Q 年末調整の準備をしようと考えています。令和2年分から年末調整の内容が大幅に変更されたと聞きました。改正された点や具体的な書き方について、教えてください。
A 改正された点、書き方について順番に見ていきましょう。
秋口になると、各社で年末調整の準備に入られることと思います。しかし、令和2年分の年末調整からは所得税法が大幅に変わっていますので、早めに準備をしておきましょう。
改正点、作成する申告書、そして各申告書の書き方を分かりやすく説明していきます。経理担当の方はもちろんのこと、従業員の方への説明用としてもご活用ください。
まずは所得税法上、大きく変更された点は、次の5点
1 給与所得控除の引き下げ
2 基礎控除の引き上げ
3 所得金額調整控除の導入
4 配偶者控除、扶養控除などの合計所得金額要件の見直し
5 シングルマザーへの寡婦控除の拡充
令和2年分からの改正点
順番に解説していきましょう。
1 給与所得控除の引き下げ
給料をもらっている方の場合、給与収入ではなく、給与所得に税金がかかります。 つまり、
給与収入―給与所得控除=給与所得
給与所得×税率=所得税
という計算式になります。
この給与収入から差し引かれる給与所得控除が令和2年分から一律10万円引き下げられることになりました。
と聞くと、「控除が引き下げられる!?なんだ!改悪じゃないか!」と思われるかもしれませんが、そうではありません。次の項目も併せて考えてみましょう。
2 基礎控除の引き上げ
これまで、すべての納税者に一律適用されていた基礎控除。誰でも合計所得金額から38万円を引けていました。しかし、令和2年分からは48万円に引き上げられた一方、合計所得金額が2,500万円(年収2,695万円)を超えるような高額所得者は一切引いてもらえなくなりました。
そうです。年収850万円までの一般市民は1、2の合わせ技で差し引きゼロ、以前と何も変わりません。
年収850万円を超える高額所得者は、次の表のとおり、増税となりました。
3 所得金額調整控除の導入
この項目は、年収850万円を超える方だけ関係があります。一般市民は読み飛ばしてください(笑)。
増税となった年収850万円超プレーヤーで、かつ、次の3つの要件のいずれかを満たす方は控除されるというもの。
イ 本人が特別障害者である
ロ 23歳未満の扶養親族がいる
ハ 特別障害者の扶養親族、または同一生計配偶者がいる
この場合
(年収ー850万円)×10%=控除される額(年収1,000万円を超える場合は一律15万円を控除)
要するに、増税になった高額所得者の中でも、子育てや介護をしている方の負担が増えないようにしたという制度ですね。
4 配偶者控除、扶養控除などの合計所得金額要件の見直し
これは1~3の見直しによって、連動して配偶者や扶養親族などの合計所得金額が見直されるという変更になっただけで、実質は変わりません。なので、割愛。
5 シングルマザーへの寡婦控除の拡充
これまで、同じひとり親であっても、離婚・死別であれば寡婦(夫)控除が適用されるのに対し、未婚の場合は適用されず、婚姻歴の有無によって控除の適用が異なっていました。また、男性のひとり親と女性のひとり親で寡婦(夫)控除の額が違うなど、男女の間でも扱いが異なっていました。
そこで、今回の改正では、全てのひとり親家庭に対して公平な税制支援を行う観点から、
①婚姻歴や性別にかかわらず、生計を同じとする子(総所得金額等が48万円以下)を有する単身者について、同一の「ひとり親控除」(控除額35万円)を適用
②上記以外の寡婦については、引き続き寡婦控除として、控除額27万円を適用することとし、子以外の扶養親族を持つ寡婦についても、男性の寡夫と同様の所得制限(所得500万円(年収678万円)以下)を設けることになりました。
以上が改正点。
ざっくりと理解していただけましたか?
