テレワーク費用が自腹!所得税は安くならないの?

テレワーク時のパソコンとコーヒー

Q  コロナ禍でテレワークをしていますが、自宅のWi-Fi費用やヘッドセットなど会社が負担してくれません。サラリーマンはこうした費用は経費として認められないのですか?

A サラリーマンにも「特定支出控除」という経費が認められており、これに該当すれば、確定申告をすることで所得税の還付を受けられます。しかし、テレワーク費用の多くがこの特定支出控除に該当していないため、それだけの経費で還付を受けるのは難しそうです。あなたの勤める会社が何でも自腹という社風であるなら、税金を返してもらえる可能性はあります。

コロナ禍の影響でテレワークを7割以上にせよ!との政府からの号令が効いているのか、テレワークをする会社が増えてきましたね。
しかし、これまで出勤して会社で仕事をするスタイルを何十年もやってきたわけですから、多くの会社では勤怠管理や費用負担などで、まだテレワークの体制が整っていません。
そのため、本来会社が負担すべきテレワークにかかる費用を社員が負担している例も少なくありません。
それでいて通勤手当は減らされたりしては、社員としてはたまったものではありません。
何か対応方法はないのでしょうか?

サラリーマンは年末調整で完結?

サラリーマンは、月々源泉所得税を給与から天引きされ、年末には生命保険料控除証明書を会社に提出するなどして、年末調整をすることで所得税の清算は終わっています。
まずは、給与にかかる所得税がどのようにかかっているか、解説していきましょう。
所得税計算のイメージ

ご覧のとおり、給与にかかる所得税は給与収入にかかっているわけではないんです。
「給与所得控除」という言わば、サラリーマンの経費を差し引いた後の給与所得からさらに各種控除をに引いた後の課税所得に所得税がかかっているんです。
サラリーマンには経費が認められていないと思っていらっしゃる方が多いですけど、実は稼ぐ額によって予め決められた額ではありますが、経費を認められているんです。
「給与所得控除」の金額は源泉徴収票を見れば、すぐにわかります。
源泉徴収票サンプル

①が年収(額面)で②が給与所得、つまり①-②が給与所得控除額です。
真田さんの場合、5,350,000-3,838,400=1,511,600円が給与所得控除額になります。

源泉徴収票を見なくても、給与明細の月々の支給額1年分合計が分かっていれば、次の計算表から算出することができます。
給与所得控除額計算表
660万円以下の場合の正確な給与所得控除額は所得税法別表第五を参照。
真田さんの例で言えば、
535万円の年収ですから、360万円超660万円以下の欄。
5,350,000×20%+440,000=1,510,000円
別表第五でさらに正確な給与所得控除を求めると、先ほどの1,511,600円と一致しましたね。

サラリーマンの経費「特定支出控除」

の「給与所得控除」を理解していただいた上で、この「給与所得控除」の半額以上の経費がかかっていたら、確定申告することで、所得税を返してあげるというシステムがあるんです。
それが「特定支出控除」というシステム。
平成24年分確定申告までは「給与所得控除の半額以上の経費」ではなく、「総額以上の経費」でしたからハードルが高すぎたのですが、平成25年分確定申告から要件が緩和されたので、少しだけ使いやすくなりました。
今回のコロナ禍でのテレワーク移行により、テレワーク費用などが自腹というサラリーマンが増えることは間違いありませんから、経費が結構かかっていますよね。
使える人は使いましょう。

では、この「特定支出控除」というサラリーマンに認められている経費にはどのようなものがあるか見ていきましょう。

特定支出控除とは

サラリーマンの経費「特定支出控除」にはどのうようなものがあるのか?

1 通勤費

通勤費を自ら支払っている場合や、会社から支給される交通費を超えている場合の費用。
でも、正社員の場合は会社から交通費が支給されることがほとんどですから、派遣社員やパートの方で交通費を自己負担している人や遠方から新幹線などで勤務先に通っている人が利用するというケースが多いでしょう。

2 引越し費用

転勤の際に、引っ越しにかかわる費用で個人が支払った分は特定支出になります。しかし、これも会社から支給される場合がほとんどですから、これも1同様使う機会は少ないでしょうね。

3 単身赴任者の帰宅にかかる費用

単身赴任をしている人が、本来の自宅に帰る時の費用ですね。
しかし、これも普通は会社が負担する場合が多いでしょうから、申請する機会は少ないかもしれません。
なお、利用する場合は1ヶ月に4往復までという基準があります。

4 研修にかかる費用

業務を行う上で習得すべき技術を学ぶために受けた研修費用。
会社が負担してくれる場合はほとんどだとは思いますが、自腹で研修を受けた場合は申請できます。

5 資格取得のためにかかる費用

やっと少し使えそうなのがでてきましたね(笑)。
仕事に必要な資格を取得するための費用。
営業マンが車運転しなきゃいけないから取った「自動車免許取得費用」、海外取引がある会社などで必要に迫られて取った「英語講義受講費用や英語検定費用」、経理担当でスキル向上のために取った「簿記講義受講費用や簿記検定費用」など定番の資格の他、医師、弁護士、公認会計士等の資格取得も特定支出控除の対象です。
また、MBA取得のために大学院へ通った学費なども当てはまります。
これらは、会社から補助金が出る場合もありますが、自費で負担した場合は申請できます。

