コロナ後の税務調査★狙われる先はどこだ!?

コロナ後の税務調査 狙われる先はどこだ

Q コロナ禍で観光業などが大変な中、申し訳ないのですが、弊社の業績はうなぎ上りの状態です。その上、補助金なども入金され、想定以上の所得になりそうです。
最近、税務調査の噂を聞かないのですが、どうなっているのでしょう?
多くの会社が赤字の中、儲かっている弊社は目を付けられるのではないかと考えていますが、どうでしょうか?

A  コロナ禍で令和2、3年度(令和2年7月~令和4年6月)の税務調査はほとんど行われていません。令和4年度以降の税務当局の調査はどうなるか、お伝えしていきます。

コロナ禍で経営状況が悪化する会社や事業者がある一方で、ボロ儲けしているところも見られます。
緊急事態宣言下でも高級旅館の部屋が満室御礼だったことからも、みんながみんな大変な状況ではないことが分かります。

これは業種によって、本業で大きく利益を上げた会社があるということもありますが、本業以外の株式投資や仮想通貨のバブルで儲けた方も多かったようですね。
あるいは、儲けたわけではないけれど、好条件でのコロナ融資により資金がダブついているということもあるでしょう。
いずれにしても、お金があるところにはある。
まずは、ここ1年半ほどの税務調査の現状からお伝えしていきましょう。

コロナ禍で税務調査はどうなった?

令和2年3月くらいまでは、通常通り税務調査が実施されていましたが、令和2年4月に緊急事態宣言が出されると、状況が変わります。
「不要不急の外出を控えましょう。テレワークを促進しましょう。」と国が旗を振っている手前、国家公務員たる税務職員が外出するわけにはいかない。

というわけで、内部事務職員や幹部職員を残して、ほとんどの税務調査部隊が自宅勤務を命じられることになりました。
自宅勤務と言っても、個人情報を自宅に持って帰るわけにはいきませんから、「自宅で税法の勉強しておけ!」とかそんな感じであったようです。
当然、それまで行われていた税務調査は中断。新規の調査着手は当面見合わせるということになります。

ご存知の方もおられるかもしれませんが、税務職員の異動時期は7月。調査官は2年~4年で転勤がありますから、なるべく6月初旬までには税務調査を終わらせなければなりません。

令和2年5月の下旬には宣言が解除されますが、余程の悪質な調査事案を除いて、6月にはほとんどの事案は一旦終結させることになりました。
実際、年の3/4は税務調査ができなかったわけですから、調査件数は大きく下がります。
税務調査件数の推移(コロナ)

この表を見ていただければ分かるように、法人税なら1年前は9.9万件だった件数が7.6万件になっています。
令和2年度(令和2年7月~令和3年6月)はさらに下がっていることは間違いありません。
令和2年の年末からコロナ患者が増加し始め、3年に入ってからはほとんど新規では調査に入れていないというのが現状だからです。
国税組織の中で唯一、調査をしていたのは査察部のみ。
悪いヤツは絶対に逃がさないという強制調査部隊はコロナなんて関係ないのです。

来たるべき時に備え、準備している調査部隊

税務調査部隊が、国税局や税務署に出勤して遊んでいたのかと言うと、そんなわけはありません。
まず、やっていたことは調査に行く先をさらに正確に選ぶ前準備。
これまでも、納税者ごとに「質的区分」という区分を設け、「不正常習法人」「設立以来未接触法人」などと分けていました。
しかし、調査官によって「3年後にはもう一度調査に行った方が良い」と感じるのか「しばらく期間を空けた方が良い」と感じるのか同じ調査先でも、差が出てきます。
そこで、税務署に缶詰になっているこの機会に「精緻化」つまり、「調査に行く先を精緻に見極める作業」をやっていたというわけです。

調査はいつ来るか?

これは、コロナ禍がいつ終息に向かうのか、ともリンクしてきますので、正確なことは言えません。
前段で申し上げたとおり、国税局や税務署の移動時期は7月。
令和3年7月から税務調査がじわじわ始まりました(令和3年9月末まで都道府県によっては緊急事態宣言が発令されており、そのような地域では税務調査をストップしている状況でしたが、10月以降通常の半分くらいの件数で調査がスタートしています)。
令和4年夏、コロナ第7波が猛威を振るっていますが、税務調査の現場ではまず調査予定先に電話連絡をし、コロナの影響を聴取した上で大丈夫であれば調査に着手しています。
ただ、調査予定先がコロナ禍で従業員が足らずに多忙であるとか、社長や経理担当がコロナに罹ったという場合は柔軟に対応(延期)しているようですね。
国税局・税務署の年間予定(税務調査編)
この図は、国税局、税務署の1年間の予定。
いろんなサイトで紹介されていることですが、7月が異動時期である税務職員の人事査定の対象は7月から12月。
この時期に行われる税務調査が最も気合が入っています。
この図では税務調査の欄の赤の濃さがが調査官の気合の度合いと考えてください。
私が調査官時代は、これまで温めてきた(怪しいと思う会社に調査に行かず、しばらくウオッチしてきた)会社の本格的な準備調査を6月から7月に行った上、7月から11月に気合十分で調査に入り、年内には修正申告書を取るというのがルーティンでした。

では、コロナ特需で儲けた会社や事業者に令和3年7月以降にすぐに調査が入るのかというと、さにあらず。

コロナ特需で儲けた会社、仮に3月決算としましょう。
令和2年3月決算期は、まだコロナ禍が始まったばかりですから通常通りの決算だったでしょう。
この会社がコロナ特需で、令和2年後半から売上げが伸び、令和3年3月決算期は絶好調!
税理士からは「社長、今期は令和2年3月期の売上げの倍増です。これは令和3年7月以降に税務調査が入る可能性があります。」と脅される。
しかし、税務調査というのは、確認する期間は概ね3期分。
この会社なら、平成30年期、令和元年期、令和2年期を税務調査で確認することになります。
儲けているのは最後の1期(令和2年3月期)のみ。
税務署からすると、「あと1年か2年様子を見て、おかしなことをしていたら、一気に2年か3年さかのぼって修正申告をさせてやろう。1年ではもったいない。」と考えるのです。
コロナ後の税務調査

令和3年7月からしばらくは、国税庁が重点的に取り組むテーマに沿った先とコロナ禍前からの好調業種に調査着手することになります。

コロナ後の調査に狙われる会社(事業者)とは?