それでは、年末調整のために作成する申告書に移っていきましょう。
年末調整のために作成する申告書
まず、作成する必要があるのは、次の書類3枚+住宅借入金特別控除を受けたい方はもう1枚
各申告書、いずれも直接入力が可能なpdfファイルにリンクしています。
①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
以前からの変更点は、寡婦(寡夫)控除の見直し及びひとり親控除の創設に伴い、「C 障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」欄の各項目を修正している点と、地方税法の改正に伴い、「単身児童扶養者」欄を削除している点。
なお、この扶養控除等(異動)申告書には、従業員本人、控除対象となる配偶者及び控除対象扶養親族等のマイナンバー(個人番号)の記載が必要です(別途従業員の「マイナンバー管理簿」のような帳簿を作成している場合は不要)。
②給与所得者の基礎控除等申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
③給与所得者の基礎控除等申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
介護医療保険料の記載欄が1行追加されるだけなので、大幅な変更はありませんでした。
最後は、住宅ローンでマンション購入して数年っていうような方だけが提出する「住宅借入金等特別控除」。
④給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
住宅借入金等特別控除を受ける最初の年分、つまり新居に住んだり、増改築を終えたりした年分は、必要事項を記載した確定申告書を税務署に提出する必要があります。
2年目以後の年分は、年末調整でこの特別控除の適用を受けることができます。
この場合、税務署から送付される
・「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」
・「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」
(この2つは上下でセットになった1枚ものです)
と金融機関から送付される
・「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
を勤務先に提出する必要があります。
この住宅借入金等特別控除申告書の様式をネットで探そうとする方がいますが、確定申告後に税務署から送ってくるものですから、ありませんよ。確定申告をした翌年10月頃に一気に2年目から10年目までの9枚送られてきます(令和元年10月1日~令和2年12月31日までの間に住宅を取得した場合には「2年目~13年目」までの12枚!)。無くさないように保管しておきましょうね。
その他、申告書以外に必要な書類は
・マイナンバーカードの表裏コピー(初回のみ。持っていない方は通知カードのコピーと写真付きの身分証明書を1つ(運転免許証やパスポート))
・生命保険料控除証明書
・地震保険料控除証明書
・国民年金保険料控除証明書または領収書原本
・令和2年分の前職の源泉徴収票
・小規模共済等掛金控除証明書
などなど
では、それぞれの書き方を解説していきましょう。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方
まず、①の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方
これって、何のために提出するのでしょう?
これは、一緒に生活している配偶者や親、子など養っている人数が多ければ生活費が余計にかかるので、その分税金の負担額を減らす必要があるために提出するもの。
あくまでも令和3年に適用されるように、令和2年の年末時の見込みで記載するものです。
原則としては、年初の給与日の前日までにお勤めの会社に提出するということになっています。が、経理担当の入力事務の都合もあるでしょうから、通常はもっと早く提出することになるのが普通ですね。2以上の会社にお勤めの場合は、どちらか一つにしか提出できません。この用紙を提出した方の会社が、源泉所得税の甲欄摘要といって、安い所得税を天引きされ、もう一方の会社が乙欄摘要といって、高めの所得税を天引きされることになります。
まず、上段の氏名・住所・個人番号などの各項目を記載。
この後、中段以下空欄のまま提出して良い方は、次のいずれか
イ あなたが独身で特に親や子を養っているわけではなく、さらにあなた自身が障害者でも勤労学生でもない。
ロ 主たる給与の収入金額が2,000万円を超える
イ、ロに該当しても提出はすること。
次に、記載をする前に用語の説明をしたいと思います。
「先に進めよ!」と言うなかれ。用語の説明なしに進めちゃうと、おそらく間違いだらけになるからです。
用語の説明の前に、まず、配偶者控除にしても扶養控除にしても、青色事業専従者または白色事業専従者であった場合は除外されるということを押さえておいてください。