6A  業務に関する図書の購入費用

これ以降の項目は使えるものが多いですから、頭に入れておいてください。
職務関連の本、雑誌、新聞、DVDなどを購入している方は多いでしょうから、これは1年間で購入した履歴を見直してください。
テレワークしている私服サラリーマン

6B  業務に関する衣類の購入費用

仕事用のスーツの他、事務服や制服などの購入費用も特定支出になります。
あまり高額なブランドスーツなどは問題視されるでしょうが、それ以外であれば大丈夫。
アパレル店に勤務していて、仕事上ブランド広告も兼ねて着る必要のある自社ブランドの洋服を購入した費用も該当します。

6C 業務に関する交際費

交際費は会社が負担することが一般的ですが、取引先の接待費用やお中元、お歳暮費用なども特定支出となります。
なお、6A~6Cの項目は、上限が65万円までとなっています。

この6項目のどこかに当てはまらないと、特定支出控除にはならないんですね。
ご質問のテレワークのためにWi-Fi回線を使ったという場合も、この6項目に通信費は入っていません。
また、仕事上必要なパソコンやプリンタ、ヘッドセット、テレワーク用に買ったデスクやチェアを新たに購入した場合も、こうした備品費用が6項目の中にありません。
同じく自宅にいるために余計にかかった電気代やガス代も、6項目の中に入っていません。
根拠:国税庁「給与所得者の特定支出控除について」
全く使えない制度ですよね(怒)。

ハードル高くて使いづらい

ここまで見てきて、多くの方が「使えねぇなぁ。経費にしてほしい経費が対象じゃないし、そもそも対象となっている経費は、ほとんど会社持ちだわ!」と思われる方が大半ではないでしょうか。
では、自腹で払った経費がどれくらいになれば、税金を返してもらえるか?
先ほど申し上げたとおり、給与所得控除額の半分ってどれくらいでしょう?
ご自身で源泉徴収票を確認して計算されても構いませんし、次の表で大まかな金額が分かるはずです。
給与所得控除簡易算出表
えば、500万円プレーヤーなら、年間77万円以上自腹切っていれば、税金が戻ってくる。
これ、結構な金額ですよね。
そして、次のハードル。
これらの費用を会社が認めてくれて、証明書を出してくれないとダメなんです。
特定支出に関する証明書

これは図書費用の特定支出に関する証明書。
画像にリンクを貼っていますので、特定支出に関する明細書を会社に提出し、証明書を会社からもらうことができれば、これを確定申告書に添付します。

高いハードルを越えていくら税金が返ってくるか?

さぁ、高いハードルを越えたとして、確定申告をして、所得税をいくら返してもらえるか?
真田さんの場合、年収535万円ですから、自腹で払った経費が約78万円を超えないといけない。
先ほどの「給与所得控除額(の半分)簡易算出表」ですね。
年収600万円なら82万円、700万円なら90万円、850万円を超える方は97,5万円を自腹で払っていれば良い。
仮に年収535万円の真田さんが、100万円の自腹を切っていたら、いくら戻ってくるか?
ここで、サラリーマンの年収ごとのざっくり税率表を示しておきます。
年収ごとのざっくり税率表

(自腹100万円ー給与所得控除額の半分78万円)×税率10%=22,000円
所得税は22,000円還付されることになります。
住民税は基本的に一律10%ですから同じく22,000円の還付。
合計で44,000円が還付されることになります。

仮に700万円プレーヤーが同じように100万円自腹を切っていたら
(自腹100万円ー給与所得控除額の半分90万円)×税率20%=20,000円
所得税は20,000円還付されることになります。
住民税は基本的に一律10%ですから10,000円の還付。
合計で30,000円が還付されることになります。

いかがでしょう?
これだけ領収書を揃え、会社に証明書を出してもらって、確定申告を作った割には…という感じですかね。

まとめ

ハードルが高いがゆえに、この控除の利用者は最新データで1,704人!(平成30年分)
日本のサラリーマンが約5,500万人ですから、めちゃくちゃ利用率が低いです。
現状では、この制度を使えているのは、会社に新幹線通勤していて自腹部分が多いサラリーマンか、税理士資格を取るためにテキスト代や予備校費用がかかった税理士予備軍サラリーマンなどの極少数派。

個人的には、コロナ禍でサラリーマンで自腹を切っている人が多くなっている昨今、テレワークのためのパソコン、ヘッドセット、パソコンデスク、チェアを購入した費用のうち、会社が認めたものは特定支出控除を認め、基準も緩和するよう方針転換すべきと考えますね。明らかに経費ですからね。

まとめ

  • 対象の特定支出が給与所得控除額×1/2より多い場合に適用できる
  • 対象の特定支出は6項目で、業務上必要かつ自腹の場合に限られる
  • 確定申告する必要がある
  • 確定申告時には業務上必要である証明書と領収書の添付が必須である
  • ハードルが高いため、これまでの利用者は少ない

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