銀行交渉力を鍛えよ!有利な条件で借りるノウハウ

銀行交渉力を鍛えよ

Q  銀行から定期預金の預け入れを条件に、信用保証協会付の融資を持ち掛けられました。資金繰りのために応じようと考えていますが、正しい選択でしょうか?また、弊社は地銀としかお付き合いしていませんが、他の金融機関とも付き合うべきでしょうか?

A  なぜ、銀行がそのような提案をするのか分かりますか?
銀行との交渉術を磨いて、より有利な条件で借りましょう。

中小企業の社長がよくおっしゃいますよね。
「銀行は晴れた日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げやがる!」と。
ドラマ「半沢直樹」でも半沢の父親(鶴瓶)がねじ工場を営んでいて、その際に銀行からの融資を打ち切られた結果、父親が自殺してしまったシーンが描かれました。
半沢直樹 銀行員にすがる鶴瓶
(ドラマ「半沢直樹」より引用)
銀行員ってひどいよな~と感じてしまうシーンですが、コレは銀行側からすると当たり前の理屈なんですね。
銀行はお客様から預かったお金を運用するなどして、利益を上げ、金利を支払っています。あなたが銀行マンなら「もしかしたら貸したお金が返ってこない会社」よりも「確実に貸したお金を貸してくれる会社」にお金を貸したいと思いませんか?
そう、悪いのは銀行ではなく、そうした銀行の理屈を知らない社長の方なんです。
経営者であるなら、銀行マンがどのように考えるかを知ることが重要であり、どうしたら雨の日に傘を取り上げられない会社にするかを考えなければなりません。

危ない会社は退場(倒産)してくださいが銀行の理屈

銀行からすると、冷たいかもしれませんが、「経営が傾いた会社は倒産してください」が正解なのです。
なぜなら、そうした会社が倒産すれば、銀行は不良資産を償却できますから、自己資本比率(銀行の経営安定の指標)が上がります。
そんな会社が潰れたところで、全体としては大きな影響を与えませんから、結果的に優良貸付先が増えることになります。
危ない会社に追加融資をして自己破産に追い込んでしまう方が、双方にとって利益にならないと考えるんですね。
私が言いたいのは、「銀行を悪者にしても何も解決しない」ということ。
では、どうするか。
銀行からの借り方のテクニックから話を始めていきましょう。

銀行からどのように借りるのが正しいか

ご質問の銀行マンから持ち掛けられた「定期預金の預け入れを条件に、信用保証協会付の融資を持ち掛けられました」との提案。
銀行マンは何でこんな提案をするのでしょう?

実質金利を理解せよ

銀行は「実質金利」というものを見ているんです。
実質金利とは、このような算式で求められます。
実質金利の計算式
一つ例を挙げてみます。
実質金利の具体的例
②では①より借り入れるお金が増えました。そうすると、実質金利は9%から7%に下がりました。
③では①より固定預金つまり定期預金が増えました。そうすると、実質金利は9%から21%に上がりました。
お金を借りれば借りるほど金利は安くなります。銀行にとっては損
預金をすればするほど、金利が高くなる。つまり、銀行が儲かるという仕組みですね。

銀行から「借入の金利を高くしてほしい。」と言われたら、「了解です。その代わり、定期預金を解約させてください。」と交渉してみましょう。加えて「うちのジッキンいくらですか?」と言ってみるのです。
業界では実質金利のことを「ジッキン」と呼びます。
「ジッキン」と聞いただけで、担当者は「この社長はしたたかだ」と一目置いてくれるはずです。

長期で借りるか、短期で借りるか

銀行には格付けというものがあります。
利息は売上高や所得で決まるのではなく、銀行の格付けによって決まります。
融資先格付け表
格付けをどう決めているかについては、「銀行融資に強い決算書を作れ!」で触れていますので、そちらをチェックしてみてください。
その格付けを決める一つの尺度に「流動比率」というものがあります。
流動比率=流動資産÷流動負債
で求められますが、この数字が大きいほど資金繰りがきちんと回っていることを示します。
この数字を大きくするには分母である流動負債を小さくする必要があります。
流動負債とは買掛金や未払金などですが、これに短期借入金も含まれます。
短期借入金が少ない方が流動比率が大きくなる、ということですね。
つまり、短期より長期で借りる方が、返済額が少なくて済むし、格付も上がる。

