非常勤役員を節税に使え!非常勤役員の報酬相場は?

Q このたび、会社を設立することにしました。妻を非常勤役員にすると、節税できると聞きましたが、従業員ではダメなんでしょうか。
  また、注意点などありましたら、教えてください。
A 奥様やご親族を非常勤役員にすることで、節税になります。その理由や注意点をお伝えします。

従業員がたくさんいて、会社経営をしっかりやっていかなければならない会社には、この節税策はお勧めしません。
しかし、例えばほぼ社長一人で切り盛りするような小規模な会社には、この非常勤役員を使った節税策は使えます。

まず、そもそも非常勤役員って、どういう立ち位置?っていうといころから話を始めましょう。

非常勤役員の定義って?

非常勤というからには、毎日出勤していないわけですよ。そんな役員のことです。
え?そんなざっくりした定義?
そうなんです。法律的には何の定義もありません。
会社の役員は登記簿謄本に記載されますが、登記上は常勤も非常勤も区分されていません

また、税務署への申告書上も「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」に「常勤・非常勤の別」という欄は設けられてはいますが、特に重要な項目でもありません。
役員報酬手当等及び人件費の内訳書 見本
つまり、対外的に常勤・非常勤を区分することを表すものは、実質的にないということなんですね。

一般的に、「非常勤役員」というと「会社を発展させるために大所高所から専門的なアドバイスをしてくれるために月に数度会社に来てもらう」というイメージがあるでしょう。
今回テーマとして取り上げるのはそうではなく、税金対策のために社長のご親族を使いましょうよということですので、このご親族が専門的な知識等がなくても構いません。
では、節税対策って、どういうカラクリで節税できるのか、話を進めていきます。

節税対策の中身とは?

このご親族、ご質問の方のように、奥様だとしましょう。
社長であるあなたの報酬が月50万円だとして、誰も他に役員も従業員もいなければ、年間600万円の役員報酬が経費になります。
仮に、奥様に月々8万円報酬を支払ったとしたら、加えて年間96万円が経費になります。
まずはこの96万円に対する法人税が節税になりますよね。

次に、所得税
あなただけに年間約700万円の役員報酬を支払ったとしたら、(奥様を配偶者控除)所得税33万円、住民税39万円の合計72万円の負担になります。
これが、あなたに年間600万円、奥様に年間100万円の役員報酬を支払ったとしたら、所得税20万円、住民税30万円の合計50万円の負担。
所得税が22万円が節税になります。
奥様は年間100万円の給与収入ですから、奥様ご自身の所得税はかかりませんし、夫である社長は奥様の配偶者控除もできます。
社長の年間報酬がもっと高額なら、さらに節税額は大きくなるでしょうね。

また、数年後、奥様が退職する際には退職金が支払えます。
あまりに高額な退職金は税法上認められていませんが、在職年数や報酬額によって定められた範囲の退職金は支払えます。
この退職金に対する所得税率は通常の給与より低く、法人税も退職金分を圧縮できます。
この退職金の優遇税制は今後狭められていくと予想されていますが、それでも通常の給与よりも低い税率となることは今後も間違いないでしょう。
紙幣の前に佇む経営者

では、このご親族、どうして役員ではなく、従業員ではダメなんでしょう。
そして、非常勤役員とは、どういう要件を満たしていなければならないのでしょう。

なぜ従業員ではダメか

奥様が毎日でも会社に来て、経理やその他の雑務を実際するというなら、従業員で全く問題ありません。
でも、奥様を節税対策に使おうとする場合、奥様が毎日会社に来て仕事をするわけじゃないですよね。
出勤簿とかもわざわざ作成する人は少ないでしょう。
従業員って、当然ですけど、労務の対価として給料を支払うわけです。
実際に奥様に経理や文書作成等をしてもらったから支払う。

税務調査の際に、この「実際に働いた痕跡」がなければ、これは架空人件費として否認されてしまうんです。
実際、私が調査官時代によくこうした事案に出くわしました。

お母様を従業員ということにして、給与を支払って経費化している社長。
会社で実際に出勤している従業員にそれとなく聞いてみる。
調査官「〇〇さん(お母様)って出勤されてます?」
従業員「いや、私は一度も見たことないです。」
調査官「社長、お母様に給与支払ってますけど、他の従業員の方はお母様を見たことないっておっしゃってますよ」
社 長「い、いや、日曜日に事務所の清掃してもらってます汗」
そんな苦しい言い訳が通用するはずもなく、場合によっては調査官がお母様に実際に聞きに行って、ウソがばれます。

これが非常勤役員だと、どうか。
役員の場合は実際に働いていなくていい。
何に対して報酬を払っているかというと、経営に参画していることに対して報酬を支払っている。

したがって、上記のような懸念はないわけです。
実際に年に数回の取締役会に参加した履歴(議事録ほか)と報酬を支払った事績(振込履歴等)があれば、税務署に否認されることはありません。

