突然国税局(税務署)が調査にやってきた!さぁどうする?

事前通知なしの税務調査 どうする?

Q 先日、国税局の資料調査課の調査官が突然会社にやってきて、「国税調査です。ご対応願います」と言われました。突然のことだったのでテンパってしまい、調査を受けてパソコンや金庫の中を確認されました(顧問税理士も後から駆けつけてくれましたが、なすすべ無しという感じでした)
実際どう対応すべきだったのか、教えていただけますでしょうか

A まずは、顧問税理士が税務調査にきちんと対応してくれる税理士かどうか(御社が税務調査を受けるリスクを抱えているならなおさら)を判断する必要があります。
対応できる税理士であったとした場合は、真っ先に税理士に連絡し、判断を仰いでください
税理士が対応するまで勝手なことはしないことです。

突然、会社に国税調査官が数人(それも揃いも揃って黒いスーツにイカツい顔してます笑)来たら、びっくりしますよね
慌ててしまって、なすがままになってします
後からどうすべきだったのか、と思い返されるお気持ちよく分かります
こういう突然に来る調査のことを「事前通知なしの調査」と言います
法律上OKなのか、断れるのか、解説していきたいと思います

法律上、事前通知は必要ないのか?

私が国税調査官だったとき、悪質な納税者の調査ばかりを担当していた時期(大半そうでしたが笑)あります
相手は悪質な納税者ですから、ほとんどの場合、事前に通知はせずに突然会社や社長の自宅に数人乗り込み、調査をする毎日でした

では、事前通知のことを税法上どう書いているのか?

(納税義務者に対する調査の事前通知等)

国税通則法第七十四条の九

税務署長等は、国税庁等の当該職員に納税義務者に対し実地の調査において当該職員の質問検査権の規定による質問検査等を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(顧問税理士がいる場合は、顧問税理士を含む)に対し、 その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする

「通知するものとする」ってことは、調査をするって事前に言わなくてはならないってことだよね?
はい、そうなんです
原則、事前通知は必要なんです

実際、税務調査の9割以上は納税者(ほとんどの場合は顧問税理士)に対して「〇月〇日に㈱〇〇に対して税務調査を行いたいと考えています。日程調整をお願いします」といった電話がかかってきます
でも、残りの1割弱はそうした電話がかかってこない
では、通知をしない場合について、税法にはどう書かれているか

(事前通知を要しない場合)
 国税通則法第七十四条の十

 前条第一項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第一項の規定による通知を要しない

税法って読みにくいですよね
要するに原則は事前通知をするけど、例外的にしない場合があるよと

その例外
◎過去に不正を行った会社
◎国税が持っている情報(各種資料情報、投書やタレコミなど)から判断するに、通知をしたら実質的に調査にならない会社
この2つ

質問者の会社はこの2つのどちらかに該当したということになります
事前通知なしの税務調査2

まずは顧問税理士に連絡

納税者の皆さんは国税にどう対応したらよいのか、そのスキルを持っていないのが普通です
デキる税理士は、国税に対してどう対応すればよいのかを熟知しています
ですから、まずは国税調査官に対して「顧問税理士がおりますので、そちらに連絡します。お繋ぎしますので、直接話してください」と言ってみましょう

すると、電話で国税調査官と税理士が話すことになります

私なら「どうして事前に通知がないのか?」と国税側に理由の開示を求めます
その上で、その理由に納得がいき、社長と自分の日程が許せば、対応することもあるでしょうね

具体的には、国税側が「会社が不正をしているという具体的証拠(先ほど述べたタレコミなど)」を持っており、税理士である自分も会社の申告が何かおかしいなと感じていたりする場合ですね
むやみに調査を遅らせても何の意味もないという場合は受けます

しかし、国税側の理由が弱い場合があります

例えば、単に「会社は飲食業で現金を扱っており、不正をする余地がある」といった会社が現収法人(現金収入法人の略。飲食業、理美容業、風俗業といった売上が現金の会社)であるから、通知をしなかったという理由

「それって本当に通知なしで調査する理由になりますかね?」と私ならすぐに反論します
そして迷わずに調査日程の変更を要求します
税務調査の風景

調査の日程を変更することはできるのか?

突然調査にきているのに、日程の変更なんてできるんですか?
良く聞かれる質問です
事前通知があろうがなかろうが、調査日程の変更はできます

以下は事前通知をした場合の取り扱いですが、しない場合も任意調査であることに変わりありませんので、準用すると解するのが妥当です

(納税義務者に対する調査の事前通知等)

国税通則法第七十四条の九 第2項

税務署長等は、前項の規定による通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して同項第一号又は第二号に掲げる事項について変更するよう求めがあつた場合には、当該事項について協議するよう努めるものとする。

この条文に書いてあるとおり、納税者側にその日程では調査を受けられない合理的な理由があれば、調査を延ばすことができます
合理的な理由って何?
はい、これは「通達」といって国税組織内の内規みたいなものですが、こう具体例を挙げています

(事前通知した日時等の変更に係る合理的な理由)

