少額資産をガンガン買って節税せよ!~決算直前でもできる節税策

決算直前節税対策 少額資産を買え!

Q わが社はもうすぐ決算ですが、30万円以内のパソコンや設備を購入したら節税になると聞きました。
上限はないのでしょうか?30万円の判定は税込みですか?
その他注意すべきことがあれば、教えてください。

A 決算直前でもできる節税策の一つですから、しっかりマスターして節税しましょう。

「もうすぐ決算なんですが、何かいい節税策はありませんか?」
決算の着地点が見えてきて、儲けておられる社長が必ずおっしゃるセリフです。
決算直前でもできる、最も簡単な節税策が「少額減価償却資産の取得」です。
金額や上限、消費税の取扱いなど、気を付けなければいけないことが多いですから、一つずつ説明していきます。

一般的に10万円以上のパソコンや設備などの固定資産を購入したら、一気に経費にできず、減価償却によって毎期少しずつ経費化する、というのは皆さんよくご存じですよね。
「中古車を買えば、短期間で償却できるから得だ。」ってミニ情報をおっしゃる社長も多いですから、減価償却という概念は浸透してきていると思います。
しかし、30万円までの少額資産を使っての節税策の使い方については詳しく知らない方が多いんです。
「30万円くらい買っても節税額は大したことない。」と考えておられるからでしょうか。

それ、大きな誤解ですよ。
大量に買えば、かなりの節税です。

まず、減価償却の例外で短期間で償却できる方法があるんですね。
一括償却資産と少額償却資産の2種類。
順番に説明していきます。

一括償却資産

一括償却資産とは、10万円以上20万円未満の固定資産のことをいいます。
建物・機械装置などの種類や内容に関わらず、また新品・中古も問いません。
事業年度のどの月に買おうが、まとめて一律3年で減価償却できます。
「どの月に買おうが」がポイントです。
一括償却資産のイメージ

例えば、3月決算で、3月31日に18万円のパソコンを10台買ったとしましょう。
18万円×10台×12/36=60万円
を経費にすることができます。

普通の減価償却資産(耐用年数5年)なら、
180万円×1/60=3万円
しか経費になりません。
まぁ、これでも1日しか使ってなくても1ヶ月扱いしてくれてますから、得ですが。

減価償却のように月数按分しなくていいところが、お得なんですね。
なんでこんなことが認められているのかと言うと、細かい資産を一つずつ月数按分していたら面倒で仕方ないから、そういうのは一括して償却していいよ、と特例的に認められているのです。
一括償却資産のメリット・デメリット

隠れたデメリットとしては、あまり無いことかもしれませんが、一括償却資産を3年以内に廃棄したり、売ったりした場合
廃棄して出た損失を一発で経費にすることはできません。
3年での償却は継続し続けなければいけません。

例えばエアコンを5台購入したけれど、事業縮小のため3台を廃棄したとしましょう。
その場合でもエアコン5台分の償却残高が無くなるまで償却を続ける必要があり、除却した3台分のエアコンを当期の損金として算入することはできません。

帳簿上は「一括償却資産」という勘定科目で記帳を行い、貸借対照表では「器具及び備品」のように通常の資産呼称で表示してください。

少額減価償却資産

次に、少額減価償却資産。

少額減価償却資産とは、取得価格が10万円以上30万円未満の固定資産を言います。
器具・備品、機械のほか、ソフトウェアや特許権のような形のないものでもOKで、新品でも中古品でもOK。

全額が一発で経費にできる!

ただ、色々条件があります。

中小企業(資本金の額が1億円以下、令和2年4月以降に取得する場合は従業員数500人以下などの法人)しか使えません
②使える期間は令和6年3月31日までの間に取得して事業に使った場合。
③金額の上限は、取得価格の合計額が300万円(事業年度が数か月の場合は25万円×月数)まで。

少額減価償却資産のメリット・デメリット

メリットについては、もうこれに尽きます。
なお、この少額減価償却資産制度を使うためには、少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))を添付して申告することが必要です。

一括償却資産・少額減価償却資産を整理すると、次のようになります。

一括償却資産と少額減価償却資産の違い

ちなみに、償却資産税とは、固定資産税の一種で、市区町村に納めるもの。
課税標準額が150万円未満であれば課税の対象となりません。
1月1日時点の資産について、1月31日に申告します。
税額は価格(課税標準額)×1.4%

これらの条件を頭に入れた上でどう使うか、解説していきます。

価格とは税込みか税抜きか

30万円未満とか10万円以上とか、これって税込みで判断するのか、税抜きで判断するのか、どちらでしょう?