肝は社会保険料がかからないということ

さて、税金対策に有効ということはお分かりいただけたと思います。
でも、税金よりもさらに重要な観点を忘れてはいけません。
社会保険料です。
最近の社会保険料の高さは異常ですよね。

本来、すべての法人は資本金の額や規模に関係なく一人でも従業員がいれば社会保険への加入義務がありますが、非常勤役員の場合には社会保険への加入義務がありません
加入義務が免除されているだけで、あくまでも非常勤役員の勤務実態次第では加入しなくてもよい、という位置づけです。

勤務実態次第ってどういうことか。
日本年金機構の疑義照会では、使用関係に関する具体的な判断材料が以下の通り示されています。

1.当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか。
2.当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか。
3.当該法人の役員会等に出席しているかどうか。
4.当該法人の役員への連絡調整または職員に対する指揮監督に従事しているかどうか。
5.当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか。
6.当該法人等より支払を受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実務弁償程度の水準にとどまっていないかどうか。
(日本年金機構疑義照会:受付番号No2010-77)

これらを総合勘案して、「いいえ」が多ければ、社会保険料を支払わなくていい。

先日、会社を設立したばかりの私のクライアントの会社社長が和歌〇〇年金事務所に社会保険加入の手続きに行ったんですね。
奥様は非常勤役員で月5万円の報酬を支払う。
そして、社長の扶養に入れる。その手続き。

年金事務所の担当者は「非常勤役員でも社会保険加入の義務がある」と言って譲らない。
社長は私に電話を代わり、私が担当者と電話で話したんですが、担当者は「労務の対価であれば、社会保険に加入してもらいます」と言って、上記6要件の総合勘案を説明しても、聞く耳持たずでした。
そこで、「じゃあ、どういう場合なら、社会保険料がかからないんですか?」と聞いたら
「奥様に支払う報酬が通信費など実費弁償的なものなら、かかりません。」と返答されたので、「じゃあ、今回のもそうです」と言って加入を免れました。
いやぁ、役員報酬が実費弁償的なものだけってことになると、税法上は経営に参加しているということに対する対価だから報酬を支払っているという大前提が崩れ、下手すると否認されるわけですから、すごい矛盾ですよ笑

社会保険料徴収について、相当締め付けを厳しくしている印象でしたね。
この場合、初めから奥様を扶養にして、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を郵送するのが正解でしょう。
決算書上の人

非常勤役員の報酬相場は?

奥様を扶養にしたいということであれば、もう月額8万円(年間96万円)で決定です笑
奥様を扶養にしなくても良いという場合はどうでしょう。

税法上は役員報酬の適正金額の数値基準(一般的な従業員の何倍まで等)はありません。
非常勤役員への報酬金額を争った過去の裁判の判例から、月5万円~15万円ほどの役員報酬であれば損金算入を否認されるリスクの低い、安全な報酬金額であるとよく言われます。
(平9.9.29裁決、裁決事例集No.54 306頁)
(平17.12.19裁決、裁決事例集No.70 215頁)

取締役会の出席以外、何もしていないといった場合は、それくらいの金額がリスクが低いと言えるでしょうね。

ただ、経理帳簿の整理や社長の送り迎えなど、実質的な業務に関わっている場合はどうでしょう。
昭和54年に最高裁判決で役員報酬が損金算入できる範囲を超えるほど高額だったとして税務署の否認を認める判決を下した例があります。
その判決内容によると、社長は非常勤役員である長女に役員報酬を年額93万円を支払っていたが、このうち60万円は認め、33万円を否認しました。
この長女は実際に経理帳簿の整理や自動車の運転などの実務もしていたんですね。
ただ、とは言え、他の常勤役員の報酬が年額60万円ということを考えると、それ以上にはならないと判示したわけです。

これは昭和の判決ですから、現在の物価からすると、報酬はもっと高額になります。
ここから見えてくるのは、非常勤役員の勤務状況や他に役員がいる場合にはそのバランスを考えないと、あまりに高額な報酬は否認されるリスクが高まりますよということでしょう。

まとめ

非常勤役員をどのように節税策に使うか、お分かりいただけたでしょうか。
冒頭にも触れましたが、これはあくまでも実質的に社長一人で経営を回しているような小さな会社に使える節税策。
従業員がそこそこいて、今後会社を大きく発展させていこうという会社にはお勧めしません。

実質的に働いてもいない家族に報酬を出したりして節税に躍起になっている社長を見て、従業員が「会社のために頑張ろう!」と思うでしょうか?
そういった会社は、節税策に目を向けるよりも、そうしたガバナンスの効いた経営を重視した方がベターでしょうね。

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所

国税OB税理士による税務調査対策グループ

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