「平成24年9月12日付け国税通則法第7章の2(国税の調査) 関連通達の制定について(法令解釈通達)」5の6

 法第74条の9第2項の規定の適用に当たり、調査を開始する日時又は調査を行う場所の変更を求める理由が合理的であるか否かは、個々の事案における事実関係に即して、当該納税義務者の私的利益と実地の調査の適正かつ円滑な実施の必要性という行政目的とを比較衡量の上判断するが、例えば、納税義務者等(税務代理人を含む。)の病気・怪我等による一時的な入院や親族の葬儀等の一身上のやむを得ない事情、納税義務者等の業務上やむを得ない事情がある場合は、合理的な理由があるものとして取り扱うことに留意する。

簡単に言うと
① 会社の社長や税理士が病気やケガをして一時的に入院する
② 
社長の母親などが亡くなって葬儀がある
③ 
社長や税理士に業務上どうしても外せない商談などがある

①②はともかく③は普通にありますよね
私、そんなに暇じゃないです笑

事前通知がなく、調査に入られた場合も業務上どうしても外せない商談などがあり、対応できない場合は調査の日程を変更することができるということを覚えておいてください

デキる税理士なら、そのあたりをうまく判断して、その日に受けるべきか、変更をするべきか、対応してくれるでしょう

調査日程を変更したら、キチンと対応すべし

事前に通知をせずに税務調査に入られている以上、国税側は「不正行為をしているに違いない」「確たる不正情報がある」と確信に近いものを持っている可能性が高いわけです
国税側も、事前に通知をしない調査をする場合は慎重にコトを運んでいます
税務署なら署長の、国税局資料調査課などでは課長の決裁を経たうえで、調査に来ています

よく「任意調査ですよね?税務調査受けないことってできないんですか?」と聞かれます
はっきり申し上げておきますが、「税務調査を受けないことはできません

税務調査には「受忍義務」というものがあります
漢字だけを見れば耐え忍ぶようなイメージがありますが、国税側の「質問検査権」と対をなすものです

権利に対応するものとして義務がある

「でも、罰則とかないんじゃないですか?」
これもよく聞かれます笑

確かに現段階では任意調査かもしれません
しかし、悪質だと判断されれば、国税側は査察調査(強制調査)に切り替えることもできます
査察になれば、基本的にされるがままです
国税通則法ではなく、国税犯則法という違う法律が適用され、場合によっては犯罪者となります
税務調査の着手日

そこまでいかなくても、国税側には「消費税の課税仕入れ否認」という伝家の宝刀があるんですね

2016年に新聞報道されたヒノックス事件という有名な事件があります

パチンコ店経営などを手掛ける「ヒノックス」(千葉県市原市、登記上は愛媛県今治市)が高松国税局などの税務調査を受け、2014年6月期までの3年間で消費税約30億円の申告漏れを指摘されていたことが30日、関係者の話で分かった。過少申告加算税を含む追徴税額は約35億円とみられる。

通常、消費税の納税額は仕入れ先に支払った消費税額を差し引いて計算する。関係者によると、同社は東京国税局の調査中に経理書類の提示を拒否。このため景品などの仕入れの際にかかった消費税の控除が認められず、多額の追徴を受けた。
(日本経済新聞2016年12月30日より引用)

これ、パチンコ屋さんが経理書類の提示を拒否したのではなく、顧問税理士が「事前通知をしない理由が説明できない調査は違法だ!」と言って調査官を追い返したんですね
その後、通知をして来た調査官に対して同じことを言い続け、書類を提示せずに税務調査を拒否し続けた結果、消費税の課税仕入れが否認されてしまったんです

消費税の課税仕入れの否認というのは、簡単に言えば税務調査の際に書類を提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、課税仕入れを認めないよ(消費税法30条7項)というもの

例えば売上10億円、仕入7億円・経費2億円の会社なら1年間でざっくり8,000万円消費税払えって言われるわけですから痛いなんてもんじゃないですよ
3年遡られたら2億4千万円、加算税や延滞税を合わせたら2億7千万円くらい納めないといけません
売上10億円の会社で2億7千万円納められる会社なんて、まずないでしょう

ここの社長は慌てて「税理士が勝手に調査拒否しまして、私は何にも知りませんでした。堪忍してください。」と泣きを入れましたが、「税務代理人(税理士)の行為は納税者の行為と同じ」とあっさり裁判所に一蹴され、倒産してしまいました

税務調査に対して主張すべきはキチンと主張する
しかし、脱税をしておいて調査自体を何とか免れてやろうといったことは考えないことです

脱税をして、突然国税局や税務署に税務調査に入られてしまった場合は、信頼できる税理士にすべて話して、対応を任せることが大切です

問い合わせ 入口基本ver 辻元税理士事務所

国税OB税理士による税務調査対策グループ

関連記事

  1. 反面調査対策 税務調査

    得意先への反面調査を避けるノウハウ~税務調査に備えよ!

  2. 社長、机の中を見せてください★現況調査を避けるノウハウ

    【税務調査】「社長、机の中を見せてください」★現況調査を回避せよ!

  3. コロナ後の税務調査 狙われる先はどこだ

    コロナ後の税務調査★狙われる先はどこだ!?

  4. 青色申告の承認を取り消します

    「青色申告の取り消し」回避する方法と再申請方法

  5. 税務調査★重加算税を回避せよ

    【税務調査】重加算税を回避せよ!元調査官が明かすホントのデメリット

  6. 預金通帳と紙幣

    銀行口座を解約したら税務署にバレないか

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA