令和2年分年末調整の電子化 完全マニュアル

令和2年分年末調整の電子化 完全マニュアル

Q  令和2年分の年末調整から、手続きが電子化できると聞きましたが、電子化とはどのようなものですか?
A  はい、令和2年分の年末調整から、手続きが電子化できるようになりました。年末調整の電子化について、知っておくべきことや準備方法をお伝えします。

IT後進国・日本は税務関係でも随分世界から遅れていましたが、e-taxが少しずつ利用され始め、いよいよあの煩わしかった年末調整事務もついに電子化されることになりました。
しかし、正直に申し上げますと、まだ完全なる電子化には、もうしばらくかかるかな~というのが感想です。
なぜでしょうか?

従業員が自分のマイナンバーカードを利用して、データを会社に送信するという方法が最終形(最もラクにできるよう)になっているからです。
マイナンバーカードの普及率が21%程度、つまり5人に1人しか持っていない現状では、「年末調整が電子化で随分楽になったなぁ。」というところまでいかないんですね。
それでも、国税庁が音頭をとって少しずつ電子化して、会社も従業員もラクに年末調整ができるようにしようとしています。
これを読んでいる皆さんも、年末調整事務を一気に電子化しなくてもかまいません。
現状で従業員の方がマイナンバーカードを持っていなくても、電子化で楽にできる部分がありますし、少しずつ電子化を進めていけば、令和2年の年末調整、そして1年後、2年後の年末調整はさらに楽になるだろう、ということを、このQ&Aを読んでいただければご理解いただけると思います。

年末調整の電子化でどう変わる?

まず、電子化と言うと、あまりにも漠然としていますので、以前とどう変わるのかを見ていきましょう。
年末調整電子化(過去とこれから対比)
この表のとおり、以前はすべて紙ベースのやり取りでした。
税務署から紙が送られてくる
⇒それを従業員に配る
⇒従業員が紙に手書きして提出
⇒経理担当者はそれをチェックしながら会計ソフトに入力みたいな流れですね。
それが、従業員、会社、税務署まですべてデータでやり取りできるようになる、ということですね。
まず、この表に出てくる「年調ソフト」について説明しておきます。
年調ソフト」というのは、正式名称「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」。
年末調整申告書について、従業員が控除証明書等データを活用して簡便に作成し、勤務先に提出する電子データ又は書面を作成する機能を持つ、国税庁が無償で提供するソフトウェアのことです。 ダウンロードして使うのは、会社の経理担当者ではなく、従業員の皆さんです。
年末調整電子化(電子化前)
年末調整電子化(電子化後

電子化のメリット

 従業員にとってメリットは、生命保険料控除額などを自分で計算したり、手書きしたりする必要はありません。
自動的に計算してくれますし、毎年発生する「生命保険会社からの控除証明書のはがきが見当たらないんですよ~」なんていう困りごともありません。
そして、何より便利なのは、従業員がマイナポータルを使うと、氏名・住所・扶養親族などの控除申告書のデータは翌年以降も引き継がれるということ。
思えば、毎年ほぼ同じことを書いてましたからね。
なんて原始的なんだ!と皆さんもずっと思ってましたよね?
 会社もデータで受け取るので、検算の必要はないし、データでもらうのですから、書類保管の必要もなし。
加えて、この
電子化データは年末調整だけじゃなく、確定申告手続きでも活用できるんですね。
 従業員が医療費控除、ふるさと納税(寄附金控除)を受けたい場合、確定申告の必要がありますが、このデータを「確定申告書等作成コーナー」で使えますので、簡単に作成できることになります。
 電子化のメリットを会社側と従業員側で整理すると、このようになります。
年末調整電子化による勤務先のメリット
年末調整電子化による従業員のメリット
すべてがデータでできるようにするためには、先ほど申し上げた通り、従業員がマイナンバーカードを持っているということが前提になります。
しかし、従業員がマイナンバーカードを持っていなくても電子化できる部分がありますので、まずはこれから手を付けていきましょう。

やれることからやっていこう

 まず、電子化するには会社側、従業員側で、それぞれ準備が必要です。
 会社側では、どこまで電子化するかをまず検討しなければいけません。

 たとえば、令和2年分は一部分だけ電子化しても良いわけです。
従業員の大半がマイナンバーカードを持っていないとしましょう。
 従業員は控除証明書を従来通り、生命保険会社から控除証明書をはがきで受け取り、これを年調ソフトに入力し、申告書を作成してデータを会社に提出と言う形でもOK。

