令和3年分年末調整の電子化 完全マニュアル

年末調整の電子化 今でしょ

Q  年末調整の手続きが電子化できると聞きましたが、電子化とはどのようなものですか?
A  はい、令和2年分の年末調整から、手続きが電子化できるようになりました。年末調整の電子化について、知っておくべきことや準備方法をお伝えします。

IT後進国・日本は税務関係でも随分世界から遅れていましたが、e-taxが少しずつ利用され始め、いよいよあの煩わしかった年末調整事務も令和2年から電子化されることになりました。
しかし、令和2年分は事前に税務署に「電子化します!」という申請が必要であったり、連携する保険会社数が少なかったりと、準備不足の感が否めませんでした。
令和3年分については、こうした申請が不要になり、連携するためのマイナポータルのサイトもかなり充実してきました。

年末調整の電子化とは、どのように準備し、どのように進めていくのか。
現状で従業員の方がマイナンバーカードを持っていなくても、電子化で楽にできる部分がありますし、少しずつ電子化を進めていけば、今年
の年末調整、そして1年後、2年後の年末調整はさらに楽になるだろう、ということをこのQ&Aを読んでいただければご理解いただけると思います。

年末調整の電子化でどう変わる?

まず、電子化と言うと、あまりにも漠然としていますので、以前とどう変わるのかを見ていきましょう。
年末調整電子化(過去とこれから対比)
この表のとおり、以前はすべて紙ベースのやり取りでした。
①税務署から税務署から紙が送られてくる
②勤務先が従業員に紙を従業員に配る
③従業員が紙に手書きして勤務先に提出
④勤務先はそれをチェックしながら会計ソフトに入力
みたいな流れですね。
それが、従業員、会社、税務署まですべてデータでやり取りできるようになる、ということですね。
具体的には
①従業員が控除証明書等を電子データで取得し、年調ソフトを使って年末調整申告書データを作成
②勤務先は従業員から①のデータの提供を受け、これを利用して年税額の計算を行う
というデータベースのやり取りに変わることになります。

まず、いろんな用語に面食らう方がおられると思いますので、先に用語の説明をしておきます。

マイナポータル

マイナポータル」とは、政府が運営するオンラインサービスです。
マイナンバーカードを使った様々な行政の手続やお知らせの確認が​自分専用のページを通じてオンラインでできます。
年末調整の電子化では、次のような「マイナポータル連携」ができます。
マイナポータル

マイナポータル連携

「マイナポータル連携」とは、従業員が年末調整申告書データを作成する際に保険料控除等で使う控除証明書等データを、マイナポータルから自動取得する機能のことです。
年調ソフトを利用した場合は、マイナポータル連携により取得した控除証明書等データの内容を、年末調整申告書に自動入力することができます。
マイナポータル連携の利用時間は原則24時間365日利用可能です。

民間送達サービス

「民間送達サービス」とは、民間企業(保険会社や金融機関など)が提供している、インターネット上に自分専用のポストを作り、自分宛てのメッセージを受け取ることができるサービスのことです。
あらかじめ受取人が本人確認を行い、差出人を登録して特定のお知らせを受け取ることができます。
利用者は、自身が利用するマイナポータルと民間送達サービスを連携させることで、マイナポータルを窓口として保険会社や金融機関からの送達サービスを利用することができます。
※民間送達サービスは、マイナポータルの「もっとつながる」から開設できます。

年調ソフト

「年調ソフト」というのは、正式名称「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」。
年末調整申告書について、従業員が控除証明書等データを活用して簡便に作成し、勤務先に提出する電子データ又は書面を作成する機能を持つ、国税庁が無償で提供するソフトウェアのことです。
「年調ソフト」では次のようなことができます。
●マイナポータルの連携
●各種控除証明書データのインポート
●控除証明書データの自動入力
●控除額の自動計算
●年末調整申告書の印刷、保存
●扶養控除、配偶者控除など該当有無の自動判定

「年調ソフト」をダウンロードして使うのは、会社の経理担当者ではなく、従業員の皆さんです。
これが年末調整電子化の肝と言えるでしょう。
このソフトには、勤務先が行う年税額の自動計算機能はありません。あくまでも、控除額を自動計算してくれるだけです。

年調ソフトのダウンロードはこちらから。

年調ソフトの使い方について知りたい方は、Web-Tax-TVから。


年末調整電子化前

年末調整電子化後

電子化のメリット

従業員にとってメリットは、年末調整の申告書の記入や生命保険料控除額などの計算をする手間が省けること。
自動的に計算してくれますし、毎年発生する「生命保険会社からの控除証明書のはがきが見当たらないんですよ~」なんていう困りごともありません。
また、テレワークをされている方はデータを勤務先にメール送信すれば良いわけですから、書類の郵送なんて面倒なことをする必要もありません。
そして、何より便利なのは、従業員がマイナポータルを使うと、複数の控除証明書が一気に取得できますし、氏名・住所・扶養親族などの控除申告書のデータは翌年以降も引き継がれるということ。
思えば、毎年証明書を集めて、申告書もほぼ同じことを書いてましたからね。
なんて原始的なんだ!と皆さんもずっと思ってましたよね?
会社もデータで受け取るので、検算の必要はないし、データでもらうのですから、書類保管の必要もなし。

年末調整電子化の変更点
加えて、この
電子化データは年末調整だけじゃなく、確定申告手続きでも活用できるんですね。
従業員が医療費控除、ふるさと納税(寄附金控除)を受けたい場合、確定申告の必要がありますが、このデータを「確定申告書等作成コーナー」で使えますので、簡単に作成できることになります。
 電子化のメリットを会社側と従業員側で整理すると、このようになります。
年末調整電子化による勤務先のメリット
年末調整電子化による従業員のメリット
ここまで、導入するメリットについて、お伝えしてきました。
では、デメリット(導入の壁)はないのでしょうか?

