旅行して節税せよ~年200万円の現金を作ったノウハウ~

新幹線はやぶさ

Q 現在、弊社では出張の際に実費精算をしています。友人に聞いた話では「出張旅費規程を作れば、楽だし節税できる。」とのこと。どのように規程を作ればいいのか、領収書はどうすればいいのか、など分からないことだらけなので、教えてもらえますか。

A 最も簡単かつメリットの大きい節税方法ですので、以下に記載している、守るべき細かいルールを守って実践してください。また、旅行にまつわるその他の節税方法についても説明します。

旅費や宿泊費について、真面目に実費精算している会社は実に多いですね。

出張すると、途中で缶ジュースを買ったり、宿泊時には歯ブラシや携帯シャンプー、着替えなどを準備したり、意外と出費がかさみます。
しかし、このような費用は経費として落とせないので、出張すればするほど損することになります。このような事情から、会社で「出張旅費規程」を定めておけば、定額の費用を出張者に支給することが税法上認められているのです。

例えば、「社長は宿泊費を20,000円支給する。」「一泊以上の宿泊の場合は日当として5,000円支給する。」といったことを規程で定めておくとします。
一泊二日の出張で実際にホテル代は14,000円かかったけれども、旅費規程に従えば、「宿泊費20,000円+日当2日分10,000円=30,000円」を会社からもらえることになります。16,000円も多く経費にできて、源泉所得税も課税されないお金が社長個人の手に入ることになります。

では、具体的に規程を作る際の注意点をお教えします。

1 宿泊費と日当を移動距離によって決める

 まず、決めるべきは、宿泊費と日当。日当の支給については、移動距離によって支給額を決めるといいですね。

出張旅費規程(宿泊費と日当)目安表

一般的には、このような表になるでしょうか。
もちろん、この金額以上にしてもかまいませんが、注意点として
・あまりに高額にしすぎないこと
・あまりに役員・従業員間で差をつけすぎないこと

税法によく書いてある「社会通念上、相当と認められる」金額にしないと、「これは形を変えた給与ですよね。」と源泉所得税を課税される恐れがあります。

2 交通費を移動手段ごとに決める

次に、交通費を決めます。
どのような移動手段であっても、出張したのであれば宿泊費や日当を定額支給することができます。ただ、このときは移動手段ごとに具体的に決めておく必要があります。

出張旅費規程(交通費)

このように定めることにより、社長や役員は「新幹線のグリーン車や飛行機のビジネスクラスに乗ったとしても、そのお金を定額で支給することができる」と規定することができます。
なお、このときの交通費は正規料金を支給することができます。例えば、「大阪-博多」の正規料金をJALの公式サイトで確認すると、往復46,140円です。

実際には早割などを使い19,740円で航空券を取得したとしても、46,140円を支給できます。
出張旅費規程には経費の簡素化という目的があるため、「定額支給の参考にした資料」をプリントして残しておけば税務調査の際にも問題ありません。

ただ、いくら代表取締役や役員でビジネスクラスの利用ができるとはいっても、「エコノミークラスに乗ってビジネスクラスの料金を請求する」などはできません。

例えば、社長が飛行機を使うときにエコノミークラスを利用して、往復15万円で「大阪-広州」の航空券を取得したとします。
ビジネスクラスを利用すると往復で33万円ほどします。

それでは、「大阪-広州」でエコノミークラスを利用して出張したとき、ビジネスクラスの航空券代33万円を支給してもいいのかというと、これはできません。

実際にビジネスクラスを利用して33万円の航空券代を支払ったのであれば問題ありません。
しかし、国際線のビジネスクラスは高額になりすぎるため、ビジネスクラスに乗っていないのにビジネスクラスのお金を定額支給することはできないのです。
出張するビジネスマン

したがって、実際にはエコノミークラスに乗っているにも関わらず、ビジネスクラス分の飛行機代を計上して税務調査でバレた場合、確実に差額は給与として源泉所得税の課税をされます。
その一方で「新幹線の指定席に乗ったが、グリーン車の値段を交通費として計上した」などのように、数千円くらいの差しかない場合は問題ありません。

規程の話はこれくらいにして、実際の経理処理について触れておきます。

3 領収書は残しておく

規程さえあれば、領収書は要らないと考えるのは間違いです。そんなことが可能ならいくらでもカラ出張を付け込めることになりますので、架空旅費として税務調査では否認されます。
「出張旅費精算書」のようなものを作成し、裏に貼付しておくのがいいでしょう。
出張旅費精算書 サンプル
(MoneyForwward様 「出張旅費精算書テンプレート」にリンクしています)