 令和2年10月段階で、控除証明書をデータで提供するのは、現在この8社
控除証明書等データ 発行する生命保険会社
この生命保険会社以外を使っている従業員もおられるでしょうから、
どうしても部分的実施にならざるを得ません。
徐々に電子化していく場合の会社側の手順と従業員側の手順を整理しておきます。

会社側の手順

1 電子化実施方法を会社で検討
 従業員には年調ソフトを使うことを義務付け、控除申告書は書面でもデータで提出可、といったように、電子化する範囲をまず決めます。
2 従業員への周知
 控除申告書の提出方法については、法令上は従業員の同意を得る必要はありません。
 ただ、会社で決めた範囲はどの範囲なのか、事務手続きをどうするのかを従業員には知ってもらう必要がありますし、従業員側ですべき準備もありますので、これを周知します。
3 給与システムの改修
 会社が使っている給与計算ソフトが、国税庁の年調ソフトと連携しているか、を確認する必要があります。
 市販のソフトであれば、年調ソフトに対応するようにアップデートをしてくれているかを確認しなければなりません。
大手のソフトであれば、大抵対応しています。
 自社作成のソフトや市販ソフトを自社用にカスタマイズしている場合は、ソフトの改修が必要になるでしょう。
4 税務署への届け出
 従業員から控除申告書をデータで受け取るためには、会社は所轄税務署に届け出が必要になります。
  「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書
 (以下「源泉電磁申請書」と言います。)
 この源泉電磁申請書の提出期限は、「提出した月の翌日末日に承認があったものとみなされる。」
まどろっこしい言い方(笑)。
令和2年12月の年末調整に間に合わせようと思えば、10月中に提出せよ!ってことです。
 10月中に提出→11月末に承認→12月から従業員から控除申告書をデータで受け取れる、という流れですね。
 皆さん、これを提出したら、絶対に従業員から電子データで控除申告書を受け取らなきゃいけないって思いがちですが、そうではありません。
電子でも受け取れるようになるってことです。
従来通り書面で受け取っても構いません

従業員側の手順

1 ソフトの取得
 年調ソフト、正式には「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」と言いますが、これは令和2年10月1日に公開されました。
 従業員の方でパソコンをお持ちなら(Windows版・Mac版)国税庁HP「5 年末調整控除申告書作成用ソフトウェアダウンロード(Ver.1.0公開中)」から
スマホをお持ちならAndroid版はGoogle Playから iOS版はApp Storeから入手できます。
2 控除証明書のデータの取得
 これは、①保険会社のホームページからダウンロードする方法と②マイナポータル連携を利用して一括取得する方法があります。
年末調整電子化(控除証明書等のデータ取得の方法)

①の保険会社のホームページ等からダウンロードする場合、1社ずつ毎年取得する必要がありますが、②のマイナポータル連携を利用する場合、一度マイナポータルと保険会社を紐付けておけば、毎年一括で取得できます。
②は、当然、マイナンバーカードが必要ですし、パソコンの場合はICカードリーダー、スマホの場合はマイナンバーカード読み取り機能があることが必要です。
読み取り機能があるかないかはこちらで検索してください。i phoneは大丈夫です。

マイナポータル連携でできる便利なこと

 ここから先は、「マイナポータルを使ってやるぞ!やった方が来年以降めちゃくちゃ便利やないか!」という方が読み進めてください。
 「マイナポータルが便利なのは分かるけど、従業員はマイナンバーカードをほとんど持ってないし、来年以降でいいや」という方は、従業員に保険会社のホームページ(「お客様ページ」)から控除証明書データをダウンロードしてもらい、これまた従業員にダウンロードしてもらった年調ソフトにこれをアップロードした上で、会社にデータ送信してもらってください。

 従業員がマイナンバーを持っていて、マイナポータルを使えば、非常に便利だという理由は、データの一括取得・自動入力ができるので、控除申告書がほとんど手間いらずで作れてしまうということなんです。
マイナポータル連携のイメージ

 将来的には、確定申告の際に必要な「給与の源泉徴収票」やふるさと納税をした際の「寄附金の受領証明書」などもすべてマイナポータル連携で手に入れることができるようになります。
ただ、令和2年分の年末調整で使えるのは生命保険料控除証明書、住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書、住宅借入金等特別控除証明書の3つ
年末調整電子化(マイナポータル連携により取得できる控除証明書等)