これはあなたの会社が税抜経理方式を採用していれば「税抜価格」で、税込み経理方式を採用していれば「税込価格」で判断します。
会計ソフトを使っていれば、どちらを採用しようが、勝手に計算してくれますから、こういうことからも税抜経理を採用しておいた方がお得ですよね。
現在、税込経理方式を採用している会社も、税務署への届け出など不要で、すぐに税抜経理方式に変更できます。

次に具体的に金額に応じてどうすれば得になるか、中小企業の場合について、見ていきましょう。
分かりやすくパソコンを買った場合を例にとって解説していきます。

金額によって対応を変えよ

パソコンセットが9万円の場合

悩む必要なし。文句なしに一発で経費にできます。

パソコンセットが15万円の場合

10万円以上20万円未満の領域ですから、中小企業なら少額減価償却資産、一括償却資産のどちらも使えます。

少額減価償却資産は償却資産税が課税されるので、敢えて一括償却資産にする税理士もいますが、頭が固すぎると思いますね。
真面目に償却資産税を申告するという建前(笑)で300万円フルに使って資産を買ったとしても、支払う償却資産税は42,000円ということを考えると、全額を一発に経費化できる少額減価償却資産を使う方が節税効果は高いと思います。

パソコンセットが25万円の場合

20万円以上30万円未満の領域ですから、中小企業なら選ぶ余地なく少額減価償却資産を使い、買えるなら300万円まで買っちゃいましょう。
ちなみに、300万円を超えて買ってはいけないわけではなく、超えてしまったら、その超えた資産は普通に減価償却資産として耐用年数に応じて償却していってください。

パソコンセットが31万円の場合

普通に考えると、30万円以上の価格ですから、一発で償却はできません。
しかし、31万円をこんな形に分けたらどうでしょう。
パソコン本体 24万円
モニター    4万円
ソフト     3万円

さすがにノートパソコンを分けたらやり過ぎですが、デスクトップならアリです。
こうすれば、パソコン本体は少額減価償却資産、付属品は10万円未満の減価償却資産となり、どちらも一発で償却できますよね。

法人税の通達には資産を「通常一単位として取引される単位ごとに判定」しろと書いてあります。
どういうことかと言いますと、応接セット(応接机と椅子)の例がよく挙げられますが、「椅子だけ使わないでしょ?そういうのは机と椅子をセットで判断しなさい」ってことなんです。
しかし、パソコンについてはキーボード、マウス、ソフト、HDDとかをバラバラで買う人が多くなっていますし、どんどん中身を交換する人も多いです。
実際問題としては、税務調査の際にきちんと説明できるかどうかなので、無理やり分けたという印象を与えない程度に分ければあまり細かく言われることはないでしょう。
web会議
コロナ禍でweb会議やテレワークが常識になりつつある現在、webカメラやリングライト、ヘッドセットなどのグッズも一式で買ってはダメ。
ガツガツ分けましょう。

このテクニックは、何も少額の資産に限らずに使えるテクニックです。

見積書・請求書を発行してもらう時はガツガツ分けてもらえ

例えば、建物の修繕工事をして500万円かかったとしましょう。
すべて資産計上しなければならなかったとして、「建物修理一式」で請求されたら、鉄筋なら50年、金属造りなら38年もかけてジワジワ経費化しなければいけない。
けれど、その中に照明器具や電気配線が含まれていれば、建物付属設備として15年で経費化できます。

このように見積書や請求書を細かく分ければ、耐用年数が短いものを抽出することができ、早く経費化することができます。

建物や工場を建てる時に設計料があれば、普通に建物に含めてしまってはもったいない。
設計って建物だけを設計したわけではないですよね。内装や配線なんかも設計しているはずです。
そこで、設計料を建物部分と建物付属設備に分けて資産に計上する。
そうすれば、建物付属設備の部分は15年という短期間で経費化できますよね。

ガツガツ分けろ!です。

こういうことを面倒がらずにやること、これが節税の肝です。
税理士や経理担当の腕の見せ所と言えるでしょう。


問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

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