また、「生計を一にする」という言葉の意味が分かりにくい人は、『医療費控除 「生計を一にする」ってなんだ?』を参考にしてください。
用語説明
A 同一生計配偶者
あなた(申告する人)と生計を一にする配偶者のうち、年間の所得の見積額が48万円以下の方
令和2年からこれまで38万円以下だったものが48万円に変更されています。その代わり、基礎控除が65万円から55万円に減っていますので、配偶者の収入が給与だけ(ここでは年収といいます)なら、以前と変わらず、年間103万円以下で「同一生計配偶者」に該当します。
B 源泉控除対象配偶者
以下の両方を満たす方
・あなたの年間の所得の見積額が900万円(年収1,095万円)以下であること。
・配偶者の年間の所得の見積額が95万円(年収150万円)以下であること。
同一生計配偶者と源泉控除対象配偶者、ややこしいですね。ちょっと図にしてみましょう。
この図を見れば、お分かりいただけるように、同一生計配偶者は、あなたの所得がいくらかは関係がありません。源泉控除対象配偶者は、あなたの年収にも配偶者の年収にも制限があるということです。
C 扶養親族
次の3つの条件すべてに当てはまる方。
・配偶者以外の親族
・あなたと生計を一にしている
・年収103万円(年間の合計所得金額が48万円)以下
D 控除対象扶養親族
扶養親族のうち、満16歳以上(今回提出分の扶養控除申告書なら平成18年1月1日以前に生まれた方)
16歳以上(概ね高校生以上)であれば、高齢者も対象になりますので、あなたの親御さんも所得制限さえ満たせば、対象になります。詳しく知りたい方は、「年金生活の親を扶養控除に入れ忘れてない?」をご覧になってください。
以前は16歳未満の人も控除対象扶養親族だったんですが、児童手当ができたために外されてしまいました。
E 特定扶養親族
控除対象扶養親族のうち、19歳以上23歳未満の方(概ね大学生)
(今回提出分の扶養控除申告書なら平成11年1月2日から平成15年1月1日までに生まれた方)
大学生ってお金かかりますから、多めに控除してもらえるんです。
F 老人扶養親族
控除対象扶養親族のうち、満70歳以上の方
(今回提出分の扶養控除申告書なら昭和27年1月1日以前に生まれた方)
G 同居老親
老人扶養親族のうち、あなたか配偶者のご両親、祖父母で同居している方
いわゆる直系尊属であること(おじさんやおばさんではダメ)
同居が条件なので、生計を一にしている(仕送りしている)だけではダメ
H 障害者(特別障害者)
あなた、同一生計配偶者、扶養親族が誰かが障害者であれば、控除を受けられます。
I 同居特別障害者
以下の2点を両方とも満たす方
・同一生計配偶者又は扶養親族
・あなた、配偶者、あなたと生計を一にするその他の親族のいずれかと常に同居している方
J ひとり親
これが新しく新設された未婚のひとり親(シングルマザー)控除のこと。男性も含みます。
おそらく人々を混乱に陥れているのが、寡婦の項目。
重要なことは、令和2年分の月々の源泉徴収事務では改正前の控除が適用され、令和2年の年末に行う年末調整事務では改正後の取扱いになるということ。
この「ひとり親」もそうです。この令和2年の年末調整には適用されるのですが、その用語がこれまでの様式には一切出てきません。
令和3年の見込みを提出する「令和3年分扶養控除申告書」はもちろん、令和2年の年末調整でも、ひとり親控除をします(後述しますが、逆に「特別の寡婦」や「寡夫」はなくなります)。
あなた本人が
イ 婚姻をしていない
ロ 配偶者の生死の明らかでない
のいずれかで、次の三つの要件の全てに当てはまる方です。
- 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないことこと。
- 生計を一にする子がいること。
この場合の子は、その年分の総所得見積金額等が48万円(年収103万円)以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。 - 合計所得見積金額が500万円(年収6,777,778円)以下であること。
なお、ひとり親の控除額は35万円です。
K 寡婦
上記の「ひとり親」の登場で、寡婦の概念が変わっています。ちょっとややこしいですけど、ポイントを押さえれば簡単です。
寡婦、これは読んで字のごとく「女性」。
イ ひとり親に該当しないこと
ロ 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
の両方を満たし、次のいずれかに該当する方
1.夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得見積金額が500万円(年収6,777,778円)以下の人
2.夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得見積金額が500万円(年収6,777,778円)以下の人
死別の場合は、扶養親族の要件はありません。
改正前と何が変わったか?
