Q クリニックを個人事業として開業しました。まだ患者数も少なく、社会保険は協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入していますが、将来医療法人化するなら、医師国保に入っておけと先輩医師からアドバイスをされました。現在の収入では医師国保の方が協会けんぽより割高ですが、それでも医師国保に加入しておいた方がいいですか。
A 将来的に医療法人化するなら、医師国保への加入も頭に入れておきましょう。医師国保は個人事業時代に加入しておかないと、医療法人化後は途中加入できません。
お医者さんの多くは医師国保を選びます。なぜなら、協会けんぽは収入によって保険料が決まるのに対し、医師国保は収入に関係なく保険料は変わらないからです。医師国保の保険料は扶養人数によって変わる仕組みなのです。
高給取りが多いお医者さんは、いくら稼いでも保険料の変わらない医師国保を選ぶことになるわけです。
個人事業から医療法人化すると、原則として協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入ということになります。しかし、例外として「個人事業時代から医師国保に加入していること」を条件に医師国保を継続することができます。
あなたの医療法人で働くスタッフも医師国保に入ることになる。
もし、これが「個人時代に協会けんぽ」のまま、医療法人化すると、医師国保には加入できないことになります。
そうすると、どういうデメリットがあるか。
医師国保と協会けんぽ
協会けんぽはスタッフ分の保険料の半額を医療法人が負担することになるのです。
スタッフさんは大喜びなので、スタッフファーストのクリニックなら、それもアリですが。
加えて、スタッフさんはドクターほど収入が多くないので、協会けんぽの方が割安な保険料であることも付け加えておかなければなりませんね。
この表のとおり、扶養家族が2人以上いるドクターは協会けんぽの保険料が安くなることもありますが、そうではないドクターはほぼ医師国保の方がお得ですね。
このように、ドクター自身のこと、スタッフのことを考え合わせてどちらかを選択することにしてください。
実態としては、医師国保に加入して、自身の社会保険料を抑えつつ、スタッフの社会保険料については半額を負担しているクリニックが結構あります。
支払ったスタッフの社会保険料の半額は、経費にはなりますが、本来支払う義務はないものなので、給与扱いになり源泉所得税の支払い義務は発生します。
スタッフの不満を抑え、長く働いてもらうための苦肉の策と言えますね。
では、整理しておきますね。
医師国保のメリット・デメリット
メリット
♠報酬が上がっても保険料は一定
♠扶養家族がいない、少ない人は保険料が安い
♠賞与に保険料がかからない
♠スタッフの保険料を負担しなくてよい(クリニック側のメリット)
デメリット
♠自家診療の保険請求はできない
♠扶養家族が多いと、保険料は高い
♠クリニックの先生だけでなく、スタッフと同一世帯の家族も全員国保に加入しなければならない
(協会、共済、組合健保は除外規定あり。市町村国保だけが同一世帯同一国保の原則で拒否されるため、夫(妻)が自営業のスタッフは世帯分離してもらう必要あり)。
♠疾病手当金は入院しか出ない
♠育児休暇中の免除がない
♠入退職時に、協会けんぽ厚生年金のセットと違い、厚生年金適用除外医師国保加入の事務手続きがやや面倒
クリニック開業関係⇒「クリニックの内覧会の祝い金は、抜くな」をご覧ください。
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