電子化のデメリットはないのか

年末調整を電子化すれば、確かに上記のようなメリットが受けられます。
しかし、導入する際に超えなければならない壁があります。この壁について説明していきます。

年末調整は人事のお仕事

年末調整について、正直分かっている従業員が少ないという現実があります。
「年末調整、面倒くさいなぁ。人事が全部やってくれりゃいいのに」というのが従業員の本音でしょう。
それなのに、マイナンバーカードを作り、年調ソフトをダウンロードして登録し、入力しなければならない。
従業員に「年末調整とは何ぞや?」といったことや「この壁を超えたら、メリットがあるよ」ということを認識してもらうことが重要になってきます。

電子化は義務じゃない

年末調整の電子化は「できる」のであって、「やらなければならない」ではありません。
そうなってくると、相当の下準備をしないと導入したところで、電子と紙が併存することになり、経理の仕事が逆に増えてしまうことになりかねません。

これらの壁を乗り越えれば、相当楽になることは確実ですが、そのためには従業員の理解を深めることと年末調整作業の全てを電子化することが重要になってきます。
電子化を進める前に、
・従業員は年末調整の意義や手順をきちんと理解できているのか
・人事担当に問い合わせが集中していないか
など、現在の御社の運用状況をチェックし、改善できる点がないか、把握することから始めてみてください。

従業員が年末調整の意義を理解し、自分で作成できる状況を整えた上で、電子化に向けた協力を依頼する、という流れで進めてみてはいかがでしょうか。

これらの下準備が整った段階で、やれることからやっていくのです。
従業員がマイナンバーカードを持っていなくてもできることがあります。

やれることからやっていこう

まず、電子化するには会社側、従業員側で、それぞれ準備が必要です。
会社側では、どこまで電子化するかをまず検討しなければいけません。

たとえば、令和3年分は一部分だけ電子化しても良いわけです。
従業員の大半がマイナンバーカードを持っていないとしましょう。
従業員は控除証明書を従来通り、生命保険会社から控除証明書をはがきで受け取り、これを年調ソフトに入力し、申告書を作成してデータを会社に提出と言う形でもOK。

電子化していく場合の会社側の手順と従業員側の手順を整理しておきます。

会社側の手順

1 電子化実施方法を会社で検討
従業員には年調ソフトを使うことを義務付け、控除申告書は書面でもデータで提出可、といったように、電子化する範囲をまず決めます。
2 従業員への周知
控除申告書の提出方法については、法令上は従業員の同意を得る必要はありません。
ただ、会社で決めた範囲はどの範囲なのか、事務手続きをどうするのかを従業員には知ってもらう必要がありますし、従業員側ですべき準備もありますので、これを周知します。
周知の時期としては、従業員がマイナンバーカードを取得するための期間や民間送達サービス開設の期間を考えると9月末から10月上旬までには周知した方が良いでしょう。
3 給与システムの改修
会社が使っている給与計算ソフトが、国税庁の年調ソフトと連携しているか、を確認する必要があります。
市販のソフトであれば、年調ソフトに対応するようにアップデートをしてくれているかを確認しなければなりません。
大手のソフトであれば、大抵対応しています。
自社作成のソフトや市販ソフトを自社用にカスタマイズしている場合は、ソフトの改修が必要になるでしょう。
なお、令和2年に必要だった税務署への届け出は、令和3年から不要になりました。
源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」という様式ですが、これまでは12月の年末調整に間に合わせようと思えば、10月中に提出しなければならず、令和2年末は「間に合わない!」という事例が頻発しました。
従業員から以下の書面を受け取るときに税務署への事前申請は要りませんので、ハードルが下がりましたね。

【年末調整申告書関係】
①給与所得者の扶養控除等申告書
②給与所得者の配偶者控除等申告書
③保険料控除申告書
④住宅ローン控除申告書
⑤給与所得者の基礎控除申告書
⑥所得金額調整控除申告書
【控除証明書等関係】
⑦保険料控除申告書
⑧住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
⑨年末残高等証明書

従業員側の手順

1 ソフトの取得
 年調ソフト、正式には「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」と言いますが、これは令和2年10月1日に公開されました。
 従業員の方でパソコンをお持ちなら(Windows版・Mac版)国税庁HP「5 年末調整控除申告書作成用ソフトウェアダウンロード(Ver.1.0公開中)」から
スマホをお持ちならAndroid版はGoogle Playから iOS版はApp Storeから入手できます。
2 控除証明書のデータの取得
 これは、①保険会社のホームページからダウンロードする方法と②マイナポータル連携を利用して一括取得する方法があります。
年末調整電子化(控除証明書等のデータ取得の方法)