しかし、初めての融資で、銀行がいきなり長期で貸してはくれません。
まずは短期で様子を見ます。
この会社はちゃんと儲ける力があるな、返済能力がしっかりしているな、とまずは銀行に信用してもらうことです。
銀行に信用してもらうには、きちんと情報を開示して、返済を絶対に遅れないこと。これは鉄則です。

こうして、まずは短期で貸してもらい、使わなくても出金もしくは他行に移動し(金融庁から押し貸しだと認定されるのを避けるため)、その後期限が来たら返済する。
銀行から「また用立てしますよ」と言われたら「今回は短期では借りません。長期であれば借ります。」と伝えてみましょう。
長期借入に成功し返済実績を作れば、格付けが上がり、自然と金利が下がります。

担保を取られるのは仕方ないのか

「銀行から無担保で融資してもらえませんかね」
よく社長がおっしゃるセリフですね。
銀行から担保を取られるのは、ズバリ社長が信用されていないから

「数字のことはよく分からんから税理士に任せてる。」
「銀行が事あるごとに試算表を出せとうるさい。」
こんな
会社の実態が分かっていない、数字を知ろうともしない社長が「無担保で借りたい」と言ってきても銀行は貸しません。
会社のことを分かっていない社長に銀行が担保を取るのは、「保全のため」であり、当たり前なんです。

銀行は、きちんと銀行に情報を開示し、数字を使って自社のことを説明できる社長を評価するということを忘れてはいけません。
その先に「この社長なら信用できる。無担保で貸してみよう。」と銀行マンが考えてくれることがあるということです。

担保価値は銀行によって違う

銀行の信用を積み上げていくうちは、担保を取られるのは仕方ありません。
あなたの会社が不動産を持っていたとしましょう。
土地建物で2億円(土地1億5千万円・建物5千万円)なら、価値はいくらと評価されるか。
通常は建物に価値なしと判断され、土地の1億5千万円が評価額になります。
この担保価値というのは、どこの銀行でも変わらないと思いますか?
実は、担保価値は銀行によって異なります。
1億5千万円の土地の担保価値
A メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ銀行)で1億円
B 地方銀行(横浜、千葉、静岡、福岡、京都、広島銀行など)で2億円
C 第二地銀(北洋、京葉、名古屋、みなと、愛媛、もみじ銀行など)や信用金庫で2億5千万円
といったところでしょうか。
AからCへと下にいくほど金利は高くなります。
しかし、金利を気にしてメガバンクから借りようなどと考えないことです。
中小企業の場合、重きを置くのは金利よりも金額です。

手形貸付か証書貸付か

金融機関の貸付は4つの種類があります。証書貸付、手形貸付、手形割引、当座貸越の4種類。
そのうち、まとまった金額を借りたい時に使われるのが、証書貸付と手形貸付。

「証書貸付」とは、借主から貸付金額、弁済期日、利率、担保物件などの貸付条件を記載した「金銭消費貸付契約証書」を差入れさせておこなう貸付のこと。貸付期間が長期にわたる場合は、不動産などの何らかの担保を設定することが一般的です。

「手形貸付」とは、借主から約束手形(借主を振出人、貸主を受取人とする)を振出させて、手形金額に相当する額の貸付をすることです。証書貸付は担保を設定して貸付期間が長期になることが多いですが、手形貸付では担保を設定せず、ほとんどが1年以内の短期貸付になることが多いです。主に経常運転資金やつなぎ融資など、企業の資金調達に使われます。

