配偶者控除 働き損にならないライン(妻が事業所得者の場合)令和2年以降版

夫と妻

Q 妻がフリーランスで雑誌記者をしています。事業所得者でも扶養控除に入れる場合がありますか?社会保険の扶養にも入れますでしょうか? 

A 奥様がフリーランスの場合でも所得によって税法上の配偶者控除に入れますし、社会保険もご主人のものに入れます。税法と社会保険の取り扱いの違いを理解して、見極めましょう。

奥様がパートの方は「配偶者控除 パートが働き損にならないライン(〇万円の壁)令和2年以降版」のQ&Aをお読みください。
女性の社会進出を後押ししよう、就業調整はやめてもらおうと、2018年から所得税法の配偶者控除が変わりました。
また、2020年からはさらに大きく所得税法が変更されました。いろんなホームページやブログで2020年の前半までに書かれたものは改正前の税法を基に書かれたものが多く、皆さんが混乱されていることと思います。このページは最新情報です(笑)。

まず、税法の話をします。

奥様がフリーランスの場合、事業所得の確定申告をする必要があります。
よく語られがちな奥様がパートの場合の話を先にしておきましょう。
奥様がパートの場合はお給料から給与所得控除の55万円を差し引いた金額が「所得」となり、それが基礎控除の金額48万円以下であれば、ご自身は所得税ゼロ。
つまり、パートの場合は、基礎控除額48万円と給与所得控除額55万円の合計額であるパート収入が103万円以下であれば、ご自身が所得税を支払う必要がありません
また、パート収入が150万円以下であれば、旦那さんの配偶者特別控除を満額受けられる、つまり、旦那さんの扶養に入れることになります。
150万円から201万円までで少しずつ配偶者特別控除の金額が下がってきます。
下の図がそのイメージです。上の図が2018年以前のものです。比べてみてみましょう。
配偶者控除(改正前後)

フリーランスは収入で考えない

 奥様がパートの場合は、所得区分は給与所得。これは給与所得控除という経費が決められていますので、収入で判断することができるんですね。
奥様がフリーランスの場合は、所得区分は事業所得。それぞれかかる経費が違いますから、収入では決められません。経費の額によって変わってきます。
フリーランスの場合「年収から経費を差し引いた事業所得の金額」が48万円以内であれば、ご自身が所得税を支払う必要はありません。
また、「年収から経費を差し引いた事業所得の金額」が95万円以内であれば、旦那さんの配偶者特別控除を満額受けられる、つまり、旦那さんの扶養に入れることになります。

 この経費以外に青色申告の承認申請を受けられている方は青色申告特別控除も引けることになります。
働き損にならないライン 青色特別控除

 上の計算式は、ご自身が所得税を支払わなくていいラインの計算式
 下の計算式が、旦那さんの扶養に入れるラインの計算式。
奥様がフリーランスでたくさん経費を使う方はご主人の扶養に入れることになりますが、ほぼ給与と同じような働き方の方は、何としてでも複式簿記を作ってe-tax申告をすることで、65万円の青色申告特別控除を使わないと所得を95万円以内におさめることは難しいかもしれませんね。
具体的に例を挙げてみましょう。
 あなた(奥様)がフリーランスで年収210万円、経費50万円であった場合。
青色申告をしていなければ(白色申告なら)、所得は「年収210万円ー経費50万円」で160万円。他に控除が無ければ、ご自身にも所得税がかかります(所得48万円超)し、旦那さんの扶養にも入れません(所得95万円超)。
これが、青色申告をしていて、さらにe-taxで複式簿記をしていればどうでしょう。
「年収210万円ー経費50万円ー青色申告特別控除65万円」で所得95万円。
ご自身に所得税はかかりますが、旦那さんの扶養には入れます(配偶者特別控除を満額受けられます)。
ぜひ帳簿をつけてe-taxにチャレンジしてみてください。

必ず青色申告をして控除を受けよう

 続いて、社会保険上の扶養に入れるか。
 社会保険とは健康保険や介護保険、厚生年金などを指しますが、この扶養に入れる上限が年収130万円。
この「年収」が曲者で、旦那さんが入っている健康保険(協会けんぽや医師保険、共済組合など)によって取り扱いが異なるのです。

例を挙げれば、このようなもの

●  年収130万円未満
● 月収108,334円未満(この金額以上の状態が3か月連続で外れる場合が多い)
● 年収-経費(減価償却費などを除く)が130万円未満(青色申告をしている方はその特別控除も差し引く)
などなど

これは、旦那さんの加入している保険組合に問い合わせて確認してください。
中には奥様が開業届を税務署に提出した段階で、扶養には入れないなんていうものもありますので、注意が必要です。
ちなみに、社会保険上の扶養から外れると、奥様自身で国民健康保険料と国民年金保険料で年間約23万円以上支払わなくてはなりません。
妻がフリーランスの場合 扶養の壁

(注意点)税法上の扶養に交通費や通勤手当を含める必要はありませんが、社会保険上の扶養には、交通費やその他の手当(住宅手当など)も年収に含まれますので、注意してください。

 この表では社会保険の扶養を「奥様のフリーランス収入ー経費が130万円未満」を扶養に入れるとしていますが、これは旦那さんが入っている健康保険で確認してくださいね。
余談ですが、旦那さんの勤務先から旦那さんが家族手当(配偶者手当)などをもらっている方はそのあたりも確認すべきでしょうね。

 奥様の年収が103万円未満の場合月1万円などがよくあるパターンですから、これらも確認しておいた方がいいでしょう。

ご主人の扶養に「入る・入らない」で、所得税、市民税、国民健康保険料、国民年金保険料、配偶者手当などが大きく変わってきます。
キャリアウーマン

所得オーバーしていることがバレた場合

うかつにご主人の扶養に入ったまま、奥様の年収(所得)が扶養に入れるラインを超えてしまうと、「扶養是正」の通知が市役所から旦那さんの職場に届くことになります。
すぐに届くのではなく、翌年夏以降に届きます。すると、去年1年間の上記の税金(配偶者控除)、手当(配偶者手当)などを全て返せと言われるだけでなく、奥様の国民健康保険料の負担を求められ、さらに奥様が使った医療費の保険負担を求められます(本来使えなかったご主人の保険を使ったため)。
これは痛いです。一気に数十万円の負担を負うことになります。

税金、社会保険、扶養手当等を総合的に考えて一定限度を超えそうなときは年末に調整するか、あるいは一気に超えて稼ぐか、判断が必要です。

産休・育休中の手当金・給付金はどうなる?

最後に、産休中は健康保険から「出産手当金」と「出産育児一時金」が支給されます。また、育休中は雇用保険からは「育児休業給付金」が支給されますよね。助かります。けれど、これって配偶者控除の対象に入れられてしまうのでしょうか。
大丈夫。
出産育児一時金や出産手当金、育児休業給付金は、非課税扱いとなっていて、配偶者控除の対象になるかどうかを判断するための基になる合計所得金額に含まなくて構いません。純粋に給与の金額だけで判断してください。

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所
国税OB税理士による税務調査対策グループ

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