①の保険会社のホームページ等(お客様ページなど)からダウンロードする場合、1社ずつ毎年取得する必要がありますが、②のマイナポータル連携を利用する場合、一度マイナポータルと保険会社を紐付けておけば、毎年一括で取得できます。
保険会社と紐付けるとは、マイナポータル上で保険会社と民間送達サービスの連携設定を行うことで完了します。
令和3年8月現在で、控除証明書の電子データ交付に対応している保険会社等の状況は以下の通り。
マイナポータル連携可能な控除証明書等発行社
②は、当然、マイナンバーカードが必要ですし、パソコンの場合はICカードリーダー、スマホの場合はマイナンバーカード読み取り機能があることが必要です。
読み取り機能があるかないかはこちらで検索してください。i phoneは大丈夫です。

マイナポータル連携でできる便利なこと

用語説明で解説しましたが、「マイナポータル連携」とは、従業員が年末調整申告書データを作成する際に保険料控除等で使う控除証明書等データを、マイナポータルから自動取得することです。
しかも、複数の控除証明書データをまとめて自動取得してくれ、その内容を年末調整申告書に自動入力してくれ、控除額を自動計算してくれる。
全部自動なので、証明書を保管する手間や計算する手間が省け、非常に効率的かつ間違いがありません。
「マイナポータル連携が便利なのは分かるけど、従業員はマイナンバーカードをほとんど持ってないし、来年以降でいいや」という方は、従業員に保険会社のホームページ(「お客様ページ」)から控除証明書データをダウンロードしてもらい、これまた従業員にダウンロードしてもらった年調ソフトにこれをアップロードした上で、会社にデータ送信してもらってください。マイナポータル連携のイメージ

将来的には、確定申告の際に必要な「給与の源泉徴収票」や「医療費のお知らせ」などもすべてマイナポータル連携で手に入れることができるようになります。
令和3年分の年末調整で使えるのは
生命保険料控除証明書
地震保険料控除証明書
住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書
住宅借入金等特別控除証明書
の4つということになります。
マイナポータル連携により取得できる控除証明書等
例えば、住宅取得控除を受けようと思えば、これまで税務署から発行された住宅借入金証明書と銀行から発行された残高証明書をいずれも紙ベースで会社に提出していましたよね。
今後は
住宅借入金等特別控除証明書の提出は、マイナポータルと国税庁のe-taxを連携させることにより、データで完了します。
ただし、以下の3つの条件を満たさなければなりません。
・居住年が令和元年以降であること

・居住開始年分の確定申告書をe-taxで提出していること
・e-taxで確定申告書を提出する際に、翌年以降も控除証明書について、e-taxによる電子データの交付を希望すること

今年の確定申告書を紙で提出した人や居住年が平成30年以前である人は紙で提出するしかありません。

マイナポータル連携の準備

毎年、年末調整するのだから、マイナポータル連携をするぞ!という従業員のために、具体的にどうするのか、その準備手順をお伝えします。

1 マイナンバーカードの取得
はい、そうですよね。マイナンバーカードがないと始まりません。パソコンから操作をしたい方は、ICカードリーダーも必要です。
ソニーのICカードリーダー/ライター PaSoRi RC-S380なんかは3千円弱と安くて、使い勝手が良いので、おススメです。

2 マイナポータルの開設
次にマイナポータルを開設しなければなりません。
マイナポータルは、政府が運営するオンラインサービスです。これを開設することで、行政機関とのやり取りができるネットの窓口ができると考えてください。

PC用
Android用
i-phone用

3 民間送達サービスの開設
民間送達サービスとは、マイナポータル上で、民間企業、ここでは生命保険会社等が個人にお知らせなどを電子的に届ける民間送達サービス(「e-私書箱」)です。
民間送達サービスの利用方法については、こちらから

4 保険会社等と民間送達サービスサービスの紐付け
これで箱は全てできましたので、あとはこの箱を紐付ける作業です。
この紐付け作業は、各保険会社で「マイナポータル連携サービス」というページができるはずです。
従業員が契約されている生命保険会社のサイトから入って、この作業を完了させてください。

まとめ

これまで手続きの概要や準備手順について見てきました。
従業員に年末調整を知ってもらい、年調ソフトの扱い方に慣れてもらうというハードルはありますが、電子化によって、あの煩雑だった手続きが楽になる、ミスが減るようになることは間違いありません。
このQ&Aを読んでいただいて、「やってみよう」というきっかけにしていただければ、嬉しく思います。
マイナポータル連携を利用するための設定の流れ

国税庁から発表された周知文4枚ものはこちらです。サラっと書いてあります(笑)。
年末調整手続きの電子化について~実施方法検討・週知編

さらに詳しく知りたい方は国税庁から「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ(令和3年6月改訂版)」が出ています。
Q&A形式で疑問点に答えてくれていますので、参考にしてください。 

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

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