いずれも下線部の「合計所得金額要件」と「非事実婚要件」が追加されました。再度、イメージで整理しましょう。
500万円という所得制限がかかり、「寡夫」や「特別寡婦」がすっぽり「ひとり親」に吸収されていますね。
ご覧のようにグレー部分が無くなったわけですから、改正前に寡婦控除の対象ではなかった方が、改正後の「寡婦」に該当することはありません。
なお、寡婦控除の控除額は27万円です。
L 特別の寡婦
改正前には存在した「特別の寡婦」。これは、令和2年の年末調整には廃止されています。先ほどの「ひとり親」に吸収された格好です。
ここには、改正前の意味を記載しておきます。
寡婦に該当する人のうち、次のすべてを満たす人
イ 夫と死別した後、婚姻していない
ロ 夫と離婚した後、婚姻していない
ハ 夫の生死が明らかでない
のいずれかで、
・扶養親族である子がいる
・合計所得金額が500万円以下
M 寡夫
寡婦の「男性」版ですが、これも令和2年の年末調整には廃止されています。先ほどの「ひとり親」に吸収された格好です。
ここには、改正前の意味を記載しておきます。
あなた本人が次のすべてを満たすことが必要
イ 妻と死別した後、婚姻していない
ロ 妻と離婚した後、婚姻していない
ハ 妻の生死が明らかでない
のいずれかで、
・生計を一にする所得48万円以下である子(他の人の扶養親族になっていない人に限る)がいる
・合計所得金額が500万円以下
この改正前の「寡婦」、「寡夫」及び「特別の寡婦」または「未婚のひとり親」と改正後の「寡婦」及び「ひとり親」の判定はややこしいので、フロー図でしっかり押さえておいてください。
[改正後]の「年末調整時の申告」欄が必要となっている方は、令和2年分の年末調整の際にその異動内容を会社に申告する必要があります。
令和2年の最後の給与をもらう日の前日までに、あなたが令和元年末に提出した「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」に訂正を加える作業になりますが、ここには「ひとり親」の欄はありません。
通常であれば、このような控除は、前年(令和元年)の年末調整でひとり親であることを「扶養控除等申告書」を提出することにより、表明するのが当たり前です。しかし、「ひとり親控除」は令和2年3月に成立した改正所得税法で盛り込まれたため、令和元年中に配布された「令和2年分扶養控除等申告書」には、記載が間に合わなかったんですね。
したがって、以下のように補正してください。
あわせて、会社の経理担当者は、該当者が令和2年分の源泉徴収簿にも「ひとり親」に該当する旨を忘れずに訂正しておきましょう。
N 勤労学生
これは、あなた本人が勤労学生である場合に限ります。
⑴給与所得などの勤労による所得があること
⑵合計所得金額が75万円(年収130万円)以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
⑶特定の学校の学生、生徒であること(小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など。専門学校の中には要件を満たしていないものもありますので、学校に確認してください。)
バイトを頑張りすぎて年収130万円以上稼いでしまうと、勤労学生から外れてしまいます。
なお、勤労学生控除の控除額は27万円です。
ここまで、用語の解説を先にしていきました。
では、中段以降の記載に移っていきましょう。
扶養控除等(異動)申告書 中段以降の書き方
まず、
A 源泉控除対象配偶者
上記の用語で説明した「源泉控除対象配偶者」に該当する方のみ、配偶者の氏名を記載します。該当しない方は書いてはダメ。
奥さんのパート収入が180万円ある、とか、あなた自身のお給料が年間1,200万円ある、といった方は書かないように。
B 控除対象扶養親族
16歳以上(今回提出分の扶養控除申告書なら平成18年1月1日以前に生まれた方)の方のみ記載。
16歳未満の方は書いてはダメ。16歳未満の方は、住民税の控除があるので、下段に記入欄があります。