手形貸付の方が手軽で、印紙税がかからないといった理由で、手形貸付を選びたがる社長が多い。
しかし、手形貸付は、期日が来て、取り立てに回されると「不渡り」とみなされて企業の信用が著しく低下し、他の金融機関からも借入れが難しくなるという現実を忘れてはいけません。

手軽ですが、「待った」は効きません。
一方、
証書貸付は支払い期日に現金がなくても会社は潰れません。
返済する気持ちさえあれば、「待った」が効きます。
「支払利息」が足りなければ、「利息分だけ貸してください。末日までには入金があります」と借りることも可能なのです。
手形を落とせなければ、たとえ黒字の会社でも倒産するということを肝に銘じ、証書貸付で借りることをおススメします。

何行と取引すべきか

ご質問者は地銀1行と取引があるとのことですが、これでは融資の際に競争が全くなく、地銀の言いなりで借りなければならなくなります。
取引をするならば、メガバンク1、地方銀行1、信用金庫1、そして日本政策金融公庫などの政府系1があれば、理想的です。
小規模な会社はメガバンクとの取引がなくても構いません。

売上げが数億円という規模のうちはメガバンクは真剣に取り合ってくれませんから。
では、どこをメインバンクにするか
メインバンクというのは、日本独特の金融慣行ですが、「借り入れ・預金・手形取引・取引先の紹介など、他行との取引とは別格の濃厚な取引を続け、経営内容に関する情報を提供し経営指導を受けるなど関係強化に努めて安定的な資金供給を受けられることを期待される」のがメインバンクと説明されています。
給与振込口座がある銀行でも、売上げ金の入金口座がある銀行でもなく、大口の資金需要に対応してくれる銀行がメインバンクです。
銀行に頭を下げる社長

プロパーで最も融資をしてくれる先こそメインバンクですので、その基準で決めてください。
そして、一度メインバンクを決めたら、コロコロ変えてはいけませんよ。
しっぺ返しを食らいますから。

その上で複数行から借りなければいけない事態になった時には、一行だけからたくさん借りないことです。
メインバンクからの借入は多くても融資額全体の半分以下としておきましょう。
基本は「一つの案件には一つの銀行から借りる」です。

借りたきゃ早めに

突然の資金需要ということもあるでしょうが、大半は「毎年この時期に資金繰りがひっ迫するな」であるとか「設備投資をこの時期にしよう」とか、あらかじめ分かっているでしょう。
銀行から借りたいと考えているのであれば、2か月前には「この時期にこれくらい借りたいと考えている」という意思表示をしておくことです。
特に、銀行の決算(3月・9月)に資金需要を公にすると、条件が良くなることが多い。

銀行マンだってサラリーマン。貸し出しノルマを達成したい。
11月に融資が必要でも、9月に申し出ることで銀行マンから「出来たらその資金、9月に借りていただけませんか?その代わり金利はお安くさせていただきますよ」と持ち掛けられることがあります。

無事に借り入れる先が決まったら、他の取引金融機関にもその旨を報告します。
重要なことは、各行平等に、すべてオープンにするということ。
そうすることで、金融機関が信用してくれますし、「他行に出し抜かれた」と思ってくれますから、今後の借りる際の金利に良い影響を与えることに繋がります。

もし、複数行から融資の申し出があったら、両方ともから借りておきましょう。
金利のことはあまり気にせず、額を借りることを優先する。
なぜかというと、銀行は実績主義ですから、「過去にいくら貸したか」で融資額を決めるからなんですね。
せっかく貸してくれると言ってるのですから、借りられるときに借りて、融資のキャパを増やしておく方が得策です。

さて、いかがだったでしょうか。

全体を読んでいただければお分かりでしょうが、銀行を敵視することなく、情報開示をしっかりしてキチンと向き合うということがエキスであるということがお分かりいただけると思います。
その上で「何が何でも借りたい」という姿勢を見せないこと。
「この会社はお金に困っているのか?」と銀行に足元を見られない姿勢も同時に大事なのです。
問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

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