「青色申告の取り消し」回避する方法と再申請方法

青色申告の承認を取り消します

Q これまで、青色申告をしてきた会社の経営者です。今回の税務調査において、不正経理がバレてしまいました。このこと自体は反省しているのですが、税務署から不正金額として多額の金額提示をされたため、反論して今後帳簿の提出はしないと発言したところ、「今回の件は仮装、隠ぺいに当たるので、青色申告の取り消しになる可能性がある。それでもいいのか。」と詰め寄られました。

  青色申告を取り消されると、繰越欠損がある弊社は困るので、税務署の理不尽な金額提示を飲まなければならないのでしょうか。

A 税務署の主張が理不尽かどうか、ご質問からは分かりません。あなたの「帳簿の提出をしない」と発言された対応はマズいですね。しかし、本当に税務署が理不尽な脅しをかけているならば、青色申告の取り消しの要件を本当に満たしているか検証してみてはいかがでしょう。

 調査官が調査に協力しない姿勢を見せた納税者に対して発するフレーズはこの2つです。

「青色申告を取り消しますよ」
「消費税の仕入税額控除を認めませんよ。」

どちらも納税者にとっては、痛いです。調査官はそこを突いてくるのです。
大前提として、「税務調査には、頼れる税理士に立ち会ってもらって、キチンと対応する。

キチンと対応した上で、言うべきことは言う。」
これが基本です。
ご質問者のような事態になっていること自体、税理士の力量が足りないのではないでしょうか。

青色申告の取り消しには要件があります。
まず、何をしたら青色申告が取り消されるかを見ていきましょう。

青色申告が取り消される場合

① 帳簿書類の備え付けがされていない

まずは、帳簿書類の備付け、記録又は保存が適切に行われていない場合です。

帳簿書類とは
「帳簿書類の備え付け」とは、物理的に帳簿書類が存在することのみを意味するのではなく、税務調査の際に、これを税務職員に提示することを含んでいます。
調査官から帳簿や書類などの提出を求められたにも関わらずそれを断った場合、青色申告の承認の取り消しの対象となります。
業界用語で「再三再四基準」と言われますが、「帳簿を出しなさい」と「再三再四」調査官から求められたのに提示しなければ、提示を求められた最も古い事業年度について取り消されます。

② 仮装・隠ぺいがあった場合

売上げを除外していた、二重帳簿を作成していた、架空の人件費を計上していた等の行為があった場合ですね。
帳簿類への記載が不十分であったり、保存が無かったりといった場合に、推計しなければ所得金額を求められない場合も、これに該当します。
一般的には、修正申告(更正処分)の際に「重加算税対象」とされる行為を行った場合を指しますが、これについては後ほど詳しく解説します。

③ 税務署長の指示に従わなかった場合

帳簿書類の備付け等について、法人が税務署長の指示に従わない場合にも、青色申告の承認の取消事由に該当することになります。
この場合、指示を受けた事業年度以後の事業年度について、その承認を取り消されることとなります。

税務署長の指示に従わない場合は、まず青色申告の承認の取消事由に該当する旨が告げられます。
その上でなお指示に従わない場合に、青色申告の承認の取消しが行われます。
まぁ余程悪質な納税者に対する項目ですね、これは。

④ 二期連続で期限内に申告を行わなかった場合

2事業年度連続で期限内に申告書を提出しなかった場合、青色申告の承認は取り消しとなります。
最も多いパターンです。
個人事業者についてはこうした規定はなく、法人税法だけの規定ですね(個人事業者の場合、複式簿記による帳簿を作成していても、青色申告特別控除額が65万円から10万円に減額)。

⑤ 電子帳簿保存

これはちょっと解説が必要な項目ですが、「電子帳簿保存法」っていう法律が出来たんですね。
簡単に言えば、「電子データでもらった帳簿(請求書や領収書)は紙じゃなくってデータで保存しておくように」っていう法律。
あまりにも皆さんの準備が追い付いていなくて、実施が令和6年1月からになりましたが、これ以降に法律違反をしたら青色申告を取り消しますよということですね。
この法律にビビっている社長や税理士をたくさん見かけますが、そんなにビビることではありません。
どう考えても、税務調査の現場で「Amazonで買った商品の請求書をプリントアウトして保存していたから、青色申告を取り消します!」とはならないですから(笑)。

仮装・隠ぺいがあったら、青色取り消し?