「非居住者である親族」欄…日本国内にいる以上、子供がどこかに下宿していてもチェックはつけないように。ここでいう「非居住者」とは国内に住所がなく、なおかつ、1年以上国内に住んでいない方のこと。
子供が国内にいる以上、この「非居住者である親族」欄とその隣の「生計を一にする事実」欄は空欄にしておきます。
C 障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生
まず、あなた、同一生計配偶者、扶養親族が誰かが障害者なら、「□障害者」の□にチェックを入れます。さらに横の表の該当部分にもチェックを入れます。
その障害者が扶養親族に該当する場合は( 人)にその人数を記入してください。
寡婦、ひとり親、勤労学生に該当する方は障害者の右側のチェック欄の該当部分にチェックを入れます。
その右側の「左記の内容」
ここには、例えば、障害者の方なら障害者手帳の種類、交付年月日、障害の等級などを記載します。
D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
あなたも奥様も共働きの場合、一人のお子様をどちらでも扶養にすることはできません。
控除を受けない方がこの欄に記入します。
さて、いよいよ下段
ここからは住民税に関する事項です。
E 16歳未満の扶養家族
16歳以上のお子様は、B控除対象扶養親族に記載しましたよね。
ここでは、16歳未満(今回提出分の扶養控除申告書なら、平成18年1月2日以後に生まれた方)の方を記載します。
はい、これで、①の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の書き方は終わり。
国税庁が発表している記載例を見て参考にしてみてください。
給与所得者の基礎控除等申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書の書き方
次に、②の「給与所得者の基礎控除等申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の書き方
とにかく、名前が長い!要するに以前の「給与所得者の配偶者控除等申告書」ですよ。
3つの申告書を1つにまとめていますが、区分すると、以下のとおりです。
上段の説明は省きますね。中段の左の「基礎控除申告書」右の「配偶者控除等申告書」
どちらをどう記入するのか?次の記入チャートを進めてください。
ポイントとしては
・基礎控除申告書は基本的に全員が提出する
・年収850万円を超えそうな人は注意ということ。
基礎控除申告書には、年収2,695万円以下の人は記入しなければならない。つまり、大半の方は基礎控除申告書に記入しなければならないということです。
そして下段の「所得金額調整控除申告書」は、年収850万円超で一定の要件を満たした人が記入する必要があります。年収は12月の給与や賞与を待たないとわかりませんから、850万円を超える可能性がありそうな人で、なおかつ23歳未満の扶養親族や特別障害者である扶養親族がいる場合は、所得金額調整控除申告書を記入してください。
では、上のチャートに従って、基礎控除申告書が必要な方は、Aに進んでください。
A 給与所得者の基礎控除申告書
あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算をします。
ここでは、1年間の合計所得金額の見積額の計算を行います。
まず、⑴の給与所得の収入金額に1年間の給与収入の見積額を記入します。
給料、賞与、賃金、アルバイト代など呼び方は変われど、これらは全て給与収入となり、当然ボーナスも含まれます。アルバイトなどを複数掛け持ちしている方は、その全てのアルバイト代の総額を記入してください。
続いて、その隣、所得金額。
ここに記入するのは、先ほど記入した収入金額から用紙裏面の【給与所得の金額の計算方法】に記されている計算式からはじき出した給与所得控除額を控除した後の金額です。
簡単に給与収入から給与所得を求めたければ、こういう給与収入から給与所得を自動計算してくれるサイトを利用してみるのもいいかもしれません。
続いて、⑵給与所得以外の所得の合計額欄。
