期目以降は、次の手順で納税義務を判定します。
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、その事業年度は消費税がかかり、消費税の納税義務を回避することはできません。
設立3期目の基準期間(設立初年度ですね)の課税売上高が1,000万円以下の場合には、設立3期目を短期事業年度(7か月以下)を利用する方法が有効です。
設立3期目の事業年度の前半6ヶ月間の課税売上高かあるいは、給与等支払額が1,000万円を超えそうな場合には、やはり決算期を変更して短期事業年度にすることで、設立4期目の納税義務を回避することができます。
消費税の税率が10%になった現在、その負担はとても大きいですよね。短期事業年度の特例、特定期間の給与削減などあらゆる手を尽くして、無駄なく節税しましょう。
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