Q 税務署から「税務調査を実施します」との予告連絡が入りました
数日してまた電話があり、「税務調査の効率化のため、調査前までに総勘定元帳を税務署に送ってほしい」と言われました
これは必ず提出しなければいけないものでしょうか?
A 顧問税理士がおられるなら税理士を通じて、やんわり断る交渉をしてもらうのが最善です
税務署の人員が足らなくなってきていると言われて久しいですね
私が現職国税マンであった頃から「人員不足なので、税務調査の効率化を進める」とよく言われていました
そんな現状から、最近では税務調査の予告後に、実地調査前に税務署から「総勘定元帳などを事前に提出してほしい」と言われることが増えました
これって、絶対応じなければいけないのでしょうか?
実地調査前の資料提出は義務か?
税務調査って、税務調査官が来てから始まると思っている方が多いですね
でも、あなた(御社)に税務調査が入るということは、まず多くの先から選ばれたわけですから、「すでに何かおかしいのでは?」と思われているということです
何がおかしいのか調査に入る前の段階では、税務署に提出されている申告書や決算書、多くの資料などから検証するしかありません
その検証の結果、調査先に選定され、調査予告に至った
この段階ですでに税務調査は始まっています
税務調査が始まっている以上、税務署の中で先ほどの資料以上の資料、つまり「税務調査先から提出してもらう資料を確認してはいけない」という法律はありません
調査官が自宅や会社に来て行う実地調査の時に、納税者が帳簿等を提出しなかったら、これは違法です(国税通則法第74条の2)
税務調査官が持つ質問検査権は法的な権利であり、質問検査権を拒否した場合、納税者には罰則が科せられます
国税通則法第128条では、正当な理由なく、調査官の質問検査権を示している第74条の2~6に違反した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されると示されています
したがって、税務調査時に正当な理由なく、次のような行為をした場合は罰則の対象となります
・調査官の質問に答弁しなかった
・調査官の質問に虚偽の回答をした
・調査官に帳簿の提出を求められたが応じなかった
・偽りの内容を記載した帳簿を提示した

提出拒否は違法
こうして考えると
・実地調査前でも調査予告がされた以上、税務調査中である
・実地調査前でも税務調査中なら、調査の際に総勘定元帳などの提出を求められ、これを拒否する行為は「違法」となる
こうした結論になります
とは言え、納税者側からすると、自身(自社)の概要の説明や特殊事情等の説明をする前に数字だけ見られるのはどうなのかという思いもあるでしょうし、事前に税務署に情報を与えたくないという気持ちもあるでしょう
抜け道はあるのでしょうか?
「正当な理由」とは?
先ほどの国税通則法第128条をしっかり読んでみましょう
第128条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第23条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に偽りの記載をして税務署長に提出した者
二 第74条の二、第74条の三(第二項を除く。)若しくは第74条の四から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三 第74条の二から第74条の六まで又は第74条の七の二(特定事業者等への報告の求め)の規定による物件の提示若しくは提出又は報告の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出し、若しくは偽りの報告をした者
この第128条の三の「正当な理由なく、これに応じず」の「正当な理由」って具体的にどういう場合を指すのか?
1 天災・事故などの不可抗力
〇 火災・地震・水害などで帳簿が焼失・流出した
〇 サーバー故障や停電で会計データにアクセスできない
〇 帳簿を運搬中に事故が発生して紛失した
これが最も認められやすい「正当な理由」ですね
2 病気・入院などの身体的事情
〇 納税者本人が重病・入院中で応対できない
〇 キーパーソン(経理責任者・税理士など)が不在・病気
医師の診断書や入院証明などで裏付けされれば、正当な理由になることが多いです
3 税理士・顧問の不在や交代などの事情
〇 担当税理士が急逝・急病で帳簿にアクセスできない
〇 税理士と契約が切れて対応できない状態
一時的な混乱で対応が困難な場合、柔軟に対応してもらえることもあります
これらは実地調査の段階での事例なので、今回の実地調査前の段階では使いにくいでしょうね
実際に天災や事故は起こってないですし、本人が深刻な病気なら実地調査そのものが延期されるでしょうからね

実際の現場では
実際に税務署からのこうした提出依頼を受けるのは、税理士にお願いしていれば、税理士が対応することがほとんどなんですね
私も税務署から何度も実地調査前の総勘定元帳や会計データの提出依頼を受けています
正直に言えば、私はこうした依頼に対して書類を提出したことはありません
「調査先は税務調査の対応できるマンパワーが多くないので、調査時に確認いただけると助かります」とか
「代表者は自社の資料が外に出すことを非常に過敏な方で、調査時に必要な書類をお持ち帰りいただくのは構わないが、元帳全部を持ち出すのは勘弁願いたい」
といったお願いベースで交渉します
あるいは先ほどの正当な理由に近い理由を持ち出して交渉する
現在までの状況では、それでも無理やり提出してくれと強要されたことはありません
調査官も実地調査で協力してくれるなら、その前段階で揉めるのは避けようという気持ちがあるのか、柔軟に対応してくれて「分かりました。では当日スムースに調査が進められるよう協力願います」といった形で終わることがほとんどですね
まとめ
税務調査に対応するテクニックというものには、様々なものがあります
これを実行するには、まず法律にはどう書いているのかと理解する必要があります
今回の場合は、法律上は「拒否できない」ことをまず押さえておく
これを理解せずに「税務署の任意の依頼なんだから拒否していいですよ」などとアドバイスする税理士は法律をちゃんと読んでいないので、危ういですね
拒否できないけれども、お願いしてみる
これがうまく対応できる税理士に依頼しましょう
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