給与所得以外の所得とは、会社からもらう給与以外にもらったお金、例えば副業や株やFXなどの配当、年金なども含まれますね、こういうものの所得(収入ではありませんよ)を記入してください。
⑴と⑵を合計したものを「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」に記入してください。
これを「控除額の計算」の表にあてはめ、該当する金額の□にチェックを入れます。チェックを入れた右の列に書かれた金額が基礎控除の額です。
また、所得金額の合計が1,000万円以下の場合は区分Ⅰの欄に(A)~(C)の該当する文字も併せて記入してください。これは、配偶者控除、配偶者特別控除の判定などに利用するために記入します。
B 給与所得者の配偶者控除等申告書
まず、配偶者の氏名、個人番号欄を記入。住所はあなたと違う場合のみ記入します。
次に中段の「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算」欄。
これは先ほど「基礎控除申告書」で記入した「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」と全く同じ作業です。
太線で囲まれた「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」を出せたら、右の判定表で当てはまる行の頭の□にチェックを入れてください。チェックを入れた□の右の番号が①②なら配偶者控除、③④なら配偶者特別控除に該当します。この①~④の番号を二重太線に囲まれた区分Ⅱに記入します。
一番下の「〇控除額の計算」に移ります。
まず、基礎控除の申告書の区分Ⅰで記入したAからCの該当する行をまず選びます。
次に、区分Ⅱで記入した①から④の該当する列を選び、先ほどの行と交差した部分の金額が控除額となります。
これで、配偶者控除か配偶者特別控除かが判明し、控除額も確定しましたので、これを一番右下の太線内に記入してください。
C 所得金額調整控除申告書
この申告書は、年収850万円超プレーヤーで、かつ、次の3つの要件のいずれかを満たす方のみ書いてください。それ以外の方は飛ばしてください。
イ 本人が特別障害者である
ロ 特別障害者の同一生計配偶者または扶養親族がいる
ハ 23歳未満(平成10年1月2日以後生まれ)の扶養親族がいる
国税庁が発表している記載例はこちらですので、参考にしてみてください。
なお、奥様がパートでいくらまでなら働いていいのか、税金面だけでなく、健康保険、扶養手当なども合わせて考えたい方は、「配偶者控除 パートが働き損にならないライン(〇万円の壁)令和2年以降版」をお読みください。
奥様がフリーランスで確定申告をされている方は、「配偶者控除 働き損にならないライン(妻が事業者の場合)令和2年以降版」をお読みください。
給与所得者の保険料控除申告書の書き方
ようやく③の「給与所得者の保険料控除申告書」にたどり着きましたね。
これは、保険料控除を受けるためのもの。
記入するには、10月から11月くらいまでにかけて保険会社から送ってくる「保険料控除証明書」のはがきが絶対に必要ですから、これを横に置いて、記入していきましょう。ない場合は、生命保険会社に再発行してもらいましょう。
控除の対象となる保険は、生命保険(一般の生命保険、介護医療保険、個人年金保険)、地震保険、社会保険、小規模企業共済等掛金の4つ。
保険ごとに控除できる上限が決まっています。
お持ちの生命保険料控除証明書の数字を新制度、旧制度に区分して入力するだけで、生命保険料控除額を計算してくれる第一生命さんの生命保険料控除額計算サポートツール、すぐれものです。ぜひ活用してください。
この申告書については、比較的簡単ですから、注意点のみお伝えしておきます。
左側「生命保険料控除」
基本的には、はがきに書いてある「新保険料」(平成24年以降契約した保険)と「旧保険料」を分けて、一番下の計算式に当てはめて記入していくという流れですね。
・契約者があなたでなくても、あなたが保険料を支払っているなら、家族名義の生命保険を記入しても構いません。