国税庁が重点的に取り組むテーマ

国税庁が重点的に取り組むテーマとしては、この3つ
① 消費税の還付申告法人
② 海外取引法人
③ 無申告法人
これはコロナ禍が始まる前から、何を置いても先にこれをやれ!と国税庁が各国税局・各税務署に指示してきたテーマです。
①の消費税の不正還付は脱税というより、税金の搾取ですから厳しく目を光らせているんですね。
例えば、ありもしない輸出取引を、他人名義の輸出に関する書類を流用することにより、でっち上げ、架空の輸出売上(免税取引)を計上するとともに、架空の国内仕入(課税取引)を計上して消費税の還付を受けるといった手法。
あるいは、事業用に〇億円という建物や車を買いましたという架空の課税仕入れを計上する手法など。
コロナ禍でも消費税の還付を受ける会社には最優先で調査に入っています。
以前は還付加算金(税が還付されるまでの期間の利息)がかさむことを嫌がり、一旦消費税を還付した上で税務調査という流れでしたが、コロナ禍では消費税を還付せずに調査を受けてセーフだったら還付するという姿勢に変わってきています。
国税当局の本気度が分かりますよね。
②の海外取引をする会社も、以前から国税庁が重点的に取り組んでいるテーマ。
2018年から「自動的情報交換制度」といって、海外の税務当局と互いの在外国民の口座残高、利子・配当などの情報を交換する制度(共通報告基準:CRS:Common Reporting Standard)が強化されました。
これをテコに、売上げ代金を社長が持つ海外銀行口座に入金させる方法で、売上を抜いたり、外国関係会社に対する事業支援金を経費科目に仮装したりといった海外取引を使った不正の摘発を行っています。
③の無申告の会社への調査については、とても労力がかかりますので、売上げの大半を銀行口座への振込なのに申告しておらず、かつ規模の大きなところから手を付けているイメージですね。

コロナ禍前の好調業種

コロナ禍前に好調だった業種としては、まずは災害復興関係
2018年6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、2019年8月の九州北部豪雨、9月の台風15、19号、2020年7月豪雨など、災害列島日本はこのところ毎年大きな天災に見舞われています。
こうした災害の復興の携わる土木、建設関連の会社はコロナ禍前から好調でしたね。
都市部では、災害だけではなく、再開発や設備投資需要が堅調でしたから、土木工事や管工事を筆頭に、内装工事、とび工事等も好調でしたね。
次にインバウンド関係
●宿泊業(ホテル、旅館、民泊等)
●小売業
●飲食業
●交通機関(航空、鉄道、バス、船舶、レンタカー等)
これらは確かにコロナ禍前は絶好調でしたが、コロナ禍で相当な痛手を被っているので、調査先として選ばれる先は限られた先(コロナ禍中もテイクアウト等で凌いだ会社や超高級旅館など)になるでしょう。

コロナ特需の恩恵があった業種

しぼんだインバウンド関係業種に取って代わったのが巣ごもり需要業種です。
EC通販

●物流
●ゲームとメディア(テレワーク関連を含む)
●食品スーパー
●ホームセンター、百均
●感染対策商品(抗ウィルス商品、消毒剤、空気清浄関連)
これらは、皆さんもこの1年でかなり利用されたのではないでしょうか。
また、巣ごもりとは真逆のベクトルで、外で人に会わなりゃいいんでしょという需要も出てきました。
アウトドア関連業種ですね。

キャンプ用品
●バイク、自転車関連
こうした業種を国税当局はウオッチしています。

2年でトンズラ法人

最近、会社を設立して、2年は申告するけれども、それ以降会社はおろか、社長や従業員すらどこかに消えてしまう会社が増えています。
これは「暗躍する中国人★消費税不正還付」にも書いていますが、会社を設立して調査に来るのは4期目以降ということや、消費税の免税期間が2年間あることを最大限に活用し、脱税の限りを尽くして、どこかに消えてしまうというもの。
当然、国税当局は問題意識を持っていますので、何らかの手を打ってくる可能性は高いですね。

仮想通貨

仮想通貨で儲けたという話を最近良く耳にしますよね。
我々が耳にするということは、当然国税当局も着目しています。
仮想通貨バブルによるいわゆる「億り人」は注意が必要でしょう。
ビットコイン上に立つ億り人

これは法人というより、所得税の話になりますが、分離課税である株式投資と異なり、仮想通貨は総合課税ですから、ほとんどの人は税率が高くなります。
1億円稼いでも、半分税金で持っていかれる可能性もあります。
損失の繰り越しもありません。調査効率を考える国税当局は、ここを狙ってきます。

これらの会社への調査は、先ほど申し上げたように、すぐには調査に来ることはないかもしれませんが、「大丈夫」と高をくくらないことです。
売上げが増え、役員報酬を上げるなどの事情がないのに、所得が一定、あるいは下がっている会社には間違いなく調査に入ることになるでしょう。

いかがでしたか?
税務調査のリスクが高まる令和4年以降、必ず調査はあるものと考えて申告や準備をしておいた方がいいでしょう。
問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所

国税OB税理士による税務調査対策グループ

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