4 法人支払いではなく、個人支払いに

交通費・宿泊費を定額支給できるのは、あくまでも「個人が交通費や宿泊費を支払って、後で出張旅費規程に従って、これらを定額支給する」という順番だからです。
会社が払ってしまうと、実費支給するのが面倒であるという大前提が崩れ、実費しか経費として認められなくなります。

実際に「出張旅費規程」のサンプルとしては、このようなページがありますので、参考にしてみてください。
距離や金額を会社の実情にあわせて決めるのがいいでしょう。
出張旅費規程1P
(出張旅費規程サンプルページにリンクしています)

プライベートな旅行も経費にできる

上場企業の中には、保養施設を持っていて、そこに格安で泊まれる会社も多いですよね。
公務員もKKRなんていう保養施設があり、そうした恩恵を受けられます。
一方、中小企業は保養施設なんて持っていない会社が多いですから、不公平感がありますよね。

そこで、中小企業の社長や社員も会社の経費で旅行に行けるノウハウを最後にお伝えします。
「プライベートな旅行も経費に」と大っぴらに言うと、税務署に怒られますが、会社としての経費性があれば大丈夫だということを覚えておいてほしい、ということです。

サンセバスチャンのバル

「視察旅行」や「研修旅行」にする

プライベートな旅行が、会社の福利厚生費になっていたら、調査官はすかさず「個人的な経費を、会社の経費にしてはいけません。」と指摘してくるでしょう。
しかし、これが「視察旅行」や「研修旅行」なら、どうでしょう。
たとえば、バルの経営者がデンマークのビール工場に視察に行き、仕入れるクラフトビール銘柄を選定した。
パン屋の社員が、フランスに行き、フランスパンのパン工房に短期体験をさせてもらった。
これらは、会社として明らかに経費性がありますよね。将来の売上げに結び付く可能性が高い。
では、税務調査で「研修旅行に行きました。」と言えばいいんですね?
いやいや、調査官はそんなにバカではありません。
「どのような研修ですか?」「研修日程を見せてください。全日程研修を受けたのですか?」「研修講師は誰ですか?」「研修レポートは作ってますか?」と畳みかけられ、答えに窮することになるでしょう。
したがって、研修旅行と言いたいのなら、
団体旅行ならその主催者、目的、日程、領収書を提示し、研修資料、研修している風景の写真、研修レポートなどをきちんと残しておくことが大事です。
エビデンスを残すということですね。
そのうえで、旅行日程の中の研修や視察部分を明らかにしておきます。6日間の旅程の研修が1日、視察が2日、計3日が仕事という具合に。
この全旅行日程のうち仕事の日の割合を「業務従事割合」と言います。
この割合によって、以下の表のように経費にしていい割合が変わってきます。
旅行の損金算入割合
出典:国税庁通達「海外渡航費の取扱いについて」
ヨーロッパに6日旅行に行き、そのうち3日(研修1日、視察2日)が仕事でした。
往復航空券が20万円
ホテル代その他の費用30万円の場合
往復の交通費20万円+その他の費用30万円×50%(3日/6日)=35万円が経費にできます。
視察を行ったというエビデンスを残すのに、少し手間はかかりますが、旅行がこれだけ経費になれば、大きな節税になります。

プライベート旅行を会社が補助する制度を作る

先ほど、大企業従業員や公務員が保養施設を格安で利用できる恩恵を受けられると申し上げました。
これの中小企業版です。中小企業はダメってことはないんです。
「従業員が旅行した場合、年に3回まで1泊につき、家族を含め一人5,000円を補助する」といった規程を作るんです。
もちろん、社長だけの特権ですといったものはダメですよ。
一律に社長も社員も使える規程ならOKです。
ただし、このルールには一つだけ注意点があります。
旅行補助金を社員に直接手渡したらダメなんです。
会社がホテルに直接申し込み、代金を支払い、補助金を差し引いた金額を後から従業員に請求するという形にすること
社員に補助金を直接渡した場合、それは給与と認定されて源泉所得税を課税されることになります。

いかがでしたか?
旅行というもの一つとっても、これだけ節税できる切り口があるということがお分かりいただけましたか?
節税したいと考えるなら、こうした規程作り、その規程に則った運用やエビデンスを残す手間を惜しんではいけないのです。

なお、普通に社員みんなで社員旅行をしたい場合の注意点が知りたい方は「社員旅行で給与(源泉)課税を受けないノウハウ」をご覧ください。

 

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所

国税OB税理士による税務調査対策グループ

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