ご質問者の場合は②の仮装・隠ぺいがあった場合に当たります。
これは「修正申告(更正処分)後の所得金額のうち、不正所得金額が、所得金額の50%に相当する金額を超えるとき」に青色申告を取り消すという条件があるんですね。

例えば、修正申告した後の所得が1,000万円になりました。そのうち600万円が不正所得金額、となると50%を超えるので、取り消しとなります。
ただし、ここがややこしいところなんですが、まず

不正所得金額が500万円未満の場合は適用されません。

次に国税庁の事務運営指針には「相当の事情がある場合には取り消しを見合わせる」なんていう項目があって、「仮装・隠ぺいがあったとしても、その事業年度前7年以内の各事業年度につき、特定の要件を満たし、今後適正な申告をする旨の申出等があるときは、取り消しを見合わせる」とあります。
特定の要件?申出?
分かりにくいですね。

かみ砕くと、

調査において問題にされた事業年度から7年遡って、税務調査において500万円以上の不正所得があった場合は取り消すけれども、それ以外は取り消しません
ということなんですね。
税務調査の風景

つまり、今回の税務調査で「所得の仮装・隠ぺい」が発覚して、かつ500万円以上の不正所得があったとしても、初犯なら取り消されません

青色申告の取り消し基準はハードルが高い

こんなややこしいルールを税理士も知らない場合があるので、税務署はご質問のような脅しをかけて、税務署の主張を納税者に飲ませようとすることがあります。

納税者が不利になる取扱いですから、税務署には、かなり慎重な対応が求められるルールとなっています。
実際に税務調査後の決裁には「青色申告の取り消し要否検討表」なんていうものがあり、この検討表で「取り消し要」と判断されないと、簡単には取り消せないのです。

青色申告を取り消されてしまったら

こうした条件を全て満たしてしまって、青色申告を取り消されてしまったら、どうしたらいいか?
青色申告には

・欠損金を最長10年間繰り越せる
・欠損金の繰戻しにより法人税の還付を受けられる
・30万円未満の少額資産の取得価額の全額を損金算入できる
といった魅力的なメリットが並んでいます。

青色申告の取り消し処分を受けてしまうと、青色申告の優遇が受けられず場合によっては税金が増えるだけではなく、白色申告になることで繰越欠損金や課税所得が変わる場合には、修正申告書の提出が必要になってきます。
これだけでもダメージは大きいですが、これ以上の出血を止めることはできます。
青色申告を取り消されたら、再度申請するのです。

ただし、条件があります。
青色申告の取消の通知日から1年間は、「青色申告の承認申請書」の再提出することができないという条件
ここでは、2期連続して期限後申告をしてしまった会社の例を挙げてみましょう。

3月決算の会社が、令和2年3月期と令和3年3月期の2期連続で期限後申告を行い、令和4年1月に「青色申告の承認の取消通知書」が届いた場合には、下記の通りとなります。
先ほどの条件がありますから、1年間は承認申請書の再提出はできません。
したがって、令和5年3月末までに再提出し、令和6年3月期から青色申告の再承認となります。
青色申告の承認申請書は、青色申告の適用を受けたい事業年度開始の日の前日までに提出しなければなりません。
最低でも3期は、白色申告が続くことになり、青色申告の特典を受けることができません。
この間に赤字になった場合、その欠損金は繰り越すことができないというわけです。
誤解している方が多いのですが、欠損金繰越控除の適用にあたって青色申告である必要があるのは、繰り越そうとしている赤字を出した事業年度についてのみです。
つまり、黒字を出して、欠損金繰越控除を適用する事業年度が白色申告であっても、欠損金繰越控除は適用できるというわけです。
過去の欠損金が青色申告の取り消しによって消えることはありません。

青色申告の再承認プロセスnew

さいごに

いかがでしたか?
〇税務調査においては、相当悪質な場合を除いて、そうそう青色申告を取り消されることはないこと
〇青色申告を取り消されてしまったら、そのままにしておかないこと
〇税法をサラッと読んだだけでは分からないルールが税務にはあり、これを使いこなせる税理士を選ぶことが重要だということ
お分かりいただけましたか?

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

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