・はがきに記載してある「年末まで支払った場合の見込み額」を保険料としてください。
・上限が決まっていますので、支払った保険料が新保険料なら80,001円以上、旧保険料なら100,001円以上いくら記載しても同じです。控除額としては、一般の生命保険料が上限4万円、介護医療保険料が上限4万円、個人年金保険料が上限4万円とそれぞれに上限が決まっています。合計12万円で打ち止め。
右側一番上「地震保険料控除」
・地震保険となっていますが、旧長期損害保険に加入している方は、この地震保険欄に記入してください。控除額は最高5万円まで。
右側中段「社会保険料控除」
・給与から天引きされているから関係なしと思わないでくださいね。扶養している息子さんが国民年金に加入していて、あなたがそれを負担しているなら、ここに含めて書いてください。あなたがアルバイトやパートなどで、会社で天引きされずに、ご自身で国民健康保険を支払っている場合などは必ず記入しないと、大損してしまいます。
・国民健康保険以外の社会保険は証明書類を裏面に貼り付けてください。
右側下段「小規模企業共済等掛金」
ここは、小規模な会社の役員しか関係ありませんので、飛ばします。
国税庁が発表している記載例はこちらですので、参考にしてみてください。
給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書の書き方
初年度に確定申告で住宅借入金等特別控除を受けた方が2年目以降、年末調整で税額控除を受けられるものですね。
提出書類は次の2枚
① 住宅借入金等特別控除申告書(初年度の確定申告の翌年10月頃に税務署から9枚あるいは12枚が一気に送られてきています)
② 住宅ローン年末残高証明書(毎年11月頃に銀行から送られてきます)
この住宅借入金等特別控除申告書については、書かれる方が一部にとどまると思いますので、ここでは割愛します。
ZEIMOさんのサイトで書き方を丁寧に解説されているので、書き方を知りたい方はこちらをご覧になれば完成できると思います。
なお、令和2年分の年末調整から、
生命保険料控除
地震保険料控除
住宅借入金等特別控除に係る控除証明書
等について、電子データにより提供できるよう手当されたことなどを受けて、年末調整手続の電子化に向けた施策が実施されます。
これまで、「生命保険会社からの控除証明書のはがきが見当たらないんですよ~」とか「住宅借入金等特別控除証明書、失くしちゃいました」なんていうこと、ありましたよね?
会社の経理担当者も従業員の手書きした申告書に間違いがないか、いちいちチェックしていました。
これからは、こうした証明書を従業員がマイナポータルからデータで受け取り(従来通りハガキでも可)、国税庁から配付されている「年調ソフト」で勝手に計算してくれるので、間違いもありませんし、楽ちんです。
詳しく内容を知りたい方は、「令和2年分年末調整の電子化 完全マニュアル」をお読みください。
以上、令和2年分の年末調整の仕組み、書き方について、説明してきました。
去年とかなり変更があり、取っつきにくいかもしれませんが、このQ&Aが助けになれば、幸いです。
この年末調整という作業で、給与をもらっている方の大半は税金(所得税)の清算が終わってしまいます。もちろん、違っていても確定申告をすれば、払いすぎた税金が返ってきますが、面倒ですから一発で済ましてしまいたいですよね。
年末調整で税額が少なく計算されていると、税務調査の際に指摘されることはありますけど、例えば「離れて暮らすお母さんも扶養控除に入れるのではないですか?」とか「娘さん、扶養親族ではなくて、特定扶養親族ですから、もっと控除できますよ。」なんて、誰も教えてはくれません。
自分の税金には結局、自分が責任を持つということです。
税金の仕組みをよく理解して、年末調整に取り組んでください!!
また、このQ&Aよりも、さらに詳しいことを知りたい方は、国税庁「令和2年分 年末調整のしかた」をしっかり読んでください。いつも以上のボリュームです(笑)。
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