Q 勤務医をしていますが、所得税が高すぎるので、医療機関と委託契約書を交わして、事業所得として確定申告し、そこに経費を計上したいと考えています。事業所得にすることはできますか。
A できません。勤務医として診療や手術という行為に対してもらう報酬という名目では、どこまでいっても給与です。MS法人を作って節税をできる可能性はあります。
お医者さんは高給取りですから、当然所得税が高いですよね。勤務医が外注費扱いにして事業所得にしたいという気持ちはよく分かります。
私が源泉所得税調査の担当をしていた頃、ある麻酔医の調査が話題になっていました。
国税に敗北した麻酔医
その麻酔医は、複数の医療機関から毎週〇曜日に来て、定額〇円報酬をもらうという契約を交わしていました。税務署は、出勤する時間・場所が決まっていて、医療機関の設備を利用し、都合が悪くなったからといって麻酔医の判断で代診を立てることもできない、なんていうのは、まさしく「給与だ」と認定し、医療機関に源泉所得税を課税したわけです。
この麻酔医さんは猛烈に反発して、東京地裁で裁判になります。
麻酔医は、「専門性の高い業務である以上病院側からの指揮命令を受けることはなく、 場所的・時間的拘束がなされるような契約もなく、 独立して麻酔科医業を行っているため、 支払われたお金については事業所得だ!」と主張しましたが、結局負けました。
東京地裁は、実際に各病院での麻酔手術等の実施状況を鑑み、 麻酔科医の行う業務から生ずる費用は各病院側が負担していること、 また麻酔業務を行う対象や場所・時間等について病院側の命令があったこと、 更に病院で派遣医出勤簿に記録されて勤務時間が管理されていたことなど、 実際の扱いに即して判決を下しました。
裏話ですが、麻酔医さんというのは独立した内科や外科みたいなものではないので、どうしても下請け屋のような存在らしく、それが嫌だったようで、「俺がやってることはれっきとした事業なんだよ!」という感情があったとか。
まあ、感情論じゃないですし、実際申告もしていない麻酔医が結構いましたから、税金払いたくないだけだろっ!て気もしますが、まあ、この判決以降、勤務医を外注扱いにするという事例がめっきり減りました。
業務委託契約書を作ってもダメ
仮に業務委託契約を作成して事業所得にしたとしても、「同じ医療機関の他の勤務医は給与扱いなのに、何でこの人だけ事業扱いなんですか?」と税務署に突っ込まれて、加算税を徴収される(「医療機関が」ですけど)ことになり、医療機関に迷惑がかかってしまいます。
なお、MS法人を使った節税については勤務医は会社設立で節税せよのブログをご覧ください。
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