 例えば、住宅取得控除を受けようと思えば、これまで税務署から発行された住宅借入金証明書と銀行から発行された残高証明書をいずれも紙ベースで会社に提出していましたよね。
今後は
住宅借入金等特別控除証明書の提出は、マイナポータルと国税庁のe-taxを連携させることにより、データで完了します。
ただし、以下の3つの条件を満たさなければなりません。
・居住年が令和元年以降であること

・居住開始年分の確定申告書をe-taxで提出していること
・e-taxで確定申告書を提出する際に、翌年以降も控除証明書について、e-taxによる電子データの交付を希望すること

 今年の確定申告書を紙で提出した人や居住年が平成30年以前である人は紙で提出するしかありません。

マイナポータル連携の準備

 毎年、年末調整するのだから、マイナポータル連携をするぞ!という従業員のために、具体的にどうするのか、その準備手順をお伝えします。

1 マイナンバーカードの取得
 はい、そうですよね。マイナンバーカードがないと始まりません。パソコンから操作をしたい方は、ICカードリーダーも必要です。
ソニーのICカードリーダー/ライター PaSoRi RC-S380なんかは3千円弱と安くて、使い勝手が良いので、おススメです。

2 マイナポータルの開設
 次にマイナポータルを開設しなければなりません。
マイナポータルは、政府が運営するオンラインサービスです。これを開設することで、行政機関とのやり取りができるネットの窓口ができると考えてください。

マイナポータル開設001

マイナポータル開設002

マイナポータル開設003

マイナポータル開設004

マイナポータル開設005

マイナポータル開設006

マイナポータル開設007

マイナポータル開設008
3 民間送達サービスの開設
 民間送達サービスとは、マイナポータル上で、民間企業、ここでは生命保険会社等が個人にお知らせなどを電子的に届ける民間送達サービス(「e-私書箱」)です。
その開設方法を見ていきましょう。
① まず、マイナポータルにアクセス
民間送達サービス開設002
② e-私書箱のつなぐをクリック
民間送達サービス開設003
③ 同意確認で「同意」をクリック
民間送達サービス開設004
④ 下にスクロールして「e-私書箱を利用する」をクリック
民間送達サービス開設005
⑤ 利用規約の「同意する」にチェックし、「次へ進む」をクリック
民間送達サービス開設006
⑥ ICカードリーダーにマイナンバーカードをセットし、「登録」をクリック
マイナンバーカードのパスワード(4桁の数字)を入力し、OKをクリック
民間送達サービス開設007
⑦ 「つながる」をクリック
民間送達サービス開設008
⑧ 完了
民間送達サービス開設009
⑨ 現状では「もっとつながる」必要なし
民間送達サービス開設010

4 保険会社等と民間送達サービスサービスの紐付け
 これで箱は全てできましたので、あとはこの箱を紐付ける作業です。
この紐付け作業は、令和2年10月以降で各保険会社で「マイナポータル連携サービス」というページができるはずです。
従業員が契約されている生命保険会社のサイトから入って、この作業を完了させてください。
保険会社と民間送達サービスの紐付け

まとめ

 これまで手続きの概要や準備手順について見てきました。
現状では、まだシステムの構成途中と言う部分も多いので、様子を見ながらということになってくると思います。
しかし、あの煩雑だった手続きが楽になる、ミスが減るようになることは間違いありません。
このQ&Aを読んでいただいて、「ちょっとやってみるか」というきっかけにしていただければ、嬉しく思います。
私自身も使ってみて、気づきがあれば、これからどんどん肉付けをしていきます。

マイナポータル連携を利用するための設定の流れ

 国税庁から発表された周知文4枚ものはこちらです。サラっと書いてあります(笑)。
年末調整手続きの電子化について~実施方法検討・週知編

 なお、令和2年分年末調整の改正された点や具体的な書き方が知りたいという方は、「令和2年分年末調整 完全マニュアル 変更点・書き方を徹底解説」をご覧ください。

先生の選び方2021年evangelistバナー600×240

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

人気記事はこちら

関連記事

  1. 年末調整アイキャッチ画像

    令和2年分年末調整 完全マニュアル 変更点・書き方を徹底解説

  2. 電卓と社宅

    社宅で節税せよ!家賃相場の8割を経費にするノウハウ

  3. 談笑する社員

    従業員に技術を習得させるために要した費用は経費計上できる

  4. 社員旅行イメージ

    社員旅行で給与(源泉)課税を受けないノウハウ

  5. 金一封

    アイデア優秀賞受賞者に金一封渡した場合でも給与課税しなくていい?

  6. テレワーク ワンちゃんと

    コロナ禍でテレワークした場合の在宅勤務手当は、通勤手当同様非課税?

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA